【専門家監修】子どもの家庭内暴力、親はどう対応すべき?他害の原因・発達障害との関連・具体的対処法

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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家庭内暴力とは、子どもが親に対して暴力をふるうことを指し、その最大の特徴として暴力が家庭内においてのみ行われることが挙げられます。家庭内で起こる暴力にはほかに児童虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)もあります。

家庭内暴力の原因は子どもをとりまく環境や精神疾患の影響など、さまざまなことが考えられ、大人しかった子どもがある日突然家庭内暴力を始めて困惑する保護者も少なくありません。本記事では家庭内暴力の根本的な原因や対処法、相談先を紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

家庭内暴力とは?児童虐待、DVとの違い

この記事で分かること

  • 「ただの反抗期?それとも家庭内暴力?」児童虐待・DVとの違いと定義
  • 自分を責める前に知ってほしい、暴力の複合的な原因
  • ADHD(注意欠如多動症)や二次障害との関連性【臨床心理学の専門家が解説】
  • 「なぜ急にキレるの?」暴力を振るう子どもの心理と、隠された罪悪感
  • 【保護者の方へ】今日から実践できる「暴れる前・最中・後」の具体的対処法ステップ
  • 「警察を呼んでもいい?」身の危険を感じた時の緊急対応と、頼れる公的相談窓口リスト

家庭内暴力の定義

家庭内暴力は、家庭内で起きる暴力のことで、一般的に子どもが保護者に対して暴力をふるうことを指します。また、同様に家庭内で起きる暴力であっても、保護者が子どもに暴力をふるう場合を“児童虐待”、配偶者やパートナー間での暴力を“DV”(ドメスティックバイオレンス)と呼ぶという違いがあります。この記事ではこうした用法にならって、子どもが保護者に対して暴力をふるう「家庭内暴力」について解説します。

警察庁では家庭内暴力について以下のように定義しています。
家庭内暴力……少年が、同居している家族等に対して継続的に暴力を振るう事案をいい、家庭内暴力を止めようとした第三者に対して暴力を振るう事案や他人の所有物を損壊する事案については含まない。

引用:令和5年中における少年の補導及び保護の概況|警察庁
出典:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/pdf-r5-syonengaikyo.pdf
ここでの少年とは20歳未満の者を指しています。また、男女の区別はありません。
つまり、家庭内暴力とは20歳未満の子どもが家族に対して行う暴力行為を意味します。ここでいう暴力には、身体的な暴力や、暴言、家具や家財の破壊なども含まれます。

家庭内暴力の特徴

家庭内暴力の特徴としては

・暴力が家庭内でのみ行われる
・暴力の対象が人である場合、暴力をふるう本人より弱い者が対象となりやすい

ことが挙げられます。事実、暴力の対象のうち約6割が母親であることが警視庁によって報告されています。
参考:令和5年中における少年の補導及び保護の概況|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/pdf-r5-syonengaikyo.pdf

警視庁による認知件数

家庭内暴力は、1960年代から顕著に現れるようになりました。警察庁生活安全局少年課による報告書「少年の補導及び保護の概況」によれば、令和3年度時点で、家庭内暴力の認知件数は4,140件にのぼります。

また、この数字は平成26年の2,091件と比べて約2倍となっており、近年も増加傾向が続いています。実際に家庭内暴力をおこなうのは中学生がもっとも多く、次に高校生、小学生の順となっています。

同報告書によると、家庭内暴力の動機は「不明」を除くと、
1番多いのが「しつけ等親の態度に反発して」(2,718件、全体の65%)、
2番目が「物品の購入要求が受け入れられず」(517件、全体の12%)、
3番目が「理由もなく」(309件、全体の7%)となっており、
以降「勉強をうるさく言われて」「非行をとがめられて」といった動機が続いています。

非行をとがめられた際に反発して起こる家庭内暴力は意外と少なく、保護者の態度への反発から生まれる家庭内暴力が圧倒的に多い結果となっています。
出典:令和5年中における少年の補導及び保護の概況|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/pdf-r5-syonengaikyo.pdf

家庭内暴力の原因

家庭内暴力は、さまざまな要素が複雑に絡み合って起きるため原因の特定は困難であるといえます。

保護者の育て方が悪かったという見方をされがちですが、それだけとは言い切れないこともあります。なぜなら、家庭内暴力の原因には子どもを取り巻く社会的環境、いじめなどの経験、精神疾患の影響などといった、保護者にはどうしようもないさまざまな要素が複雑に関連している可能性があるからです。

保護者への反発が暴力を誘発しているケースが存在するのは事実ですが、だからといって保護者がそもそもの原因であるとする考え方は解決を図る上で有効ではありません。本章では、以上に挙げた子どもを取り巻く環境・いじめなどの経験、精神疾患の影響といった家庭内暴力の原因となりうる3つの要素を解説します。

子どもをとりまく社会的環境

・家族間のコミュニケーションの希薄化・家族の過干渉
・メディアの発達による過剰刺激・暴力シーンへの慣れ
・学校生活や友人関係などのストレス
などが指摘されています。

