幼稚園時代は予定変更でパニックも…就学前面談と支援ファイルで支えた発達障害の娘の6年間【読者体験談】

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予定変更が苦手でパニックを起こす娘の対応に悩み、「お母さんの関わり方の問題」と誰にも理解されず孤独だった幼稚園時代。小学校生活に大きな不安を募らせていた中、勇気を出して学校へ事前相談をしたことで、先生方との二人三脚の連携がスタートしました。【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「就学前の不安と小学校生活への道のり 」についてのエピソードをご紹介します】

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
お子さんのプロフィール
  • 年齢:大学2年生 
  • 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)グレーゾーン 
  • 診断時期:小学校1年生 
  • エピソード当時の年齢:幼稚園・年長〜小学校1年生  

雨の日の遠足中止にフリーズ……「なぜ娘だけ」誰にも理解されなかった幼稚園時代

娘は幼稚園に通っていた頃から、予定の変更があるとパニックや癇癪をよく起こしていました。そのため、私は直前まで娘に当日の予定を伝えないように工夫して過ごしていました。

一番印象に残っているのは、年少の時の遠足です。当日は土砂降りでしたが、前日に担任の先生が「明日の遠足を楽しみにしようね」と言っていたため、娘は「今日は遠足がある」と信じて疑いませんでした。登園途中、「雨が降っているから中止だよ」と伝えても、「先生が『明日は遠足』と言っていたから、傘をさして出かけるんだよ。すべり台をすべるんだ!」とワクワクしている様子でした。

ところが幼稚園に到着し、先生からの「雨なので遠足は中止です」の言葉を聞くなり、娘はフリーズしてしまいました。ほかの園児たちが「雨ならしょうがないね」と教室に入っていく中、娘だけが私にしがみついたまま動けなくなったのです。次第に泣き始めた娘を私は約1時間抱っこしたまま、親子で教室の前に佇んでいました。

「ほかの園児はすんなり受け入れているのに、なぜ娘だけ……」

日頃から娘に対して違和感を覚えていましたが、幼稚園での集団生活が始まってから、その思いはさらに強くなりました。娘は普段、穏やかで優しい子です。しかし、外では周囲を意識してか、そつなく振る舞っていたため、自宅の玄関に一歩入った途端にパニックや癇癪を起こすという日々の様子が周囲には伝わりにくかったのです。幼稚園や子ども発達センターに娘の状況を相談しても、なかなか理解してもらえず、逆に「思い過ごし」「お母さんの関わり方に問題があるのでは」と言われ続け、私自身もずっと悩んでいました。
幼稚園の3年間、パニックはなんとか自宅の中だけで収まっていたけれど、環境が大きく変わる小学校ではトラブルが起きてしまうのでは――娘の小学校生活を考えると、心配でたまりませんでした。
「遠足中止」の言葉を聞くなりフリーズし、泣き出してしまった娘
「遠足中止」の言葉を聞くなりフリーズし、泣き出してしまった娘
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就学への不安を「入学前説明会」で相談

就学を控えた年長の秋口。副担任の先生から、小学校の「入学前説明会」の事前アンケートで「学校と相談したいことがある」と記載すれば対応してもらえることを教えていただきました。

私はアンケートに、外と自宅での様子の違いや、予定が分からないと不安に陥ること、パニックや癇癪が強く、自宅では対応困難になっていることを書きました。幼稚園の担任や園長先生からは「〇〇ちゃんなら大丈夫」と言われていたので、家での対応の難しさを理解してくれる人はほとんどいませんでした。だからこそ「小学校では、相談に乗ってくれる人に出会えれば……」と切に願っていました。

そして説明会の後、保健の先生が面談をしてくださいました。雨の日の遠足のエピソードや、その日の朝に予定を伝えなければ泣き叫んでパニックになること、入学式の式典に参加できるか不安なことなどを、できるだけ具体的に事実に基づいてお話ししました。
すると、保健の先生は私の話をしっかりと受け止め、「一度、学校全体で娘さんへの支援方法を検討してみます。できれば卒園後、入学前の春休みに、娘さんと一緒に学校で面談しませんか」と言ってくださったのです。幼稚園では孤独を感じていた分、私の話を親身になって聞いてくださり、心から安心したのを覚えています。

誰もいない学校での予行練習が娘の安心感に

4月に入ると、事前相談をしていた娘のために「特例」として、本来なら入学式前に発表されない担任の先生やクラスを教えていただきました。

また、春休み中の学校へ再度出向き、私と保健の先生が話している間、娘は担任の先生とともに靴箱の位置や教室の場所、自分の席を確認することができました。さらに、「お母さんたちは体育館にいるから、教室では席に座って待ちましょう。先生も一緒にいますからね」と、入学式当日の動きも娘に直接教えてくださいました。ほかにも、式典前に廊下へ並ぶ様子や新6年生が付き添ってくれることなどを具体的に説明しながら、娘と2人で体育館へ向かい、予行練習まで行ってくださったのです。

