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[第3回]

無理に熱中しなくていい。 決断は先延ばし、世界を広げることから始めよう。

ソニーコンピュータサイエンス研究所の研究員として、そして株式会社Xiborg(サイボーグ)の代表として、義足の研究開発をされている遠藤謙さんにお話を伺います。連載の最終回では、遠藤さんが「好きなこと」「出来ること」とどう向き合ってきたのかをお話ししてくださいました。

「何でも出来るけど、何にも興味が無い」そんな中高生時代

編集部:前回、何かに熱中していても「1番じゃなきゃダメ、これじゃなきゃダメ」という気負いはあまりない、とお話を伺いました。現在従事されている義足の開発に関しても同じなのでしょうか。
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遠藤:うーん、そうですね。義足に関しては、友人とのエピソードが大きいですし、あの足を作りたいと思って今も研究開発していますが、だからといって「できなかったらどうしよう」ということは思っていなくて。

「ただロボットを作る」ということでも僕はきっと楽しめると思うから「(義足が)できなかったらどうしよう」というのはあまり考えていないです。

編集部:なるほど。

遠藤:なんというか、失敗経験があまりないからかもしれません。もっと丁寧にいうと、人生の中で負け戦をしてきていないんです。学力もスポーツも特別困ってこなかった、ある程度要領よく進んできた方だと思います。

編集部:中高生の中で、「僕はなんでもそこそこできるから、何も興味がないんだよね。」という子ども達にも出会うのですが。

遠藤:ああ、僕も中高生の時はそんな感じだったと思います。

成功体験って楽しいじゃないですか。成功すると嬉しいし、楽しい。
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遠藤:だから、周囲の人から「君はこれが得意だよね」と言われることや、「特別面白くないけど人より出来ること」を伸ばしたり磨いたりするのもいいですけど、やっぱり「自分が楽しいと思えること」を選んだほうがいいと思います。

出来る出来ない、得意不得意という軸ではなく、「自分が楽しいかどうか」を軸に考える。

もちろん楽しいと思えるものは段々変化していくと思いますけど、"今は"それをやる、という事です。そして楽しいと思える取り組みは、長続きすると思います。

最初から志が高くなくていい。「ちょっとGoogleしてみる」ぐらいから始めてみる

編集部:出来るかできないかではなくて、「自分が楽しいと思うかどうか」なんですね。

遠藤:そうですね。ただ、楽しいことを見つける機会が学校の中には少ないのだろうと思ってます。

編集部:そんなときはどうすればいいのでしょう?

遠藤:それこそ「LITALICOワンダー」(LITALICOのIT×ものづくり教室)みたいな。今流行りですよね。プログラミングとか。

義務教育のお陰でこんなに識字率が高いですし、学校教育はそれはそれでいいと思いますが、学校の授業で自分を伸ばせる機会がないなら、部活でもいいし、部活がないときは習い事でもなんでもいいので、次から次へと色々な経験を試せる機会があるといいと僕は思います。

編集部:いろいろ試せる機会がある。いいですね。

遠藤:ロボットを作るとか、ものをつくるのは楽しいですよ。

学歴社会の中で苦労したことがないって言いましたけど、それは僕が沼津(静岡県の沼津市)という田舎にいたからだと思います。受験戦争なんて無くて、大学も推薦でしたし。田舎だったからのびのびとしていられたのかもしれませんね。

編集部:「これが面白い、もっと知りたい」と思ったときに、まっすぐになれないこともあると思うんです。「本当にこれがやりたいのだろうか」って。

遠藤:わかります。特に進路を決めるときなんて、そうかもしれませんね。でも、とりあえず期間を設けてやってみたらいい。一定期間どっぷりやってみて、つまらなかったらそれ以降やらなくていい、そう考えています。

編集部:ああ、そう思うと、取り組むハードルが低く感じられますね。

遠藤:うん、意外とやってみると楽しいこともありますし。

やってみる前からやめてしまうのは勿体無いですよね。とりあえずGoogleで調べる、楽しそうだったらもうちょっと調べる。その「ちょっと調べる」を終えるまで、続けるかどうか判断するのを先延ばしにしてみるといいと思います。

親御さんも、お子さん自身も急いで決めなくても良いのではないでしょうか。

出来るからやるのか、楽しいからやるのか。人それぞれの判断基準がある

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編集部:「出来る!」にも、もともと得意な事と、努力して上手に出来る事とあると思います。出来る!を伸ばそうと思った時に、「磨きをかける」方法やモチベーションの置き方にアドバイスなどいただけますか?

遠藤:うーん、出来る事で得意であっても、やりたくないなら、やらなくていいのでは(笑)。

周囲が「伸びるよ、もっと伸ばしてみよう」と言ってくれる事もあると思いますけど、自分が楽しいかどうかで選べばいいと思っています。そうすれば自然と困難なことも超えていけますから。

編集部:なるほど。

遠藤:例えば、毎回為末(元陸上競技選手の為末大さん)を例に出しちゃうんですけど(笑)、

為末は「世界で勝つ」ということが一番の目的だったからこそ、種目を400メートルハードルに転身する決断が出来たんだと思います。

僕の場合は「義足をやりたい」ということなんです。それが、やりたい。
「足がないという人にテクノロジーで何かを生み出す」という基準で、義足以外に最適な方法があったら変えるかもしれないけれど、僕は義足が好きだから、今はやりたい。

為末も僕も、共通しているのは、自分の中での優先順位があって、それに沿ってやることをやっている、という事です。

結局、「自己満足できるか?」ということかもしれませんね、いくら人のためとはいっても。

編集部:すごくわかりやすい例えでした。「一番になりたい」という目的と「順位とかではなく、これそのものがやりたい」という目的のどっちが良いという事ではなく、その決断や選択に「自分が納得しているかどうか」という事なんですね。

遠藤:そうですね。それでも興味関心にひっかかるものを見つけられない、というのは触れている情報量がまだまだ少ないからだと思うんです。

編集部:情報量が少ない、ですか。

遠藤:はい、Googleで検索しても日本語の情報量では限りがあるとは思いますけど、それでも「情報を増やす」という事をしている子ども達や若い人は少ないのかな、と。

「得意なことを深めろ」とはよく言われるけど、フィールドを広げることも、大事だと思いますね。

それはGoogle検索でも充分ですし、学校以外で何か経験出来る機会をつくるのも良いと思います。

無理に夢中にならなくてもいいけれど、気になることは「ちょっと調べてみる」、そこまでやると興味関心は広がっていくのではないでしょうか。
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