【大人の自閉症】仕事での困りごと・対処法まとめ

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自閉症の人が大人になって仕事をしていると、「みんなはできるのに自分には難しく感じる」「どうしても仕事の流れがつかめない」など仕事がしづらいと感じることがあると思います。自閉症のある人には仕事において得意不得意がはっきりと分かれている場合もあります。自身の得意分野をきちんと理解して自分に合った職や対処法を探すことで、困りごとを解消することもできるでしょう。

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発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 自閉症で働いている大人はどのくらいいる? 大人の自閉症、いつ診断された?きっかけは? 大人の自閉症、向いている仕事と向いていない仕事は? 自閉症の大人の仕事の探し方 診断名を会社に伝えるべき? 自閉症の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法 一人で抱え込まず専門機関に相談を まとめ

自閉症で働いている大人はどのくらいいる?

自閉症(Autism)は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われています。

自閉症で働いている大人が日本にどれくらいいるか、はっきりとしたデータはありません。自閉症の発生頻度については以下のようなデータがあります。

自閉症の発生頻度
自閉症は約500人に1人いると言われ、症状が軽い人たちまで含めると、約100人に1人いると言われています。

出典:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html
ですが、一口に自閉症といっても、その症状の程度や、知的発達の遅れがあるかどうかなどは個々人で異なります。症状が軽い人から重い人まで、様々な自閉症の方がいるのです。
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自閉症の分類
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よって、自閉症の人の中でも、民間の企業に就職する人、就労支援施設で就労する人など、その働き方は様々です。

症状の重い方は、国・民間の就労支援事業などを利用し、無理なく仕事ができるところに就職することも選択肢の一つとなります。時間も短い方で1時間ぐらいから働くことができるので、個人のペースに合わせて仕事ができるためストレスが軽減されます。

大人の自閉症、いつ診断された?きっかけは?

自閉症は大人になってから発症することはありません。ですが自閉症の症状は十人十色なので、症状の軽い方の中には大人になるまで見過ごされている場合もあります。何らかのストレスや問題に直面し、生活をうまく送れないと思った時、はじめて気づくこともあるのです。

社会に出て仕事でのミスや人間関係がうまくいかないなどで心療内科に通い、自閉症と診断される方もいます。子どもの時から対人関係に悩んでいる方が多く、大人になって診断を受け「やっぱり」と納得する方も多いのです。子どもの頃は自分自身で受診するのは難しいですが、大人になると自分の意思で受診することができるので、病院へ行くのも容易になります。

大人の自閉症、向いている仕事と向いていない仕事は?

障害あるなしにかかわらず、向いていない仕事に就くと失敗が多くなり、本人も辛い思いをしてしまいます。自分の特性を知り、得意なことや好きなことを生かせる仕事だと、うまくいく可能性も高くなるでしょう。

自閉症の人の場合、苦手な作業、得意な作業にある程度の傾向があります。全ての自閉症の方のに当てはまるわけではなく、あくまで傾向にしか過ぎませんが、自閉症の方に向いている仕事と向いていない仕事を紹介します。

自閉症の人が向いている仕事

•プログラマー
•マーケティングリサーチ
•在庫管理
•経理
•点検・調整作業
•工場での流れ作業
•機械の部品の組み立て
•システムエンジニア
•学者
•芸術家


パターン化された作業に強い、一つの作業に集中できる、数字に強い、専門性の高い知識が必要など、自分の特性や能力を活かせる仕事を探していきましょう。

自閉症の人が苦労しやすい仕事

人とのコミュニケーション力の高さが必須とされている職業や、急な予定変更などが頻繁にあるなど、苦手なことや特性に合っていない職業だと、ストレスも大きくなってしまうこともあります。

自閉症の大人の仕事の探し方

自閉症の方が仕事を探す方法は色々とあります。国・民間の就労支援事業所に相談したり、担当医に相談したり、自分で探したりすることができます。どの方法がよいかは個人差がありますが、色々な方の力を借り、ストレスのかからない仕事を探しましょう。

