年長で母子分離不安、実家を頼れず有休ゼロ…それでも仕事を辞めず「送迎付き療育」で得られた安心【読者体験談】

ライター:ユーザー体験談
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年中の秋に突然「保育園に行きたくない」と言い出した息子。年長で母子分離不安が発現し、転園や療育(児童発達支援)探しが重なって有給休暇を使い果たすほどの日々でした。それでも、職場の同僚の言葉に背中を押され、サポートにつながることで少しずつ前を向くことができました。【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「仕事と療育の両立や自分らしいキャリアの選択」についてのエピソードをご紹介します】

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
お子さんのプロフィール
  • 年齢:8歳 
  • 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)グレーゾーン 
  • 診断時期:年長 
  • エピソード当時の年齢:5歳 

インフルエンザ、転園、有給ゼロ……八方塞がりだった年長クラス

息子が年少の頃から、私は少しずつ違和感を覚えていました。あまり喋らず、エアコンの室外機や風車など回るものを延々と見ていたり、風船や花火などの大きな音への拒否反応が強かったりしたためです。激しい偏食や、勝ち負けへの強いこだわりも気になっていました。
それでも決定的な何かがあるわけではありませんでしたが、年中の秋、息子が初めて「保育園に行きたくない」と言い出しました。話を聞くと、給食時に嫌いなものを床に落としたり、園で「年少組に帰りなさい」と言われていたことが分かり、転園を決意しました。

一番大変だったのは年長になってからです。突然、激しい母子分離不安が発現したのです。実家は両家とも遠方で頼れず、私が勤める会社には半休制度もありません。転園に伴う面談、発達診断、療育(児童発達支援)施設探しに加えて、子どもの骨折やインフルエンザなども重なり、私の有給休暇はあっという間に底をつきました。
夫は平日休みでしたが、子どもに対して衝動的に手が出ることもあり、息子と二人きりにさせるのは避けていました。正面切って息子の特性の可能性を伝えると反発されそうだったため、「苦手を公費で補助してくれる制度があるみたい」と慎重に根回しをしながら、一人で奔走する日々でした。
決定的な何かはないけれど、息子の様子に戸惑いを感じ始めていた日々
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「ママの勘は当たるから」受診への迷いを消してくれた先輩ママの言葉

息子の母子分離不安にどう対応すべきか悩み、外部の相談先選びに迷っていた私に声をかけてくれたのは、知的障害(知的発達症)のあるお子さんを育てながら働く職場の同僚でした。
しっかり専門家に診てもらうのが良いと背中を押され、私は発達診断も行っている小児科のカウンセリングを予約しました。

ところが、予約日が近づくにつれて母子分離不安が少し弱まり、私は受診自体を迷い始めました。そんな時、同僚はこう言ってくれたのです。
「ママの勘は当たるから、不安があるならやってもらえることはやってもらったほうが良いよ」
その言葉のおかげで迷いが消え、カウンセリングでも「集団指示の通りにくさがあり、就学時に不安があるので療育を利用したい」と先生にしっかり伝えたことで、無事に療育へとつながることができました。

柔軟な連携で築いた、送迎付き療育という安心の基盤

年長の冬から療育が始まりましたが、共働きで付き添いができないため、当初から送迎のある集団療育をお願いすることに。運良く、近所に送迎サービス付きの施設ができていたのは本当に助かりました。
働きながらの療育はスケジュール調整が壁になりますが、そこは周囲のサポートをフル活用。長期休暇の際は、朝は夫に送りを頼み、16時のお迎えには私が間に合わないため、ファミリーサポートやシッターさんにお願いしたり、夫に休みをずらしてもらったりして対応しました。

また、療育の相談員さんもとても理解のある方でした。モニタリングや計画作成の際には、私の昼休みに合わせて会社の近くまで来て聞き取りをしてくれたり、電話や土曜の訪問で対応してくれたりと、働く親に寄り添った柔軟な配慮をしてくださいました。
これも、地域で正社員を続けながら療育を始めた先輩ママである同僚たちが、道を切り開いてくれたおかげかもしれません。
送迎サービスや理解ある相談員さんなど、周囲の温かいサポートに助けられました
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キャリアアップより大切だったもの。自分の選択肢を持ち続ける強さ

私はかつて、出張に託児付きホテルを調べるほど仕事への意欲がありました。しかし、産休を機に責任者を降りることになり、復帰後も以前の役職に戻ることは叶わず、結果的にマミートラックにはまりました。
それでも私が仕事を辞めなかったのは、「常に自分で選択肢を持っておきたかったから」です。万が一、子どもを一人で養うことになった可能性を考えていた私にとって、自分の自由な選択のために、経済的な自立を手放すことはできませんでした。キャリアアップへの思いには折り合いをつけましたが、次を決めてから辞めるつもりで、夫には「50歳を区切りに、いつか自分の納得のいく形で働き方を見直すかもしれない」と伝えています。

実は、息子を授かるまで不妊治療をしており、半休制度のない会社で働きながら、仕事終わりに高速を飛ばして夜中まで診察してくれるクリニックへ通う日々でした。そうやって不妊治療を生活の中心に据えた時点で、私の中でキャリアは二の次になっていました。
子どもに特性の傾向があったのはあくまで結果論であり、自分の働き方への影響はないと言えます。結果として、以前の目標とは違う形に落ち着きましたが、ゆとりを持って働き続けられている今の環境に満足しています。

社会とのつながりが、心の安定に

私の場合、子どもの障害がキャリアに影響を及ぼす部分はそれほど大きくありませんでした。それよりも、両親の助力が得にくい状況下では、会社側に柔軟な働き方やキャリア形成への理解があるかどうかのほうが、影響が大きかったように感じます。

子どものサポートの必要性や親自身の体力によっても、働き方は変わるものだと思います。ただ、今はテレワークという手段もありますし、週に数時間でも仕事をするほうが社会とのつながりが保たれ、自分の心の安定につながる気がしています。これからも無理のない範囲で社会との接点を持ちながら、息子の成長をそばで見守っていけたらいいなと思っています。

イラスト/鳥野とり子
エピソード参考者/こざかな

専門家コメント 藤井明子先生(小児科医)

「育児は自分の思い通りにならないけれど、仕事には自分の力で進められる部分もあり、仕事があることで育児を頑張れる」という声を聞くことがあります。こざかなさんも、仕事を通じて「母親としての私」だけではなく、「私個人」として社会とつながる場所があったことが、心の安定につながっていたのですね。
仕事と育児のバランスは、お子さんの障害の有無だけでなく、親自身の体力や、療育・学校との連携のしやすさなど、さまざまな要因によって変わってくると思います。その時々の状況に応じて、ベストとはいかなくても、ベターを目指しながら、親も子も健やかに過ごせる環境を整えていけるとよいですね。(監修:小児科医 藤井明子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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