下級生に飛び降りを強要した少女、親の責任はどこまで問える?特性理解と早期支援が大切な理由
ライター:立石美津子
2013年に起きた、当時小学4年生の女の子が小学2年生の女の子に飛び降りを強制した事件。判決では、子どもの特性に気づかず十分な対応を取らなかったと、両親の監督責任が問われ1,025万円の賠償責任が命じられましたが、私たちはこの事件をどう考えれば良いのでしょう。
9階から飛び降りを強制した小学校の4年生の女の子、裁判で両親の監督責任はどう問われた?
こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。
2013年、江東区のマンションで起きた事件です。
当時4年生だった女の子が、校門前で縄跳びを振り回していた当時2年生の女の子を注意。さらに説教しようと9階建ての自宅マンションの屋上に連れて行き「飛び降りないと殺すぞ。ここから落ちて死んでしまえ」と言いました。
それに従った2年生の女の子は飛び降り、木や水槽にぶつかりながら約26メートル下に転落、足や胸の骨を折るなどの全治11週間の重傷を負いました。
被害者の両親は4年生の女の子の両親に3千万円の損害賠償を求め、裁判長は両親に監督義務があったと認め、約1,025万円の支払いを命じました。
加害者の4年生の女の子は重度の難聴があり、両親は専門のクリニックに通って育て方の指導を受けていました。小野瀬厚裁判長は、このことについては「子育てに相当の努力を払った」と認めています。
しかし、女児が事件後にアスペルガー症候群との診断を受けたことを挙げ、「他者が思い通りに動かないと怒りを持つ女児の傾向に気づいておらず、対応は不十分だった」として賠償責任を負うと判断しました。
2013年、江東区のマンションで起きた事件です。
当時4年生だった女の子が、校門前で縄跳びを振り回していた当時2年生の女の子を注意。さらに説教しようと9階建ての自宅マンションの屋上に連れて行き「飛び降りないと殺すぞ。ここから落ちて死んでしまえ」と言いました。
それに従った2年生の女の子は飛び降り、木や水槽にぶつかりながら約26メートル下に転落、足や胸の骨を折るなどの全治11週間の重傷を負いました。
被害者の両親は4年生の女の子の両親に3千万円の損害賠償を求め、裁判長は両親に監督義務があったと認め、約1,025万円の支払いを命じました。
加害者の4年生の女の子は重度の難聴があり、両親は専門のクリニックに通って育て方の指導を受けていました。小野瀬厚裁判長は、このことについては「子育てに相当の努力を払った」と認めています。
しかし、女児が事件後にアスペルガー症候群との診断を受けたことを挙げ、「他者が思い通りに動かないと怒りを持つ女児の傾向に気づいておらず、対応は不十分だった」として賠償責任を負うと判断しました。
「育てにくい子の孤独な子育て」と事件によって追い込まれる親たち
こういう情報が流れると、正しい理解をしていない世間の人から、まるでアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムに代表される発達障害児を持つ親は「将来、そんな事件を起こす可能性がある子」という誤った偏見の目で見られてしまうことがあります。
この事件では、当時の報道記事などで明確に発達障害の診断名が書かれていましたが、今は「社会性の問題がありコミュニケーションが苦手と分かった」といった報道のされかたに変わってきています。
かつて、新聞やテレビのニュース報道で加害者の精神鑑定の結果を明確に出したことにより様々な誤解を生んだため、現在では報道機関が自主規制を行っているようです。
けれども、一度こうした衝撃的な事件が精神障害や発達障害の診断名と共に報道されてしまうと、診断名に対するネガティブなイメージが付着しやすく、誤解や偏見を払拭することは容易ではありません。
そのため、発達障害のある子どもの保護者は、ただでさえ育てにくい子の子育てで孤独に悩んでいるのに、さらに追い打ちをかけられ苦しむことになります。
この事件では、当時の報道記事などで明確に発達障害の診断名が書かれていましたが、今は「社会性の問題がありコミュニケーションが苦手と分かった」といった報道のされかたに変わってきています。
かつて、新聞やテレビのニュース報道で加害者の精神鑑定の結果を明確に出したことにより様々な誤解を生んだため、現在では報道機関が自主規制を行っているようです。
けれども、一度こうした衝撃的な事件が精神障害や発達障害の診断名と共に報道されてしまうと、診断名に対するネガティブなイメージが付着しやすく、誤解や偏見を払拭することは容易ではありません。
そのため、発達障害のある子どもの保護者は、ただでさえ育てにくい子の子育てで孤独に悩んでいるのに、さらに追い打ちをかけられ苦しむことになります。
ルールを忠実に守る子どもたちと、それだけでは通用しない社会の難しさ
アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子どもたちは、他人の気持ちへの想像力や社会性に困難があると言われることが多いですが、一方で、決められたルールを真面目に忠実に守るという、場合によっては長所にもなり得る特性も持っています。
ですが、ルールを忠実に守ることにこだわるあまり、自分だけでなく他者にもルールを守ることを強く求めてしまったり、その場に応じた臨機応変な対応が出来ないために、対人トラブルにつながることも少なくないのです。
例えば、見知らぬ人であっても横断歩道を赤で渡っている人に「信号無視をしてはならない!」と注意してしまったり、携帯電話を電車内でしている人を許すことができず、声を荒げて怒ってしまうことがあります。これはルール上正しいことです。だから本人にとっては正論なのです。
でも、見知らぬ相手から叱られた人はたいてい嫌な思いをします。
また、学校生活の中でも正論ばかり振りかざしていると“付き合いの悪いヤツ”と言われ友達作ることもできずトラブルメーカーになることもあります。
白と黒だけでない曖昧なグレーな判断が世の中には存在すること、ルールは場合によっては柔軟に変更されたり、例外措置が取られることもあること。これが自閉症スペクトラムの子どもたちにとっては理解が難しいことなのです。
ですが、ルールを忠実に守ることにこだわるあまり、自分だけでなく他者にもルールを守ることを強く求めてしまったり、その場に応じた臨機応変な対応が出来ないために、対人トラブルにつながることも少なくないのです。
例えば、見知らぬ人であっても横断歩道を赤で渡っている人に「信号無視をしてはならない!」と注意してしまったり、携帯電話を電車内でしている人を許すことができず、声を荒げて怒ってしまうことがあります。これはルール上正しいことです。だから本人にとっては正論なのです。
でも、見知らぬ相手から叱られた人はたいてい嫌な思いをします。
また、学校生活の中でも正論ばかり振りかざしていると“付き合いの悪いヤツ”と言われ友達作ることもできずトラブルメーカーになることもあります。
白と黒だけでない曖昧なグレーな判断が世の中には存在すること、ルールは場合によっては柔軟に変更されたり、例外措置が取られることもあること。これが自閉症スペクトラムの子どもたちにとっては理解が難しいことなのです。