娘は真剣に先生の説明を聞き、懸命にリハーサルに取り組んでいました。幼稚園の卒園式は何度も練習しますが、入学式は一発勝負。事前に見通しを持てたことで、娘も安心した様子でした。
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涙があふれた入学式。診断を経て 「支援ファイル」で繋いだ6年間の歩み

入学式当日、ほかの新入生たちと一緒に行動している娘の姿に感動……
入学式当日、ほかの新入生たちと一緒に行動している娘の姿に感動……
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迎えた入学式当日。娘は、私から離れてほかの新入生たちと一緒に行動することができました。式典に入場してきた姿からは、緊張しながらも一生懸命な様子がうかがえ、夫と見守っていた私は涙があふれました。先生方の配慮のおかげで、安心して式典に参加できたことへの感謝の気持ちでいっぱいになったのです。

実は入学前の就学時健康診断で、娘は視力検査で指摘を受けていました。眼科を受診しても視力が不安定で計測できず「心因性の視力障害」と診断されたことをきっかけに、市の子ども発達センターへ相談。その後、専門の心療内科へとつながり、小1の6月に発達障害の診断を受けました。それからは、私の暮らす地域で導入されている『支援ファイル』の活用に加え、私自身も日々の記録を残すために独自の連絡帳を作成して娘に持たせました。担任の先生とはこまめにやり取りをしながら、娘の課題と目標を一緒に計画し、学校と家庭の両輪でサポートを続けていきました。

高学年以降は、本人も面談に参加して目標を共有するようになり、時々心が不安定になることもありましたが、通常学級で6年間を過ごすことができました。さらに、この6年間の支援内容は『支援ファイル』をもとに中学校へも引き継がれました。おかげで新しい担任の先生へ毎回特性を話す手間も省け、継続した支援を受けることができました。

経験から伝えたい「早めの学校相談」の大切さ

幼稚園では「問題ない」と言われ続け、孤独の中で悩んでいましたが、小学校の事前相談という仕組みを活用したことで、娘の学校生活は大きく変わりました。

就学にあたって少しでも不安がある場合、「入学説明会」を通して学校側に相談していくことの大切さを身をもって実感しました。通常学級か特別支援学級かで迷われているご家庭こそ、早期に小学校との連携を図ることが重要だと思います。幼稚園や保育園、小学校とではまったく環境が異なるため、ぜひ早めに学校側と対応を検討することをお勧めします。

思春期を過ぎるまで大変なことも多い子育てでしたが、そこを乗り越えた今、娘は大学生となり、落ち着いて生活ができています。まだまだ日々の生活でサポートが必要な面はたくさんありますが、あの日、学校へ相談することを決断して本当に良かったと思っています。
イラスト/星あかり
※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。

専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)

幼稚園から小学校への移行を、事前相談や予行練習を通して安心につなげていった経過を丁寧に聞かせてくださり、ありがとうございます。
予定の変更や見通しが持てないことに不安を感じやすいお子さんにとって、保育園・幼稚園から小学校への移行は、とても大きな環境変化です。教室、先生、時間割、学校でのルールなど、それまでとは違うことが一気に増えるため、本人からすると「何が起こるのか分からない」ことだらけかもしれません。だからこそ、入学前からできるだけ情報を集め、学校と相談し、見通しをつくっておくことはとても大切ですね。

いわゆる就学相談などの機会だけでなく、地域や学校によって多少の違いはあるかもしれませんが、保護者から希望して個別に相談したり、入学前に学校を見学したりすることも多くの場合は可能かと思います。今回のように、教室や自分の席を確認する、入学式当日の動きを説明してもらう、実際に予行練習をしてみるといった準備は、本人にとって大きな安心につながります。また入学後も、予定をできるだけ分かりやすく伝えてもらうことや、予定変更があるときには早めに説明してもらうことなど、具体的な支援を学校と相談しておくとよいでしょう。

そして、これは小学校から中学校への進学でも同じです。小学校生活に慣れて「もう大丈夫」と思っていても、中学校では校舎や先生、時間割、ルールなどが大きく変わり、戸惑いや不安が強くなるお子さんもいます。中学生の頃は間違えて注意されることの不安がより強くなることもあります。支援ファイルといった引き継ぎツールも活用しながら、環境が変わる前に、本人が安心して次の生活を迎えられるよう準備しておくことが大切だと思います。今回の体験談は、その大切さを具体的に教えてくれるものだと感じました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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