可逆は成長のステージごとでいろんな形をとって現れます。前号では、生後6か月過ぎに現れる左右への寝返りの例をあげましたが、移動ができるようになる1歳前後は、頭からベッドを降りようとして周りをハッとさせることがよくあります。しかしその後半年もすると、身体を回転させて足から降りるようになります。降りたい気持は同じでも、1歳半を過ぎると、頭から「ではなく」足から…と身体を回す調整の気持ちが生まれます。この頃には、公園のすべり台をみつけると、そのままスロープの下から上「ではなく」、後ろにある階段を目指すようになります。ベッドを足から降りるのと同じように、目の前の目的に向かって直線的ではない調整のある行動のし方を身に付けます。
では、このような行動の調整への気づきは、どうやってこどもの内面に沸き出てくるのでしょう?
「~ではなく~」が始まる一つ前のステージのこどもは、クレヨンを使ってなぐり描きを始めたり、食事の道具におさじが登場したり、積み木の上に積み木を重ねたり、お砂をお椀やコップに入れっこしたりと、物を手段(道具)的に使うことが多くなります。同じころ、単語や指さしも芽生えます…「紙とクレヨン」、「ごはんとおさじ」、「積み木と積み木」、「物と声」、など、目に映る2つの物と物(音声)との関係を一つに組み合わせる経験をしっかり積み重ねることで、2つのイメージを同時に気持ちの中に位置づける力が育ちます。心の中が一つのイメージでいっぱいであれば、気持ちは「~だ」ということになり直線的な行動が先立ちます。この心に抱ける2つのイメージと、「○○したい」という意欲とが重なって、「~ではなく~」という調整の気持ちが誕生します。
可逆-2 「~ではなく~」
教室の毎日
21/03/04 17:36