喃語や言葉の発達の相談先は?

これまでに何度か述べてきたように、乳児期の赤ちゃんの発達には大きな幅があるため、身体の成長などと共に、喃語が急に出てくることは決して稀なことではありません。しかし、専門家に相談してみることで、療育の機会の提供や、思ってもみなかった子育てに関する情報を得られることもあります。気になることがある場合には、専門機関を訪れてみるとよいでしょう。

小児科

小児科というと、子どもの風邪や病気の診断、治療をするイメージをもつかもしれませんが、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。より子どもの発達に詳しい専門機関などの情報も持っているので、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。

地域子育て支援センター

行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供 することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。

乳幼児健康診査

乳幼児健診は、各市町村の保健センターなどで行われているもので、赤ちゃんの病気の早期発見や予防と早期発見、そして順調に発達しているかどうかを確認するための検査です。保護者が普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。

また、乳幼児健康診査は、同じ月齢期の赤ちゃんを育てる保護者も来ており、子育てを同じくする人と情報交換できる場所でもあるので、上手に活用しましょう。

児童相談所(こども相談所)

0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のWebサイトなどを見て確認するようにしましょう。

赤ちゃんの育ちが「早い」か「遅い」かは判断できるの?

育児の中で、よく聞かれるのは「遅いか早いか」というスピードについて心配する声です。ですが、赤ちゃんの育ちを遅いか早いかというスピードだけで捉えるのは不十分です。赤ちゃんの育ちはそれほど単純ではありません。

赤ちゃんの育ちは、「順序や方向性」という縦の関係と「ほかの領域の育ちとのつながり」という横の関係という二つの軸から理解することが大事です。

■縦の関係:順序や方向性
子どもは発達していく際、ある一定の順序をたどります。分かりやすいのは、「ハイハイする→立つ→歩く→走る」という順序です。子どもが「走る」ことができるようになるためには、発達の順序をさかのぼって、乳児期に「ハイハイする」状態が達成されていることが大切であることは分かると思います。これが縦の関係です。

赤ちゃんの育ちは、同じスピードで進むのではなく、あるとき急に前に進んだり、時にはしばらく停滞する時期があったりと、波があります。ですが、そこには決まった順序と方向性があるのです。

■横の関係:他の領域の育ちとのつながり
そして横の関係とは、子どもの育ちにおける、さまざまな領域の互いのつながりのことです。ここでいう領域とは、運動発達、他者とのコミュニケーション、言葉の発達などです。喃語が遅れている場合には、そのほかの領域でも遅れが重複してみられるケースがほとんどです。つまり、喃語という「言葉」の領域のことについて考えるとき、赤ちゃんの運動能力の育ちや、情緒面の育ちについて同時に考えることが必要です。

ですので、赤ちゃんの育ちに寄りそう際に、喃語の発声のみを促そうとしても、発達を手助けすることにはなりません。喃語が出ないときには、赤ちゃんの生活全体に対して働きかけていくことが大切になります。

喃語を引き出すための工夫

赤ちゃんの喃語が出てくるには、子どもと養育者のコミュニケーションの積み重ねがあります。最初は抱っこをすることによる養育者の体温や匂いを感じることから始まり、また、視線を合わせたり、微笑みがシンクロしたり、音声のトーンを真似したりという、やりとりが生まれ、進展していきます。

人とふれあうことの心地よさこそが喃語の発声を促していきます。前の章で、赤ちゃんの生活全体に働きかけることが大切だと記しました。このような考え方をベースとして、喃語を引き出すための工夫についてお伝えいたします。

ゆっくり、はっきりと話しかける

赤ちゃんは、喉の筋肉や音をつくる器官の成長に伴い、思い通りの音を出すために準備をしている段階です。赤ちゃんに話しかけるときは、口の動きがよく見えるようにゆっくりと、そしてはっきりと話しかけるとよいでしょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは視力が弱いために、遠くにあるものは見えないので、赤ちゃんの顔の近くで話しかけると赤ちゃんがだんだんと養育者が口を動かしたり、声を発していることを認識していきます。このような働きかけを行うことで養育者の口元の動きに引きずられるようにして口を動かして模倣しようとする姿が見られることがあります。

赤ちゃんを笑わせる

また、赤ちゃんが声を出すためのサポートとして、赤ちゃんを笑わせる方法があります。ここで指している笑いとは、微笑みとは異なり、「キャッキャ」「ハッハッハ」と声をあげて笑うというものです。

赤ちゃんが喃語を発するためには、息を吐き出すコントロールをすること、喉の奥の空間が広がっていることが必要な要素なのですが、笑うときにはそれらのことが赤ちゃんの体で行われます。
正高信夫/著 0 歳児の言語習得と四肢運動の発達 2002年/『バイオメカニズム学会誌』Vol.26 ,No.1
https://ci.nii.ac.jp/naid/110001096722

やりとりをしたいという思いを引き出す

加藤ひとみ・大國ゆきの/著 「幼児期の言葉の獲得 〜幼児期の発達特性と幼稚園での教育」2015年/『東京成徳短期大学紀要』48号
https://tsu.ac.jp/Portals/0/site-img/tandai/bulletin/bulletin48_03.pdf
赤ちゃんの表情や行動から、その心を察して気持ちに寄り添い、働きかけを行うことによって、乳児は「通じ合っている」喜びや心地よさを感じられるかもしれません。具体的な働きかけとしては、微笑みを返したり、「そうなのね」と相槌を打ったり、「気持ちいいのね」などと赤ちゃんの気持ちを代弁するような言葉がけをするなど、さまざまなものが挙げられます。

赤ちゃんは養育者からの働きかけによって、心地よい思いを経験します。その経験が積み重なることで、養育者ともっと関わっていきたいと、人とのコミュニケーションに対して強い欲求をもつことができます。

育ちを考えるときに常に立ち返っていく原点は、養育者と赤ちゃんとの心地よいコミュニケーションなのです。
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