赤ちゃんの喃語が出る時期について、喃語が出ない、遅いときの原因や工夫、相談先まとめ【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
喃語(なんご)とは、「ばばば」「だだだ」など、赤ちゃんが発する子音と母音が連続する音からなる声のことを指します。このコラムでは、赤ちゃんの喃語について、また喃語が出ない・遅いときに考えられる原因や、喃語を引き出すための工夫や相談先についてお伝えします。
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
喃語(なんご)とは?
喃語とは、「ばばば」「だだだ」など、赤ちゃんが発する子音と母音が連続する音からなる声のことを指します。規準喃語ともいいます。
赤ちゃんは、喉から出す音を変化させたり、違った音声を組み合わせたり、繰り返したりしながら、それを自分で聞いて楽しんでいます。一人でいるときにも、自発的に声を出すことが多くなるので「声遊び」をしていると考えられています。最初は「あう」、「まん」など短い発声が、この「声遊び」をしていく中で、だんだんと「あぶぶぶ」「あむあむ」「んまんまんまんま」など長い喃語を発する機会が増えてきます。
喃語が出るときには、新生児期のときよりも体の動きが活発となります。リズミカルに上下に手を動かすバンギング(bangging)が、機嫌のよいときに出るようになり、また顔の表情も豊かになってきます。
そして、だんだんと手足を動かしながら、喃語を発することが増え、発声そのものが思いや感情を伝える「道具」としての役割をもつようになってきます。これまで泣くことで気持ちを伝えていた赤ちゃんは、喃語を発することが養育者などの周りの人と関わるための一つの方法であることが分かるようになります。
赤ちゃんの喃語が出てきたときには、相槌をうったり、声をかけたりと応答的に返事をしてみましょう。相手と「通じ合っている」喜びや心地よさを体験することで、赤ちゃんはやりとりをすることに対して前向きな気持ちをもつことができるかもしれません。
赤ちゃんは、喉から出す音を変化させたり、違った音声を組み合わせたり、繰り返したりしながら、それを自分で聞いて楽しんでいます。一人でいるときにも、自発的に声を出すことが多くなるので「声遊び」をしていると考えられています。最初は「あう」、「まん」など短い発声が、この「声遊び」をしていく中で、だんだんと「あぶぶぶ」「あむあむ」「んまんまんまんま」など長い喃語を発する機会が増えてきます。
喃語が出るときには、新生児期のときよりも体の動きが活発となります。リズミカルに上下に手を動かすバンギング(bangging)が、機嫌のよいときに出るようになり、また顔の表情も豊かになってきます。
そして、だんだんと手足を動かしながら、喃語を発することが増え、発声そのものが思いや感情を伝える「道具」としての役割をもつようになってきます。これまで泣くことで気持ちを伝えていた赤ちゃんは、喃語を発することが養育者などの周りの人と関わるための一つの方法であることが分かるようになります。
赤ちゃんの喃語が出てきたときには、相槌をうったり、声をかけたりと応答的に返事をしてみましょう。相手と「通じ合っている」喜びや心地よさを体験することで、赤ちゃんはやりとりをすることに対して前向きな気持ちをもつことができるかもしれません。
喃語はいつからいつまで?クーイングの時期はいつ?言葉の発達のステップ
赤ちゃんが私たち大人のように、言葉を使いコミュニケーションをとることができるまでにはどのようなステップがあるのでしょうか。ここでは、赤ちゃんの言葉が育っていくステップについてご紹介します。
1.泣く
生まれてきてすぐの頃には、赤ちゃんは空腹や排泄、眠いなどの不快な状態を表すために泣きますが、これは体の内部の不快な状態を表しただけで、特に養育者に向かって訴えたものではありません。
2.クーイング
