家庭内暴力を行う子どもの心理

思春期の子どもが家庭内暴力をふるう理由のひとつとして、感情の抑制が効かなくなってしまうことが考えられます。イライラや不安、悲しみ、憎しみなどといったネガティブな感情が湧き出てきて、それを抑えることができなくなったとき、感情の鬱積(うっせき)が暴力となって現れるのです。

家庭内暴力をふるう子どもの心理としては、自分のことを「ダメだ」と感じてしまい、そのやりきれなさを暴れることによって発散しようという気持ちと、そのような自分をつくった親に対する反抗という、二つの側面があります。

ほとんどの場合、外でおとなしくて家族にだけ暴力をふるう子どもは、「暴力が悪いことだ」とは自分でも理解しています。なので、「本当は暴力をふるいたくない。でもやってしまう」という罪悪感に苦しんでしまうことも珍しくありません。暴力行為をどんなに繰り返してもモヤモヤした感じが残ってスッキリしないのは、罪悪感から自己嫌悪に陥ってしまうからなのです。

暴力をふるうことで自らも傷つき、暴力をふるう自分が許しがたく、しかしそのような「許せない自分」を育てたのはやはり両親なのだ、という自責と他責の悪循環に苦しんでいる場合があるのです。
参考:「研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用」 福島県教育センター
http://is2.sss.fukushima-u.ac.jp/fks-db/txt/60000.kiyou/kiyou_042/pdf/00022.pdf

子どもが家庭内暴力を行なった際の対処方法

家庭内暴力はさまざまな偶然などにより、どんな家族にも起こりえます。だからこそ、暴力が起こってしまったときや、起こりそうになったときの対応策が重要となります。

ここでは、専門家に伺った家庭内暴力の対処法を5つ紹介します。家庭内暴力の原因や対応はさまざまです。これを参考に一人で取り組むのではなく、信頼できる相談機関や専門家と一緒に対応を考えていってください。

Q:過干渉が家庭内暴力につながることがあると聞いたのですが、どのように距離感を計ったらいいでしょうか?

A:思春期の子育ての中で、保護者自身がしてほしいことと子どもの思いがずれてしまうことはよくあることです。このようなズレに対して、子どもの立場になってコミュニケーションをしていくことが理解にとって重要です。双方が話し合ってルールを決め、子ども自身に自己決定をゆだねる場面も取り入れていくとよいと思います。

Q:家庭内暴力が起こったときの対応を教えてください。

A:家庭内暴力が起こる前の対策を考え予防することを優先しますが、起こってしまったときは、子どもを加害者に、保護者を被害者にしないために、以下のような基本的な対応が必要です。
身体的な暴力の場合は、抵抗するよりも、助けを呼ぶ、家の外に逃げるなどによって距離をとることが大切です。暴言の場合は、言い返したり訂正させると逆にヒートアップしてしまう可能性があります。「子ども自身が苦しんでいる叫びのようなものだ」と考えることで、やりすごせる場合もありますが、暴言や子どもの行動について相談できる方にお話することで、保護者自身の感情や悩みについてサポートを受けることが大切です。

Q:家庭内暴力を起こした後の子どもへの接し方を教えてください。

A:家庭内暴力を起こしてしまった直後は、子どもも保護者も興奮状態にあると思います。双方が落ち着くまで少し時間をあけて、落ち着いて話ができそうな場合、話をしていくようにしましょう。反省や謝罪、原因追及を中心に進めていくのではなく、暴力は悪いことであるという共通認識を前提に、暴力の代わりにどうすればよかったかについて具体的に話し合えるとよいと思います。

Q:家庭内暴力を起こさないための対策を教えてください。

A:子どもの家庭内暴力がどのような時間帯、場所、活動をしているときにどのようなきっかけで生じているのかをまず振り返ってみてください。保護者の行動がきっかけになっている場合、伝え方を変えたり環境を変えることによって、予防していくことができます。

Q:子どもが悩みを話してくれません。どのように対話したらよいでしょうか?

A:子どもが保護者に相談したり、悩みを打ち明けてくれるようになるための前提として、子どもとのコミュニケーション関係の立て直しが必要です。子どもの興味関心がある活動や対象についての話からはじめていきましょう。子どもの興味関心を保護者が理解し共有することでコミュニケーションのハードルを下げていくことができます。また、子どもの望ましい行動、例えば保護者が取れないところのものを取ってくれた、茶碗を片づけてくれたなどに対して、「ありがとう」と伝えたり、「助かったわ」など親の肯定的な対応を増やしていくことで、関係性が培われていくと思います。
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授 井上雅彦先生
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授 井上雅彦先生
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家庭内暴力に悩んだ時の相談先は?

家庭内暴力は、複雑かつ対応を誤るとエスカレートしやすい傾向にあるため、家庭内で抱えこんで暴力の現場を密室化させてしまうのではなく、外に助けを求めることも重要です。家庭内暴力にお困りの場合、以下のような機関・施設が相談先となります。

児童相談所

18歳未満の子どもに関して、「養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などさまざまな相談ができる機関となっています。

全国精神保健福祉センター

各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。
全国の精神保健福祉センター
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html

精神科・心療内科

心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。

警察

エスカレートする暴力行為を前に、身の危険を感じた場合は警察に相談することをおすすめします。警察に通報することで子どもの復讐心を煽ってしまわないかという不安もあるかもしれませんが、自分の身を守るためには毅然とした態度で通報する勇気も必要です。
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