療育に対して、「できないことをできるようにする。」「苦手なことを克服する。」「マイナスな部分にフォーカスして支援し、発達の遅れを取り戻していく。」というイメージをお持ちになっている方もいると思います。
特に発達検査を受けると、平均点に対して子どもがどこにいるのか、といったことが問題になり、「解決するべき課題」になっていきます。もらうアドバイスも「ここをこうしたら改善できる」といった、「マイナスを平均点にする方法」が多いです。
なぜ「できないことを指摘して、それを修正して標準化させる」ということが注目されるのでしょうか。
それは、「標準的なことが正しいこと」という認識が一般的だからです。
しかし、こういう考えをもとに行う療育は間違っています。
「子どもは、苦手なことを指摘されたり、苦手な課題を克服するために生まれてきたのではない」からです。
例えば、
「この子(年長)はお箸が上手に使えない。それだと将来困るだろうから、お箸をちゃんと使えるようにさせないといけない。」
という考えで、お箸の練習をひたすら繰り返すやり方を選択したとします。
こういう進め方では、困りごとは解決しません。
本来は、お箸を上手に使えないという事実があった場合、どこに原因があるのか?をセットで考える必要があります。
「視覚操作が苦手で、お手本を見せられても指先をどう動かせばよいのかわからない」とか「まだボディイメージ(身体図式)の認識が曖昧で、思うように手足を動かす力が弱い」など、理由が必ずあります。
まずは子どもの得意な部分を認め、安心できる環境を提示し、その中で自分に自信を持てる取り組みをスモールステップを意識して行う(図の左のようなイメージ)という流れが大事です。それらが整ってからはじめて「苦手なことにもチャレンジしてみよう」という気持ちが湧いてきます。
そういった基礎固めを行わず、いきなり苦手なことを繰り返しさせる、という方法を取ると、図の右のようなイメージになってしまい、子どもは自信ややる気を失い、自己肯定感も下がってしまいます。
言葉に関しても同じです。言葉に遅れがあるからと言って、絵カードを見せて「これは、みかんだよ。みかんって言ってみて!」という練習を何時間もしたところで、意味のある言葉として覚えることはできません。
なぜなら、まずみかんというものを意識の中で捉えていること、そしてみかんに興味関心をもっていること、大人の言う「みかん」という言葉と、目の前にあるオレンジで丸いものが一致していること、これらが言葉が出る前の基礎となります。
つまり、育ちの基礎が出来ていないと、言葉も体も認知も発達しないのです。
この【基礎を作り、数多の可能性を引き出していく】のが療育です。
療育の目的は「子どもを標準化させる」ことではない。
ご家族の方へ
24/10/26 13:50