生後間もなくは、泣くことでしか自身の身体の状態を示すことのできなかった赤ちゃんはやがて、「くー」や「あー」などの、柔らかい声を出すようになります。これは、赤ちゃんが「心地よい」「気持ちよい」と感じるときに多く発する声でクーイングと呼ばれています。クーイングは、だいたい生後2ヶ月ごろから見られます。音をつくる器官が少しずつ育ってきている証拠です。
3.喃語
そして、骨格が整い、口の奥にある音を作る器官が成長することにより、「あう」「あむ」や「ばぶ」などの、2つ以上の音のある声を発するようになります。やがて、7~10ヶ月ごろを過ぎると、「ばばば」「だだだ」など、子音と母音が連続する音からなる喃語に変化していきます。また音の調節と発声、肺から出る空気のコントロールができるようになり、発する喃語の発音もはっきりしてきます。
4.指さし
喃語が出るようになってから、3~4ヶ月くらいが経つころには、徐々に喃語は少なくなり、その代わりに指さし、身ぶり手ぶりが増えていくことが多いようです。うれしい、楽しいなど自分の気持ちを伝えられるようになってきます。
5.一語(有意語) 、やがて二語文へ
そして、ある特定の音声(マンマならマとンとマという音の組み合わせ)が、どの人にとってもほぼ共通するモノと結びついていくことが分かり、意味をもった言葉(有意語)になります。有意語が喃語と異なるのは、意味のともなう言葉であるという点です。例えば、「犬」という意味をともなった「わんわん」、「ごはん」という意味をともなった「まんま」などです。言葉は、子どもが伝えたい事柄に対して、大人がそのものの名前を伝えていくことにより獲得されていきます。
「まんま、ちょうだい」などの二語文が出るのは、一語文が出るようになってから、6~8ヶ月経過したころが多いようです。最初のうちは片言でしか話すことができないですが、徐々にはっきりと話すことができるようになってきます。
生まれてきてすぐの頃には、赤ちゃんは空腹や排泄、眠いなどの不快な状態を表すために泣きますが、これは体の内部の不快な状態を表しただけで、特に養育者に向かって訴えたものではありません。
2.クーイング
生後間もなくは、泣くことでしか自身の身体の状態を示すことのできなかった赤ちゃんはやがて、「くー」や「あー」などの、柔らかい声を出すようになります。これは、赤ちゃんが「心地よい」「気持ちよい」と感じるときに多く発する声でクーイングと呼ばれています。クーイングは、だいたい生後2ヶ月ごろから見られます。音をつくる器官が少しずつ育ってきている証拠です。
3.喃語
そして、骨格が整い、口の奥にある音を作る器官が成長することにより、「あう」「あむ」や「ばぶ」などの、2つ以上の音のある声を発するようになります。やがて、7~10ヶ月ごろを過ぎると、「ばばば」「だだだ」など、子音と母音が連続する音からなる喃語に変化していきます。また音の調節と発声、肺から出る空気のコントロールができるようになり、発する喃語の発音もはっきりしてきます。
4.指さし
喃語が出るようになってから、3~4ヶ月くらいが経つころには、徐々に喃語は少なくなり、その代わりに指さし、身ぶり手ぶりが増えていくことが多いようです。うれしい、楽しいなど自分の気持ちを伝えられるようになってきます。
5.一語(有意語) 、やがて二語文へ
そして、ある特定の音声(マンマならマとンとマという音の組み合わせ)が、どの人にとってもほぼ共通するモノと結びついていくことが分かり、意味をもった言葉(有意語)になります。有意語が喃語と異なるのは、意味のともなう言葉であるという点です。例えば、「犬」という意味をともなった「わんわん」、「ごはん」という意味をともなった「まんま」などです。言葉は、子どもが伝えたい事柄に対して、大人がそのものの名前を伝えていくことにより獲得されていきます。
「まんま、ちょうだい」などの二語文が出るのは、一語文が出るようになってから、6~8ヶ月経過したころが多いようです。最初のうちは片言でしか話すことができないですが、徐々にはっきりと話すことができるようになってきます。
喃語がなかなか出ない…。原因は?