家族間での会話や食事の機会が少ないといったコミュニケーションの希薄化があげられていますが、同時にしつけや勉強への言及などの過干渉も影響していると考えられます。

いじめ、事故などの経験

・保護者に虐待された
・学校でいじめられた
・受験に失敗した
・事故や病気を経験した

というような経験を通して得た保護者への反抗・復讐心、恐怖心、挫折感などの感情が家庭内暴力へとつながってしまうことが指摘されています。
参考:家庭内暴力|北海道警察
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/seian/syounen/supportseminar/home_dv.html
参考:思春期における暴力行為の原因究明と対策に関する研究|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/5384

精神疾患や発達障害の二次障害

家庭内暴力は統合失調症、強迫性障害(強迫症)などの精神疾患やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害が背景にあることも少なくありません。次章ではそれらの中でも主な例を紹介します。

家庭内暴力と二次障害ーー精神疾患や発達障害との関連は?

素行障害(行為障害)の一種である「家庭限局性行為障害」

素行障害(行為障害)には、社会で決められたルールを守らず反抗的な行動を起こし続けてしまうという特徴があります。具体的な症状には人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期・複数回の家出などが挙げられます。

詳しくは以下の関連記事をご参照ください。
素行障害(素行症)とは?症状や原因、発達障害との関連は?【専門家監修】のタイトル画像

素行障害(素行症)とは?症状や原因、発達障害との関連は?【専門家監修】

国際連盟の専門機関の一つであるWHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類である『ICD-10』(※)により定められた行為障害の中でも「家庭限局性行為障害」は家庭内など限られた中での暴力などがあることが診断の根拠になっています。家庭限局性行為障害とは家族が精神的に追い込まれ疲弊してしまうほどの激しい家庭内暴力をおこしてしまう疾患です。この暴力的な行動は家庭内だけでみられ、学校生活や友人間では問題なくうまくやっていくことができることも特徴です。

家庭限局性行為障害がある場合、精神科医への相談をおすすめします。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

ADHD(注意欠如多動症)の二次障害として現れる「反抗挑戦性障害(反抗挑発症)」

家庭内暴力は発達障害の二次障害として発症する場合もあります。

発達障害が背景にあり、失敗経験を重ねて子どもが自信を失ったり落ち込んでしまったりした結果現れる二次的な情緒・行動の問題を二次障害といいます。二次障害は周囲への反抗や家庭内暴力、非行など問題行動が外に出るタイプと、うつや対人恐怖、引きこもりなど内面に向かうタイプがあります。

二次障害の中でも、反抗挑戦性障害(反抗挑戦症)は、保護者や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかける、暴言を吐くなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。

反抗挑戦性障害(反抗挑戦症)とADHD(注意欠如多動症)は強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなるといわれています。そのような場合、元々ADHD(注意欠如多動症)がある人が二次障害として反抗挑戦性障害(反抗挑戦症)を発症する場合が多いそうです。
ADHD(注意欠如多動症)とは?見た目では分からない困りごとなどイラストで解説【専門家監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)とは?見た目では分からない困りごとなどイラストで解説【専門家監修】

この反抗挑戦性障害を発症している場合も、精神科・心療内科の専門医への相談をおすすめします。

反抗挑戦性障害(反抗挑戦症)の子どもへの対応方法・接し方などに関しては、以下の関連記事を参考にしてください。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは?攻撃的で人のせいにする?対応や原因、発達障害やADHD(注意欠如多動症)との関係など【医師監修】のタイトル画像

反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは?攻撃的で人のせいにする?対応や原因、発達障害やADHD(注意欠如多動症)との関係など【医師監修】

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家庭内暴力を行う子どもの心理

思春期の子どもが家庭内暴力をふるう理由のひとつとして、感情の抑制が効かなくなってしまうことが考えられます。イライラや不安、悲しみ、憎しみなどといったネガティブな感情が湧き出てきて、それを抑えることができなくなったとき、感情の鬱積(うっせき)が暴力となって現れるのです。

家庭内暴力をふるう子どもの心理としては、自分のことを「ダメだ」と感じてしまい、そのやりきれなさを暴れることによって発散しようという気持ちと、そのような自分をつくった親に対する反抗という、二つの側面があります。

ほとんどの場合、外でおとなしくて家族にだけ暴力をふるう子どもは、「暴力が悪いことだ」とは自分でも理解しています。なので、「本当は暴力をふるいたくない。でもやってしまう」という罪悪感に苦しんでしまうことも珍しくありません。暴力行為をどんなに繰り返してもモヤモヤした感じが残ってスッキリしないのは、罪悪感から自己嫌悪に陥ってしまうからなのです。

暴力をふるうことで自らも傷つき、暴力をふるう自分が許しがたく、しかしそのような「許せない自分」を育てたのはやはり両親なのだ、という自責と他責の悪循環に苦しんでいる場合があるのです。
参考:「研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用」 福島県教育センター
http://is2.sss.fukushima-u.ac.jp/fks-db/txt/60000.kiyou/kiyou_042/pdf/00022.pdf

子どもが家庭内暴力を行なった際の対処方法

家庭内暴力はさまざまな偶然などにより、どんな家族にも起こりえます。だからこそ、暴力が起こってしまったときや、起こりそうになったときの対応策が重要となります。

ここでは、専門家に伺った家庭内暴力の対処法を5つ紹介します。家庭内暴力の原因や対応はさまざまです。これを参考に一人で取り組むのではなく、信頼できる相談機関や専門家と一緒に対応を考えていってください。

Q:過干渉が家庭内暴力につながることがあると聞いたのですが、どのように距離感を計ったらいいでしょうか?

