嫌なことからは脱走!そんな息子を成長させた「音楽療法」とは?

ライター:林真紀
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「音楽療法」と聞くと、ホスピス緩和ケアや老人ホームで行われているイメージが強いですが、実は発達障害の子どもたちの療育としても取り入れられています。今回は息子を通じて知った音楽療法の奥深さについてご紹介したいと思います。

欧米では当たり前?障害児向けの音楽療法

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「発達障害児の療育」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?

手先のトレーニングをする作業療法、言葉の理解や発語の訓練をする言語療法でしょうか。多くの病院で発達障害児向けに用意があるのはこの2つかなと思います。かく言う私の息子も、4歳から病院の言語療法に通っています。

欧米ではこれらの療育に加えて「音楽療法」という療育方法が盛んに研究・実践されており、病院・社会福祉・障害児の療育等の現場に広く普及しています。

興味本意で通い始めてみた

息子は3歳のときに音楽療法に出会いました。私自身が翻訳の仕事をしているため、欧米の文献を日常的に目にします。その中で、発達障害児に関する欧米の研究成果を読んでいるとき、音楽療法に行き当たったのです。

幸い、自宅から車で40分ほどの隣町に、スペシャルニーズの子どもたちに向けて音楽療法を行っている場所がありました。重度知的障害のある子どもから軽度の発達障害児まで、様々な子どもたちがセッションを受けているようでした。

保険診療の対象ではないので、普通のお稽古事と同じぐらいのお月謝が必要ですが、ちょっとした好奇心で体験レッスンを申し込んでみたのです。

えっ!音楽療法を勘違いしていた私

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それまで私は音楽療法について大きな誤解をしていました。

「音楽を聴いて脳を活性化させるのかな?」「クラシックを聴いて多動や興奮を抑える?」「歌を歌えるようにする?」

こんな風に音楽療法は音楽を学ぶ療育だと勘違いしていたのでした。しかし、それは全く違うということに気づきました。

音楽療法とは、子どもたちがソーシャルスキルを学ぶことを目的としており、その合図や道具として音楽を使っていたのです。これは、目から鱗でした。

セッションでは毎回息子の行動に関する目標を立て、それを達成するために音楽療法士の先生方がセッションをアレンジしてくださっています。

その目標はさまざまで、例えば「気持ちの切り替えができるようにする」「先生の真似をしてみる」「順番を待てるようにする」「アイコンタクトをしてみる」などです。

「話すときは顔を見なさい!」と頭ごなしに叱ったところでパニックを起こしてしまうだけ。
音楽療法のセッションの間は、音楽を演奏したりゲームをしたりする中で、ふっと子どもが音楽療法士の顔を見る瞬間を作るのです。その瞬間を療法士は見逃しません。すぐに褒めてくれるのです。

こういったセッションを繰り返すことで、息子は自然にアイコンタクトが出来るようになりました。
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しばらくして息子は同年齢の子どもたちとのグループレッスンになりましたが、ここで3か月間ほどつまづくことになります。
大人は子どもに合わせてくれるけれど、同年齢の子ども同士では自分自身も妥協してお友達と協力しなければなりません。そんな場面では「嫌だ、帰る」と叫んでいました。

そんな時期が3か月ほど続いていましたが、療法士の先生方は根気よく付き合ってくださいました。そしてある日、息子がグループレッスンで、ふとした拍子にお友達を協力することができたのです。

お友達と協力してみたら意外に楽しかったことを知り、上手に協力できたことで息子にとって集団参加への大きな自信となっていきました。
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