母子手帳やインターネットや書籍には、月齢ごとの赤ちゃんの発達についてたくさんの情報があふれています。子育てをする中で、そのような情報と比較して、不安になることがあるかもしれません。
しかし、体重や身長、運動能力などと同じように、言葉の育ちのスピードは、赤ちゃん一人ひとり異なります。赤ちゃんの育ちにおいて、「この時期にこれこれができるようになる」という基準は非常に曖昧なものです。
喃語も、おおよそ生後5~6ヶ月に出るという基準はあるものの、赤ちゃんによって生後6ヶ月よりも早く喃語の出る赤ちゃんもいれば、1歳ごろになってから喃語が出る子もいます。
赤ちゃんが喃語を発するまでには、体や心の中でいくつかの準備が行われ、整えられていく過程があります。一つは聴覚や、喉の筋肉、運動機能の発達などの身体的な基礎の発達です。
二つ目は、社会性の基礎となる心の発達です。例えば、養育者にあやしてもらえることがうれしくて微笑みを返すなど赤ちゃんと養育者がお互いにやりとりを行っているという関係性の基盤ができていることが重要です。
赤ちゃんの喃語が出ない要因には、以下のようなものが考えられます。
しかし、体重や身長、運動能力などと同じように、言葉の育ちのスピードは、赤ちゃん一人ひとり異なります。赤ちゃんの育ちにおいて、「この時期にこれこれができるようになる」という基準は非常に曖昧なものです。
喃語も、おおよそ生後5~6ヶ月に出るという基準はあるものの、赤ちゃんによって生後6ヶ月よりも早く喃語の出る赤ちゃんもいれば、1歳ごろになってから喃語が出る子もいます。
赤ちゃんが喃語を発するまでには、体や心の中でいくつかの準備が行われ、整えられていく過程があります。一つは聴覚や、喉の筋肉、運動機能の発達などの身体的な基礎の発達です。
二つ目は、社会性の基礎となる心の発達です。例えば、養育者にあやしてもらえることがうれしくて微笑みを返すなど赤ちゃんと養育者がお互いにやりとりを行っているという関係性の基盤ができていることが重要です。
赤ちゃんの喃語が出ない要因には、以下のようなものが考えられます。
身体的な基礎が未成熟である
人が声を発するためには、咽頭部という喉の奥のスペースが必要ですが、下顎や喉を包んでいる骨格が未成熟な場合には、その空間が狭いために、2つ以上の音からなる喃語を発することはできません。
またそのほかに、2つ以上の音から喃語を発するためには、はじめに吐き出す空気の量をコントロールしてセーブしつつ、声を出すために必要な声門という部分を閉じたり開いたりする機能が整っている必要があります。
赤ちゃんの骨格がまだ成熟していなかったり、声門の開閉機能が整っていないなど、身体的な基礎が未発達であるために、喃語が出ない可能性があります。
またそのほかに、2つ以上の音から喃語を発するためには、はじめに吐き出す空気の量をコントロールしてセーブしつつ、声を出すために必要な声門という部分を閉じたり開いたりする機能が整っている必要があります。
赤ちゃんの骨格がまだ成熟していなかったり、声門の開閉機能が整っていないなど、身体的な基礎が未発達であるために、喃語が出ない可能性があります。
聴覚に問題がある
言葉の獲得は、音を聞くことから始まります。赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいるときに耳の機能ができあがり、お腹の外の音を聞くことができるようになります。
赤ちゃんが自発的に喃語を発するためには、聴覚の機能が整っている必要があります。周囲の大人の声や、環境音、自分の出した声を耳で聞き取ることにより、喃語は促されていきます。
厳密には、聴覚に障害のある赤ちゃんも「あー」「うー」などのクーイングの音声は出ます。ですが、自分の出した声を聞き取ることができないと、自分が発声しているという感覚が薄まってしまい、次第に喃語を発することが少なくなってきます。
赤ちゃんが自発的に喃語を発するためには、聴覚の機能が整っている必要があります。周囲の大人の声や、環境音、自分の出した声を耳で聞き取ることにより、喃語は促されていきます。
厳密には、聴覚に障害のある赤ちゃんも「あー」「うー」などのクーイングの音声は出ます。ですが、自分の出した声を聞き取ることができないと、自分が発声しているという感覚が薄まってしまい、次第に喃語を発することが少なくなってきます。
他者とやりとりしたいという気持ちがまだ芽生えていない
赤ちゃんが喃語を発声しない原因の一つとして、赤ちゃんと養育者の間にコミュニケーションをとる関係が築けていないということが考えられます。
赤ちゃんは、養育者からお乳をもらったり、泣いているときにはあやしてもらったり、またクーイングの声をあげたら反応をしてくれたりと、お世話をしてもらう中で、養育者に対する信頼感を築いていきます。養育者のやさしげな表情や声、匂いなどの養育者の情報が赤ちゃんの頭の中に記憶され、「いつもの養育者=よい気持ちにさせてくれる大切な人である」と、なんとなく分かるようになります。
赤ちゃんの養育過程では、養育者があやして赤ちゃんが笑顔で応える、そして、その笑顔に養育者がまた応えてあげるというやり取りが繰り返されます。ほかにも、「養育者が視線を合わせる⇒赤ちゃんも視線を返す」といった視線のやり取りもよく行われます。
