こだわりからの卒業、最初の一歩は「とことん付き合う」こと

ライター:立石美津子
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自閉症児にはこだわりがありますよね。この洋服しか着られない、この道順しか通れないなど。息子にもたくさんありました。そんなこだわりからどう卒業したか電車の例でお話ししたいと思います。

息子は春から高校生になります。それなりに自閉症児として経験を積み、こだわりも減りました。でも、今思い返すと2~5歳の幼児期は一番大変でした。

『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお伝えしたいと思います。

はじまりはアレルギー科の主治医の一言

当時、息子は食物アレルギーと小児喘息があり、国立の小児病院のアレルギー科と小児精神科に通院していました。

アレルギー科の主治医から
「できるだけ発作を起こさないように普段からステロイド吸入をしてください」と言われていました。

“ステロイド”と聞いただけで拒否反応を起こしていた私に対して、主治医はこう続けました。
「喉の炎症が残っていると喘息が誘発されるので、まず起こさないことが大切です。発作を起こせば起こすほど喘息は悪化しますから、発作は本人も相当辛いと思いますよ」

そして小児精神科の主治医からもこう言われました。
「パニックを起こせば起こすほど、更にパニックが誘発されてしまいます。だから、こだわりには応じ、安心できる環境を与えてやってください。パニック起こして一番しんどいのは本人なんですから」

更に、
「もし、お母さんが人の履いたスリッパがどうしても履けなかったとしましょう。『履け』と命令されたらどうですか?それを履いてセミナーに参加して落ち着いて聞いていられますか?
これと同じで、お母さんからすれば『なんでこんなことにこだわるんだ』と思うことも、本人にとってはとても耐えがたい嫌なことなのですから、こだわりには応じてあげてください。」

それからは息子が「これだけを着たい」と言えばそれを着せ、同じデザインの靴しか履かなければ、13センチ、14センチ、15センチと何足も買って応じていたものです。

こだわりが顕著だった「井の頭線」

4歳から2年間、療育に通うために週1回、渋谷駅から吉祥寺駅まで井の頭線に乗っていました。
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井の頭線は1000系(新車両)と3000系(旧車両)があり、当時は旧車両から新車両への移行時期でした。

息子は「3000系の各駅」へのこだわりがありました。
おそらく、もともと3000系の各駅が好きだったわけではなく、療育に通い始めたときにたまたま最初に乗ったのが3000系の各駅だったため、これがパターン化したのだと思います。

靴も洋服も、最初に与えたものに固執しているような気がします。

車内で大パニック!

医師からこだわりに付き合うように言われていたため、本人に希望どおりの電車に乗っていました。

療育まで1時間で行けるところを、1時間半くらい余裕を見て家を出るなど、子どものこだわりを見越した行動を心がけていました。

ところがある日、吉祥寺駅で待てど暮らせど3000系各駅電車がこないのです。大抵は15分に1本は来ます。
駅員に尋ねると「今日は一両故障しているので3000系は1時間に1本です」と言われました。
12月の寒空の中、息子は待合室に入ることを許してはくれず、駅のホームで待っていました。
しかし、さすがの私も我慢の限界。本人が嫌いな1000系の電車に腕を掴んで無理やり乗車させました。

すると、車内で大パニック。
放たれた鳩のようにあっちの壁にぶつかり、こっちの壁にぶつかりだしたのです。

次の駅に着くたびに、別の車両へ1人、2人と移動し、入ってきたお客さんも騒がしい子どもがいると思ったのか別車両へ移動。
見知らぬ男性から「母親だったら躾をもっとちゃんとしろ!」と怒鳴られました。少し涙ぐんでいた私に、近くにいた女性が「お母さん大変ですね」と言ってくれ、その言葉だけに救われ、渋谷駅まで耐えに耐えていました。

これに懲りた私は、それからは防寒グッズを充分に準備し、本人が希望する電車に必ず乗るようにしました。
主治医に言われた言葉、「お母さんと一緒だったら安心という環境」をつくるためにも私がオアシスにならなければならないんだと我慢、我慢の日々でした。
次ページ「将来を見据えたとき、このままでいいのだろうか?」

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