ゴミ漁りや確認行動…無意味に見える行為は心を守るSOS?無理にやめさせない寄り添い方と回復のヒント【日本認知・行動療法学会第52回大会】

ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年9月27日、池袋・サンシャインシティ ワールドインポートマートビルにて「日本認知・行動療法学会 第52回大会」が開催されました。今回は、特別講演として行われた、明治大学 子どものこころクリニック院長・山登敬之先生による『こだわる人々~子どもの強迫、大人の強迫~』の講演内容をレポートします。

単なる「わがまま」ではない?強迫症の特徴

「日本認知・行動療法学会 第52回大会」にて、明治大学 子どものこころクリニック院長の山登敬之先生による『こだわる人々~子どもの強迫、大人の強迫~』と題した特別講演が行われました。

日常生活の中で、決まった手順やものごとに執着する子どもたちの姿に戸惑う保護者も多いと思います。精神医学における強迫症とは、自分でも抑えられない不安や嫌なイメージが頭の中に繰り返し浮かび(強迫観念)、それを打ち消すために確認や特定の儀式行動を反復する(強迫行為)状態を指します。山登先生によると、大人の強迫症と比べた場合、子どもの強迫症状には次のような特徴があります。

  • 強迫行為が先行しやすい
    幼い子どもは自らの不安や感情を言語化することが難しいため、頭の中の不安よりも先に行動が表面化しやすい

  • 不合理性の自覚が乏しい
    「こんなことをしても意味がない、馬鹿馬鹿しいことである」と客観的に自分を振り返る心の余裕がない場合が多い

  • 家族(特に親)を強く巻き込む
    自分の安心を得るために保護者に何度も確認したり、同じことをさせたりする傾向が強く見られる

また、ASD(自閉スペクトラム症)の特性である、限定された反復的行動との区別や重なりについても、注意深い観察が必要と指摘しました。

行動の裏に隠されたSOS

山登先生は、実際の臨床で出会った子どもたちのエピソードを交え、強迫行為が現れる背景を示す事例を紹介しました。

    【事例】自転車のサドルをなでてまわる
    小学校受験のために幼児教室に通い始めた5歳児。ある日から帰り道に停まっている自転車のサドルをすべてなでる行動が始まり、親が制止すると泣き叫ぶようになりました。
    これに対し、通塾による過密スケジュールや環境変化で心のリズムやバランスが崩れたことが要因と考え、幼児教室をやめて通園もしばらく休ませたところ、症状は消失し子どもは元気を取り戻しました。

    【事例】ゴミ捨て場で自分のものを執拗に探す
    学校で『1/2成人式』の準備が始まった時期から、突然ものを捨てられなくなった10歳児。自分の幼少期のおもちゃや工作を親に捨てられたと思い込み、マンションのゴミ捨て場を探すようになりました。
    これに対し、1/2成人式という行事に「子ども時代の終わり」を突きつけられ、プレッシャーや不安を感じたことが要因であると考えました。そこで、親と一緒にゴミ袋の中身を確認してから捨てるルールを実行しながら行事がすぎるのを待つようにしたところ、次第に確認をしなくても済むようになりました。
いずれの事例においても、意味がないように見える反復行動は、必死に自分の心を落ち着かせて安心を取り戻そうとする無意識の防衛反応だったと考えられます。

症状を無理やり取り上げようとしない

認知行動療法などでは、短期間での症状改善が目指される場合がありますが、強迫症状は、本人が強い不安から自分を守るための砦のようなものです。強迫症を持つ人には、他者と触れ合うことへの恐れや不器用さ、傷つきやすい繊細な心が潜んでおり、症状はその人が不安な日常を生き延びる上で役に立っているという側面もあります。そのため、無理に症状を奪い取るとかえって別の苦痛が生じる場合があります。

今日からできる関わり方のヒント

では、強迫や強いこだわりに悩む子どもに対し、周囲の大人はどのように寄り添えばいいのでしょうか。講演から得られた重要なポイントをまとめました。

行動の背景にある不安に目を向ける

子どもの繰り返される行動には環境の変化や成長の節目に伴う不安が隠れていることが少なくありません。すぐに行動を制限するのではなく、今どんなストレスや不安を感じているかを確認することが第一歩です。

「人とのつながり」が回復の力になる場合も

思春期の視線恐怖に悩んでいたとある学生が、自ら「当事者研究」の集まりに参加し、仲間とのつながりや、アルバイト先での人間関係を得ることで症状が和らいでいった事例も紹介されました。服薬などの医学的アプローチだけでなく、自分を受け入れてもらえる安心できる人間関係も回復を支える大きな力となります。

長い人生の目線で付き合う

症状がありながらも、成長とともに周囲のサポートや新しい居場所を得て、強迫症と上手く折り合いをつけて暮らしているケースもあります。長期的で温かな眼差しを持ち続けることが求められます。
山登先生は、「子どもが病院に通ってきてくれている限り、あるいは家族以外の誰かと繋がっている限り、何とかなる」と語ります。子どものこだわりや強迫に直面すると、保護者は早く治さなければと追い詰めてしまいがちです。その症状は子どもが懸命に不安と戦い、自分を守ろうとしている証でもあります。まずは焦らず、子どもが安心できる環境づくりを考えていきましょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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