きずな学園の築山先生は、その日一人のお子さんについて気にかかる事がありました。
その日は外出レクリエーションがあり、みんなで出かける予定でした。
Aくんは他人とのコミュニケーションが苦手で、学校の先生や同級生と上手く関係を築けずに、次第に居場所を感じられなくなりきずな学園に、やって来ました。
学園に来てからも、少し言葉が達者なお子さんに接するとどう対応していいか分らず、傷つき、職員のサポートなしで他のお子さんと遊ぶ事が難しい場合もありました。
そんなAくんにとって、行ったことのない場所への外出のレクリエーションは、高いハードルでした。
先の事を見通したり、想像力を働かせる事が難しいお子さんにとって、知らない場所に行って、知らない人がいっぱいいる中で1日を過ごす事は、不安ばかりが膨らみ、拒絶反応を起こしかねません。
外出レクリエーションはお休みにするか、当日の朝、来る途中で一歩も動けなくなり、「やっぱりいけない」と親御さんから連絡があった事もありました。
そんなAくんですが、少しずつ環境に慣れ、今まで行った事のある場所で、
よく知っているお子さんとならば、外出できるようになってきました。
また外出前に、自分の気持ちを整えるために「一人で作業をする」という工夫も自分から出来るようになっていったのです。
出来た!という成功体験を積み重ね、Aくんは自信を持ち始めました。
ところが今回の行先は、今まで一度も行った事のない場所。
先生たちは、Aくん来れるかな…と、少し不安でした。
そして当日の朝。
約束の登園時間になってもAくんは現れませんでした。
親御さんからの連絡で「天六の駅で、行くのを渋っている」との事。
悩みながらも、駅まで来る事が出来たAくんをみんなで迎えに行き、無事合流する事が出来たのです。
以前のAくんだったら、「行く」とは言わなかったかもしれません。
感情を爆発させず、気持ちを切り替えられた事に、成長の一歩を感じました。
その後、Aくんは他のお子さんと共に過ごし、元気いっぱい1日の予定を終える事が出来ました。
築山先生は、外出中にAくんが言った言葉が忘れられないといいます。
「ホントは、ボク来たく無かったんだよ。だって興味無かったんだもん。」
不満を溜め込まず、ストレートに自分の気持ちが言えた“ぼやき”とも取れる言葉。
興味の無い場所でも自分で行くと決め、最後までやり遂げた事に確かな成長を感じたと、
築山先生は嬉しそうに話してくれました。
”ぼやき“の成長 【記事】北村 誠一 リアン広報担当
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21/09/14 16:36