「才能探し」に必死になっていませんか?焦る私が子育てで見失っていたもの

ライター:林真紀
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発達障害児は達成感をなかなか得られず、自己肯定感が低くなりがち。そんな子たちにとって、「好きなこと」を持つことはとても大切。それは重々承知なのですが、そんな簡単に「好きなこと」って見つからないものです。

発達障害児を育てているといつも言われる、「子どもの得意を伸ばそう」という言葉

我が家には6歳になる発達障害の息子がいます。

小さい頃からちょろちょろと動き回り、他人の気持ちもお構いなしに自分の好きなことを喋り続け、家族や集団の中にいてもどうしても叱られる回数が多くなります。

そんな彼を育てることに行き詰まるたび、言われること…それは

「発達障害児は、叱られることが多くて、どうしても自己肯定感が低くなりがちです。この子の好きなこと、得意なことを伸ばしてあげましょう」という言葉です。

そして親戚やママ友に、息子が発達障害であることをカミングアウトしたときにも、同じことを言われます。

「発達障害の子って、好きなことにはめちゃくちゃ集中しちゃうんでしょ?」「好きなこと、得意なことを伸ばしてあげればいいんじゃない?」

極め付けは、いつも最後に聞かれるこの質問。「この子の好きなことって何?」

これにはいつも答えが見つからず、私は絶句してしまうのです。

気付けば、息子を天才児にしようと奔走していた私…

「発達障害の子は、好きなことを伸ばせばいいんだよ。で、何が好きなの?」と聞かれるたびに口ごもってしまう私は、いつしか必死に息子の才能探しをするようになってしまいました。

ちょっと何かに夢中になっている姿を見れば、「もしかしたらこの子は、これに才能があるかもしれない!」と思って、習い事や道具を探してしまう毎日。

そして周囲の目を気にするあまり、私は次第に息子を天才児に仕立て上げることを望む自分がいることに、気付いたのです。さらに、私を追いつめたのは、「好きなことを極めさせ、それを仕事にさせればいいんじゃない?」という周囲の言葉でした。

発達障害児を育てていると、必ず頭をもたげてくるのは「この子は果たして自立することができるのだろうか」という遠い将来のこと。

私は毎日考えるのです。

自分の思いついたことを一方的に話し、相手の質問にまともに答えなかったり、そうかと思えば、相手の気持ちも考えず、思っていることをズバズバと言ってしまったり…。

こんなにズレた会話ばかりしている息子は、将来まともに働いて食べていけるのだろうか、こんなすぐに大切なことを忘れてしまう息子は、自活ができるのだろうか…。

毎日こんな風に将来のことで頭を悩ませていると、つい「好きなことを仕事にさせれば…」という言葉にすがってしまう自分がいました。

そして訪れた、「好きなもの探し」への憤りとむなしさ

息子に発達障害という診断が下ってから、「この子の好きなことは?」と探し続けた数年間、私には焦りしかありませんでした。けれども、息子の苦手を支援することに追われるばかりの毎日。

息子の「好きなこと」「才能」なんて、私にはちっとも見えてきませんでした。

次第に、「好きなことを仕事にすれば?」と言われるたびに、「なんで発達障害児ばかり、小さい頃から好きなこと探しをしなければならないんだ」「息子の仕事のことまで、他人に心配されるいわれはない」という風に、イライラするようになってしまったのでした。

息子は「好きなこと探し」につき合わされ、新しい本、新しいイベントを次々に私から突き付けられていました。

しかし、「新しいこと」が苦手な息子は、そのたびに疲労で座り込んでしまいました。疲れ果てた息子をおんぶして帰宅するたびに、「私は一体何がしたいのだろう…」と思うのでした。
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