自閉症の人が仕事を探す場合、自閉症のない人と同じ方法で探す方法もありますが、診断を受けたり障害者手帳を持っている人は、公的な支援を受けながら仕事を探すことも、選択肢の一つとして検討することができます。

以下では、自閉症の人が仕事を探すにあたって、相談・利用できる支援制度や雇用の枠組みをご紹介します。

就労を支援してくれる機関・サービスを利用する

■ハローワーク:
最寄のハローワークで相談をすることができます。ハローワークには障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の自閉症の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をしてみましょう。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。

「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。

ハローワークは発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。

■就労移行支援:
就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても支援を受けることができます。また、就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。

■ジョブコーチ制度:
就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。
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障害者雇用制度を利用する

精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得している場合、いわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。

・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる
・障害者職場適応訓練を受けられる 

など、通常の就職採用枠と異なる特徴があります。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。

ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。

自分で探す

就労支援サービスを受けたり、障害者雇用制度の求人枠を利用せず、自分で仕事を探すこともできます。その場合、すべて一人で決めなくてはいけません。仕事の内容や、面接のスケジュール管理、面接へ向かう道のりなどをすべて自分で行いますので、少し負担がかかるかもしれません。

また、コミュニケーションを苦手とする人の場合は、周りの人がうまく就職活動をサポートし、一番働きたいところで働けるよう面接の練習を手伝ってもらったり、サポートを受けた上で面接に臨むようにしましょう。

診断名を会社に伝えるべき?

国・民間の就労支援制度を通して就職先を見つけ、事前に自閉症ということを伝えてある場合は問題ありません。しかし自分自身で仕事を見つけた場合、自閉症であることは伝えた方がいいのか迷う方もいるでしょう。

また伝える場合、どのように伝えればいいでしょうか。

会社や同僚へ伝える前にメリット・デメリットの検討を

必ずしも診断名を報告する義務はありません。伝えた場合、伝えない場合、それぞれにメリット・デメリットがあるのでご自身の状況を考えたうえで報告するかどうかを見極めたほうがよいでしょう。

自閉症だと伝えるメリットとしては、周りの理解が得られれば、職場環境や仕事内容、人事異動などを検討してくれたり、仕事上のフォローをお願いしやすくなるという点が挙げられます。

業務内容にもよりますし個人差はありますが、自閉症があることを隠したまま仕事をしていると、本人が辛い思いをする可能性が増えることが考えられます。例えば感覚過敏で苦手な刺激や作業がある場合や、対人関係などが挙げられます。

ストレスを抱えて仕事をすることによって、さらに失敗が増えるなど、よくない悪循環にはまってしまうことも考えられます。

一方、デメリットとしては、報告しても障害への理解が得られない可能性も0ではないということです。逆に誤解されてしまう場合も考えられるので、ご自身の状況と環境をよく考え、報告するかどうか決めるとよいでしょう。報告する場合はまずは信頼できる人を選んで相談し、社内のどの程度まで共有するのが良いか相談してみると良いでしょう。

会社・同僚へ自閉症を伝える場合

面接の時に伝えることができれば一番よいのですが、なかなか伝えるタイミング等が難しい場合があります。そのまま入社し問題なく仕事をこなすことができれば周りに伝える必要もないと思いますが、仕事をしている中で仕事の進め方に戸惑い何か不便を感じたら、上司に相談するといいかもしれません。

伝える時に大切なことは、「自分が自閉症で、どんなことに困っているか、どうしたら改善できるか」ということを理解してもらうということです。上司や同僚が自閉症に詳しいとは限りません。自閉症について記載してある簡単な資料など、自閉症のことがわかる資料を持参するなどして、仕事上で困難となることや、どのような仕事に関してサポートが必要だということを伝えるようにしましょう。

自閉症の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法

以下では、自閉症の方が就職した際に、その特性から生じやすい困りごとと、それらに対するサポートの例をご紹介します。働く上で困りごとが発生しても、それを本人や周囲が理解し、適切なサポートをしていくことで、仕事を進めやすくなります。