A:思春期の子育ての中で、保護者自身がしてほしいことと子どもの思いがずれてしまうことはよくあることです。このようなズレに対して、子どもの立場になってコミュニケーションをしていくことが理解にとって重要です。双方が話し合ってルールを決め、子ども自身に自己決定をゆだねる場面も取り入れていくとよいと思います。

Q:家庭内暴力が起こったときの対応を教えてください。

A:家庭内暴力が起こる前の対策を考え予防することを優先しますが、起こってしまったときは、子どもを加害者に、保護者を被害者にしないために、以下のような基本的な対応が必要です。
身体的な暴力の場合は、抵抗するよりも、助けを呼ぶ、家の外に逃げるなどによって距離をとることが大切です。暴言の場合は、言い返したり訂正させると逆にヒートアップしてしまう可能性があります。「子ども自身が苦しんでいる叫びのようなものだ」と考えることで、やりすごせる場合もありますが、暴言や子どもの行動について相談できる方にお話することで、保護者自身の感情や悩みについてサポートを受けることが大切です。

Q:家庭内暴力を起こした後の子どもへの接し方を教えてください。

A:家庭内暴力を起こしてしまった直後は、子どもも保護者も興奮状態にあると思います。双方が落ち着くまで少し時間をあけて、落ち着いて話ができそうな場合、話をしていくようにしましょう。反省や謝罪、原因追及を中心に進めていくのではなく、暴力は悪いことであるという共通認識を前提に、暴力の代わりにどうすればよかったかについて具体的に話し合えるとよいと思います。

Q:家庭内暴力を起こさないための対策を教えてください。

A:子どもの家庭内暴力がどのような時間帯、場所、活動をしているときにどのようなきっかけで生じているのかをまず振り返ってみてください。保護者の行動がきっかけになっている場合、伝え方を変えたり環境を変えることによって、予防していくことができます。

Q:子どもが悩みを話してくれません。どのように対話したらよいでしょうか?

A:子どもが保護者に相談したり、悩みを打ち明けてくれるようになるための前提として、子どもとのコミュニケーション関係の立て直しが必要です。子どもの興味関心がある活動や対象についての話からはじめていきましょう。子どもの興味関心を保護者が理解し共有することでコミュニケーションのハードルを下げていくことができます。また、子どもの望ましい行動、例えば保護者が取れないところのものを取ってくれた、茶碗を片づけてくれたなどに対して、「ありがとう」と伝えたり、「助かったわ」など親の肯定的な対応を増やしていくことで、関係性が培われていくと思います。
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授 井上雅彦先生
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授 井上雅彦先生
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家庭内暴力に悩んだ時の相談先は?

家庭内暴力は、複雑かつ対応を誤るとエスカレートしやすい傾向にあるため、家庭内で抱えこんで暴力の現場を密室化させてしまうのではなく、外に助けを求めることも重要です。家庭内暴力にお困りの場合、以下のような機関・施設が相談先となります。

児童相談所

18歳未満の子どもに関して、「養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などさまざまな相談ができる機関となっています。

全国精神保健福祉センター

各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。
全国の精神保健福祉センター
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html

精神科・心療内科

心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。

警察

エスカレートする暴力行為を前に、身の危険を感じた場合は警察に相談することをおすすめします。警察に通報することで子どもの復讐心を煽ってしまわないかという不安もあるかもしれませんが、自分の身を守るためには毅然とした態度で通報する勇気も必要です。

まとめ

家庭内暴力とは子が保護者に向けて行う暴力的行為(暴言や物の破壊も含む)を指し、暴力は家庭内限定で行われます。比較的おとなしい子どもが、ある時点を境に始めるケースが多く報告されており、突然の子どもの変化に驚き、苦悩する親御さんは多くいます。

家庭内暴力の原因はとても複雑で、必ずしも親の教育やしつけが原因というわけではありません。子どもをとりまく環境やいじめなどの経験、精神疾患などが原因となる可能性もあります。そうした事実を踏まえて、家庭だけで抱え込むのではなく、家庭外の第三者の協力も得ながら解決を目指していくことが大切です。

参考資料

出典:「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは」内閣府男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/index.html
出典:政府広報オンライン「DV(配偶者や交際相手からの暴力)に悩んでいませんか。一人で悩まず、お近くの相談窓口に相談を!」
https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5667.html
参考:思春期における暴力行為の原因究明と対策に関する研究|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/5384
参考:家庭内暴力|北海道警察
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/seian/syounen/supportseminar/home_dv.html
参考:青少年の精神・行動障害に関わる精神科医療プログラムの研究(総括研究報告書)|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/5392
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