こうした養育者と双方向的なやり取りの繰り返しは、赤ちゃんにとって非常に心地のよいものです。こうした体験の積み重ねが、相手とコミュニケーションを交わし、再び心地よい気持ちを味わいたいという動機を引き出し、赤ちゃんの喃語を促します。
心地よい気持ちの体験が積み重ねられていないときには、赤ちゃんの中にやりとりを行おうとする気持ちが芽生えないために、喃語が出ないということが考えられます。
赤ちゃんは、養育者からお乳をもらったり、泣いているときにはあやしてもらったり、またクーイングの声をあげたら反応をしてくれたりと、お世話をしてもらう中で、養育者に対する信頼感を築いていきます。養育者のやさしげな表情や声、匂いなどの養育者の情報が赤ちゃんの頭の中に記憶され、「いつもの養育者=よい気持ちにさせてくれる大切な人である」と、なんとなく分かるようになります。
赤ちゃんの養育過程では、養育者があやして赤ちゃんが笑顔で応える、そして、その笑顔に養育者がまた応えてあげるというやり取りが繰り返されます。ほかにも、「養育者が視線を合わせる⇒赤ちゃんも視線を返す」といった視線のやり取りもよく行われます。
こうした養育者と双方向的なやり取りの繰り返しは、赤ちゃんにとって非常に心地のよいものです。こうした体験の積み重ねが、相手とコミュニケーションを交わし、再び心地よい気持ちを味わいたいという動機を引き出し、赤ちゃんの喃語を促します。
心地よい気持ちの体験が積み重ねられていないときには、赤ちゃんの中にやりとりを行おうとする気持ちが芽生えないために、喃語が出ないということが考えられます。
発達に遅れがある
発達障害や知的障害(知的発達症)があると、言葉がなかなか出ない場合があります。
発達障害とは、先天性の脳の機能障害です。自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする発達障害のある赤ちゃんは、コミュニケーションや人との関わりを築くといった社会性が育ちにくいという特性があります。
知的障害(知的発達症)とは、18歳までの発達期に生じる知的発達の遅れにより、社会生活に適応する能力に制限がある状態のことです。
人と人とのコミュニケーションは、喃語を含む言葉によるものだけではありません。例えば、養育者と視線を合わせたり、養育者の働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることもコミュニケーションです。養育者との間で視線を交わしたり、働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることが少ないときには、発達に遅れがあることも考えられます。
乳児期の赤ちゃんの育ちには個人差が大きいため、医師や公認心理師・臨床心理士などの専門家でも発達障害があるかどうか診断することは難しく、診断がおりるのは年齢が上がってきてからとなります。知的障害(知的発達症)があるかどうかも乳児期に診断することは難しいですが、知的障害(知的発達症)の程度が重度である場合、まずは身体的な症状から小児科で発見される場合があります。
喃語が出なかったり、養育者とのやり取りを積極的に行うことのない場合にも、その赤ちゃんに必ずしも障害があるとは限りません。不安なことがあったら、かかりつけの小児科など身近な専門家に相談をしてみましょう。
発達障害とは、先天性の脳の機能障害です。自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする発達障害のある赤ちゃんは、コミュニケーションや人との関わりを築くといった社会性が育ちにくいという特性があります。
知的障害(知的発達症)とは、18歳までの発達期に生じる知的発達の遅れにより、社会生活に適応する能力に制限がある状態のことです。
人と人とのコミュニケーションは、喃語を含む言葉によるものだけではありません。例えば、養育者と視線を合わせたり、養育者の働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることもコミュニケーションです。養育者との間で視線を交わしたり、働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることが少ないときには、発達に遅れがあることも考えられます。
乳児期の赤ちゃんの育ちには個人差が大きいため、医師や公認心理師・臨床心理士などの専門家でも発達障害があるかどうか診断することは難しく、診断がおりるのは年齢が上がってきてからとなります。知的障害(知的発達症)があるかどうかも乳児期に診断することは難しいですが、知的障害(知的発達症)の程度が重度である場合、まずは身体的な症状から小児科で発見される場合があります。
喃語が出なかったり、養育者とのやり取りを積極的に行うことのない場合にも、その赤ちゃんに必ずしも障害があるとは限りません。不安なことがあったら、かかりつけの小児科など身近な専門家に相談をしてみましょう。
発達障害とは?特徴・症状・分類や診断方法について【専門家監修】