スケジュール管理や優先順位付けが難しいことがある

自閉症の方は、時間を管理するのが得意ではありません。何時にどこに行くから、この時間に出るなどの時間の組み立てが苦手です。また複数の仕事に優先順位をつけるのが苦手で時間がかかることもあります。

スケジュールを立てる際には上司や同僚に相談するとよいでしょう。また、今はスマホのアプリなどで、タスク管理をしたり、目的地までの時間と道のりが表示されたりといった便利なツールがありますので、事前に調べ予定を立てることで、ミスを防ぐことができます。

上司や同僚への報告・相談が難しいことがある

自閉症の人は、自身の行動基準や他人との関わり方に、独特のルールやこだわりを持っていることが少なくありません。社会に出たら「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」をはじめ、周囲の人と円滑に協働するためのコミュニケーションが必要になりますが、適切な支援やインプットがなければ、何をどう上司や同僚に報告したらいいのかわからずに抱え込んでしまうことが少なくありません。

上司や同僚など周囲の人は、報告や相談をすべき事項の基準やその方法を整理して相手に伝えたり、定期的に振り返りを行うなどして、コミュニケーションに行き違いが起こりにくいようなサポートをすると良いでしょう。

本人の側でも、はじめのうちは、自分が意識する以上に細かく上司に報告しながら業務を進めた方が、予期せぬトラブルが避けやすくなるでしょう。

仕事の流れを理解・整理することが難しいことがある

自分に与えられた仕事を実行する上で、口頭の指示だけでは理解するのが難しかったり、メモを取ろうとしても、何をメモしていいのかわからなくなったりして、戸惑ってしまいがちです。

・指示は一つ一つ明確簡潔に、文書や図での補助も適宜活用する
・携帯やデジカメを使い、担当業務内容を画像で記録していく

など、仕事の内容を確認・理解しやすい方法や環境をつくっていくことが重要です。

周りの人の気持ちを察するのが苦手

自閉症の人は、他人の表情から気持ちを読み取ったり、場の暗黙の空気を踏まえた上で発言することが得意ではない場合があります。

職場でのコミュニケーションに齟齬が生じていると思われた場合は、会議等の場の位置づけや目的を整理したり、個別に他人から見た印象や気をつけると良いことを周囲の人がインプットしてあげると良いでしょう。また本人も、そうしたインプットを重ねながら、「自分がこの発言をしたら周りはどう思うかな?」と周りの人の気持ちをより意識して発言するように練習していきましょう。

環境の変化に対するストレスが強い

自閉症の人は、急な環境の変化が苦手な傾向があります。

急な追加業務や残業に対応しようとすると戸惑ってしまったり、感覚過敏のため周囲の音などが気になって落ち着いて仕事ができなくなることもあります。また、配置転換や人事異動に強いストレスを感じることもあります。

事前に予定の見通しを立てやすくなるよう、職場の環境調整ができないか上司や同僚に相談してみましょう。どうしても異動などをしなくてはいけないときは、必要なサポートについて事前に相談しておくとよいでしょう。

一人で抱え込まず専門機関に相談を

自閉症の人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。ですが一人で抱え込まずに、周りの人のサポートを受けることが問題解決のためには大切です。就労支援をはじめ、ジョブコーチなど、公的な支援を受けることもできます。

また、専門家に相談するのもよいでしょう。大人の場合、以下のような専門機関で相談することもできます。
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・精神保健福祉センター
・相談支援事業所 など

自閉症のことの職場に報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。

こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。

障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。

まとめ

自閉症の方が仕事に就くのは難しいと思われがちですが、自分の特性を理解し、適職を探し困りごとを軽減する工夫をすることで活き活きと働くことができます。

自閉症の特性を周囲に伝え理解やサポートを受けることができれば、働きやすい環境になるかもしれませんし、向いている仕事を担当させてもらえるかもしれません。自分自身に合った仕事を探し、ストレスの少ない生活を送りましょう。
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