失語症とは?原因や症状、リハビリの方法や周りの人とのコミュニケーションまとめ

ライター:発達障害のキホン
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失語症とは言語障害の一つで、脳の言語中枢が何らかの損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態を言います。その名称から誤解されがちですが、失語症になると話すことだけでなく、聞く・読むといった言葉に関するすべての機能に困難が生じます。失語症の原因や症状、診断、検査やリハビリの方法、周りの人の接し方についてまとめました。

目次

失語症とは

失語症とは言語障害の一つで、脳の言語中枢が何らかの損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態を言います。

具体的には、言いたい言葉が浮かんでこない、思ったことと違う言葉を口にしてしまうことなどが症状としてあげられます。

失語症になると言葉が浮かばなくなるのはなぜ?

私たちが言葉を覚えるとき、言葉そのものを覚えることに加えて、その言葉が指し示している「もの」はどのようなものかを同時に学んでいます。

そして脳の中には「クルマ」「リンゴ」といった言葉そのものを貯蔵する「言葉の貯蔵庫」と、「クルマ」「リンゴ」がどのようなものを意味しているのかを貯蔵する「意味の貯蔵庫」の2つがあります。この貯蔵庫には無数の引き出しがあり、またそれぞれの引き出しが相互につながっています。

私たちが「話す」とき、膨大な言葉の引き出しと意味の引き出しが適切に対応しているため、表現したいこととぴったりの言葉を選ぶことができているのです。

しかし失語症になると、この言葉の引き出しと意味の引き出しのつながりが混乱してしまいます。言葉の貯蔵庫も意味の貯蔵庫も頭の中には残っているのですが、一つひとつの意味の引き出しに対応している言葉の引き出しをすばやく探すことが困難になります。

そのため言いたい言葉が浮かばず何も言えなくなったり、「テレビ」と言いたいのに「メガネ」と言ってしまったりするのです。

失語症になると「話せなくなる」の?

「失語症」という名称から、言葉を発することや話すことに困難が生じている状態だととらえられがちです。しかし失語症になると話すことだけでなく、聞く・読む・書く・話す・計算するといった言葉に関わるすべての作業が難しくなります。

失語症はよく、「言葉の分からない国に放り出された状態」にたとえられます。私たちが外国に行ったとき、現地の人とは言葉が通じず、相手が何か言っていることは聞こえますがその内容を理解することはできません。看板などに何か書いてあることは分かりますが、音読したり意味をつかむのは難しいです。相手に伝えたいことや自分の考えはあるのですが、それをすらすらと伝えることも困難です。

このように、失語症になっても聴力や視力、記憶力や判断力などには問題がないのですが、言葉に関わる働きのすべてがうまくいかなくなってしまいます。

失語症と構音障害・失声症・LD・SLD(限局性学習症)の違いは?

失語症と症状が似ているため混同されやすい障害・疾病に構音障害、失声症、LD・SLD(限局性学習症)があります。それぞれ失語症とは何が違うのかを見ていきましょう。

学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

運動障害性構音障害(構音障害)との違いは?

失語症と同じ言語障害である構音障害は、「言葉が出にくい」という点で失語症とよく似ています。しかし失語症と構音障害では、ダメージを受けている脳の部分が異なります。

私たちは話す内容は言語中枢で考えますが、話すという行為のときには、呼吸筋や口を動かす運動中枢を使います。

構音障害は、運動中枢がダメージを受け、言葉を話すのに必要な唇、舌、声帯など発声・発語器官の麻痺などによって発声や発音がうまくできなくなる状態をいいます。失語症は言語中枢がダメージを受けている状態のため、麻痺がなく口を動かすことができても、言語中枢からの指令が不十分なため言葉が出なくなったり、正しくない単語が口から出たりします。

失声症との違いは?

失声症とは、主としてストレスや心的外傷などによる心因性の原因から、声を発することができなくなった状態を言います。

「発声器官に問題はないのに、話すことができなくなった」という点は失語症と共通していますが、失語症の原因は脳の損傷であり、心理的なショックや精神的なストレスなどが原因ではない点で異なります。

LD・SLD(限局性学習症)との違いは?

失語症と同様に、読む・書く・話す・計算するといった能力に困難が生じるもののひとつに、LD・SLD(限局性学習症)があります。LD・SLD(限局性学習症)とは、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することが苦手(ディスレクシア)、書くことが苦手(ディスグラフィア)、数の理解や計算をすることが苦手(ディスカリキュリア)など大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であることが基準になります。
学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。"

LD・SLD(限局性学習症)の原因ははっきりとは解明されていません。しかしLD・SLD(限局性学習症)は先天的な脳の機能障害であるのに対して、失語症は、脳の言語中枢が何らかのきっかけで損傷を受けた結果生じる後遺症であり、症状もその損傷を受けた後に現れる後天的なものである点が、LD・SLD(限局性学習症)とは異なります。

失語症の原因は?

失語症の原因は、脳の言語中枢が傷つくことです。この損傷の原因の9割以上が脳出血、くも膜下出血、脳梗塞といった脳卒中です。脳卒中の患者は中高年が多いため、失語症も中高年に多くあらわれます。

そのほかは交通事故や転落による頭部外傷、脳腫瘍、脳炎などになっています。
出典:加藤正弘・小澤知幸監修『失語症のすべてがわかる本』(講談社,2006)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062594072
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