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[第1回]

教員採用試験で初めてのカミングアウト。自分の考えが間違ってたことに気づいた

現在大学院生の岩元さんは会話を始めようとするとき、冒頭の言葉が詰まり、スムーズに音が出てこない「吃音」という言語障害がある。 「いやぁ〜さすがにもう訛ってないですよ!(笑)」そう言うが、会話の端々には地元鹿児島の風がしっかりと残っている。そんな大らかさと、明るく柔軟な雰囲気とは裏腹に、瞳の奥にはしっかりと強い意思を感じる。彼の人生を1つひとつ聞いていきたい。

人と話すしかないような環境を選んでは「よし、これも訓練だ」と思って(笑)

ー岩元さんが吃音になったのはいつ頃ですか?

岩元:3歳のとき目の前でお母さんが倒れたのがショックで、一時的に言葉を失くしました。その後言葉は戻ってきましたが、以前のように流暢には話せなくなりました。

冒頭の言葉を「ぼ、ぼ、ぼくは」と繰り返したり、最初の文字を「あーーーー」と引き延ばしたりして、やっと次の言葉が出てくる感じですね。中学生くらいから自己流の発話訓練をやりながら、模索しています。

ー自己流の訓練というのは…

岩元:自分の場合は、声帯が勝手にぎゅっと閉じて声が出なくなる感覚なんですよ。
緊張するとクッと力が入るので、声帯をこじ開けて声を出すためにとにかくゆっくり話すという訓練をしてきました。

咄嗟に話し言葉が出てくるかどうかも、経験値によってだいぶ変わってくるんですよ。

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ーそうなんですね。

岩元:だから大学に入ってからは、アルバイトや大学イベントの実行委員などをかなり積極的にやってきました。人と話さざるをえないような環境を選んでは「よし、これも訓練だ」と思って。(笑)

ーすごい、アグレッシブ。

岩元:そうでしょ?(笑)緊張していなければ今のように流暢に話せますけど、それでも、うーん、まだ全然駄目ですね!

就活の面接や大学のプレゼンでも、自分の番になると緊張して心拍数が上がり結局全然話せなかったりしますからね。

自ら「障害を理解してもらえる環境を作ろう!」とは動かなかった。それがダメだったなと思う

ー吃音について、今ではオープンにしていると。

岩元:そう、「吃音なんだ」と知ったのは中学生の頃ですけど、周りの人に「自分は言語障害がある」と自ら伝えるようになったのは本当に最近のことですね。

ー何かきっかけがあったんですか?

岩元:教員採用試験です。

選考の1つに集団討論というのがあるのですが、スムーズに話せないこの障害は確実に同じチームの人の邪魔になってしまうんですよ。時間制限がある議論なので…。

岩元:大学で模擬試験をしているときは「障害者という目で見られることが恥ずかしい」と思っていて、同級生には言えずにいました。

ーなるほど。

岩元:ただ、結構チームに迷惑かけちゃってたんですよね。誰もが努力して臨んでいる試験だから、話せないのがただの練習不足だと思ったら同じチームの人も当然イライラしますよね。

スムーズに喋れたら1番ですけど…自分にできる誠実な対応って何かなと考えて、本番では第一声で「自分には言語障害があります」と言うことにしました。

ただね、これが伝えてみて本当に良かったんですよ!

ーそうだったんですか?

岩元:言葉が出てこないときに「おいおい、ちゃんとしろよ」という視線を感じることもなくて、周囲を気にして余計に焦ることもなく落ち着いて自分らしくできました。

これまで吃音をバカにされたり笑われたり苦しい経験を沢山しましたけど、それは周りのせいじゃないと思いましたね。

「自分から、わかってもらえる環境を作ろうと動かなかったのが、ダメだったんだ」と気づいて、結構反省してます。

周りだって、どうしたら良いか知らないんですよ。だから、自分で伝えてくことが大事

ー自分から環境を作る、ですか。

岩元:そう。ある時、吃音の高校生から相談されたんです。彼は「あ、あ、あ…」という感じで普段は筆談やLINEでやりとりをしてます。文化祭のシーズンで同級生と準備をしなきゃいけないけど「自分は障害があるから話せない。もう何もできない」って言うんですね。

気持ちは痛いほどわかる。でも「自分から環境をつくったほうがいいよ」と話しました。

上手く話せないから筆談をしていることも、スムーズに喋れないことも、悪いことじゃない。ちゃんと自分から伝えて理解してもらったほうがいいと。

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ーそう強く感じるのはなぜですか?

岩元みんなだって、どうしたら良いか知らないだけなんですよ。

障害について勉強をして理解しているわけではないですから、察してもらうことを求めては「理解がない!」って憤る前に、まずは自分から伝えてくことが大事なんだと思います。

女性とお付き合いする前にも必ず「自分には言語障害があるよ」って伝えていますし。

ー必ず、ですか。

岩元吃音は自分の全てではない。けど確実に自分の一部だから。それこそ昔は「自分に障害がなければ、もっと積極的にアプローチできた、モテただろうな」なんて思っていたんですけど。(笑)

結局、仕事でも恋愛でも同じで、障害のことを隠しても結局どこかでバレたり、言わなきゃどうしようもない瞬間はくるんですよね。

だったら最初からオープンにするほうが絶対良いと思った。自分が就職して会社に入ったときの第一声は「自分には言語障害があります」だと決めてますね!ちょっと気が早いけど!(笑)

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