全般性不安障害(全般性不安症)とは?症状や特徴、対処法など【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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全般性不安障害とはさまざまな出来事や活動に対して過剰な不安を抱き、集中力の低下や筋肉の緊張などさまざまな体調不良が現れる疾患です。不安の対象は仕事や勉強、家庭、健康など多岐にわたっており、ライフステージによっても変わっていきます。そこで、年齢ごとの具体的な症状や特徴、本人・周囲の人の対処法などを紹介します。

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監修: 染村宏法
精神科医
産業医
大手企業の専属産業医として勤務後、昭和大学精神医学講座へ入局、昭和大学附属烏山病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動に従事。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、簡易型認知行動療法、睡眠衛生等に関する介入研究や教育に携わった。
目次

全般性不安障害(全般性不安症)とは?主な症状

全般性不安障害とは、仕事、学校、家族、健康などに対して、自分自身で感情をコントロールできないほど過剰に心配をし、普段の活動に支障をきたすほど不安な状態が続く疾患です。全般性不安症とも呼ばれています。

全般性と呼ばれるように、不安の対象は限定されておらず年齢などライフステージによって変わってくることでも知られています。

不安自体は誰でも感じることがありますが、多くの人は日常生活に影響しない程度にコントロールできると言われています。全般性不安障害は、こうした不安や心配のコントロールにトラブルが生じ、日常生活に支障が出るほどの症状となって現れた状態であり、一般的な「心配性」などの性格とは区別されています。

・身の回りに起こる出来事に対して大きい不安を感じ、それが長く続く傾向がある。
・不安や心配の感情が前触れなくいきなり生じる。
・不安や心配の感情が筋肉の緊張や疲れやすさなど身体の不調になって現れる。


以上の症状を顕著に感じ、長期化しているとき、全般性不安障害を発症している恐れがあります。

全般性不安障害(全般性不安症)の症状、診断基準

全般性不安障害は具体的な診断基準があり、医師が診察を通して症状と診断基準を照らし合わせて判断します。診断基準はアメリカ精神医学会の「DSM-5」が用いられることが多くなっています。

診断では、日常生活の多くの出来事、または活動において、まだ起きてもいないうちから、過剰な不安や心配を感じる状態となっているかや、この時、焦燥、注意散漫、集中困難、緊張、疲労、易怒性、睡眠障害などの症状がみられるか、社会生活や職業生活に問題が生じているか、といったことがみられます。また、その状態が6ヶ月以上続いているかも確認します。

さらに診断に際しては、薬などの物質、そのほかの医学的疾患、そのほかの精神疾患によるものではないことについても確認されます。
日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014年刊)p.221
https://www.amazon.co.jp/dp/4260019074

症状は年齢と共に発展していくの?その経過は?

全般性不安障害による症状は、生涯を通じて慢性化し、よくなったり、悪くなったりを繰り返します。また、不安の対象は年代や自身の置かれているライフステージなどによってその都度変化していきます。

子どもは特に、学校の成績や友人関係、スポーツなどにおいて、自分は優秀なのか、できる子なのかと、過剰に心配する傾向があります。自身ができる子なのかという判断は、他人と比べる相対評価からくる判断ではありません。

大人は、仕事への責任の重さ、自身・家族の健康、家計、身の周りの人たちに起こりうる災難、日常的に起こるささいな時間・予定のずれなどにおいて、毎日定期的に心配します。
全般性不安障害の症状の重さの図
全般性不安障害の症状の重さの図
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全般性不安障害(全般性不安症)と併存しやすい症状

全般性不安障害と併存しやすい症状として、分離不安症、広場恐怖症、パニック障害(パニック症)などのほかの不安症や、うつ病(単極性障害)が挙げられます。

これらが併存症と診断されていない場合であっても、過去から現在にかけて、診断基準を満たしている場合が多く見られます。

また、感じている不安や心配を打ち消すためにアルコールを継続して摂取し、アルコール依存症になってしまうケースも多いと言われています。

全般性不安障害(全般性不安症)の原因

原因として、性格からくる要因、環境からくる要因、遺伝要因の3つがあります。

性格からくる要因として、我慢強い性格、ネガティブ思考、リスクをとらない性格などが挙げられます。

環境的要因として、子どもの頃の逆境体験や育児環境(過保護、過干渉など)が関係しているのではないかといわれています。。しかし、これらは完全に証明されたわけではなく、必ずしも十分な要因ではありません。

遺伝要因として、家族に不安障害の人がいる際に不安になりやすい傾向があり、そのことが要因の一つになっていることが考えられます。といっても、家族に不安障害の人がいても必ず発症するわけではありません。

全般性不安障害の原因はまだ解明されておらず、現在も研究が続いている段階です。

全般性不安障害(全般性不安症)の治療法

全般性不安障害の治療法として主に薬物療法と精神療法があります。

■薬物療法
即効性があるといわれている抗不安薬を用いる場合があります。代表例はベンゾジアゼピン誘導体などです。

また、連鎖的に表れる不安には抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や、5-HT1A受容体部分作動薬などが用いられます。全般性不安障害は精神を安定させる働きのある脳内伝達物質、セロトニンの調節安定性も大きく関わっています。そのため、セロトニンに直接作用する抗不安薬が即効性があるといわれているのです。

しかし、薬には副作用もありますし、人によって合う合わないがあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めるとよいでしょう。

精神療法は、即効性はありませんが薬物療法に比べて副作用が少なく、再発率も低くなっています。全般性不安障害に有効な精神療法の代表例は認知行動療法(CBT)です。

■認知行動療法(CBT)
認知療法・認知行動療法は、物事の受け止め方や考え方、行動に働きかける精神療法です。

具体的には、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのかを客観的に観察し、“自動思考”という考えのクセを把握します。そして、そういった状況に直面した際に、どのように考え、対処していけばいいかを考え、柔軟な対応ができる思考を身につけていきます。

日常生活でできること

全般性不安障害に対して、日常生活で行えること。それは生活習慣を整えていくことです。なぜなら、生活習慣が乱れた日々が続くと、いつもよりネガティブになったり、イライラしたりし、精神状態が不安定になってしまうからです。

そのため、以下の基本的なことから意識して行っていきましょう。

・十分な睡眠をとる
・栄養バランスのとれた食事を摂取する 
・適度な運動をする
・アルコール摂取量を控える

また、生活習慣を整える以外にも、深呼吸などの個人でできるリラックス法を身につけていくことも大切です。

リラックス法には、ゆっくりと腹式呼吸を繰り返していく方法や、今の気持ちを紙に書きだしてすっきりする方法、好きな音楽を聴いてリラックスする方法などがあります。自身に合った方法を探してみるとよいでしょう。
次ページ「全般性不安障害(全般性不安症)を発症しやすい人の特徴」

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