反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは?ADHDとの関係性など【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは、家族や学校の先生、友達などの身近な人に対して過度に怒りっぽい、口論や挑発的な行動、意地悪で執念深い行動を特徴とする疾患です。症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。また、ADHD(注意欠如多動症)の二次障害としても知られています。
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは?
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)とは、家族や学校の先生、友達などの身近な人に対して過度に怒りっぽい、口論や挑発的な行動、意地悪で執念深い行動を特徴とする疾患です。症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の主な症状
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の特徴には、大きく分けて3つのパターンがあげられます。それぞれの例をご紹介します。
・過剰に怒りっぽい
周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラする。しばしばかんしゃくを起こしたり、怒ったりする。
・周囲に挑発的な行動をする、口論が好き
大人が決めたルールや権威のある目上の人物に積極的に反抗したり、口論をふっかけたりする。わざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにする。
・意地悪で執念深い
相手を傷つけたいという悪意のある行動をする。
・過剰に怒りっぽい
周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラする。しばしばかんしゃくを起こしたり、怒ったりする。
・周囲に挑発的な行動をする、口論が好き
大人が決めたルールや権威のある目上の人物に積極的に反抗したり、口論をふっかけたりする。わざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにする。
・意地悪で執念深い
相手を傷つけたいという悪意のある行動をする。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)と反抗期の違い
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)は医学的な診断名であるのに対して、反抗期は医学的な診断名ではありません。
反抗期は、子どもが周囲の大人などに否定や拒否の態度や行動が多くあらわれる時期を示し、子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。個人差はありますが、反抗期には保護者などに反抗的な態度をとったり、イライラしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。
例えば第1次反抗期と呼ばれることもある5歳未満(1歳半から4歳ごろ)の子どもの場合、周囲の人に対して怒る、乱暴な言葉を用いて反抗する、かんしゃくを起こすなどの行為がほとんど毎日、少なくとも半年間続くことが、見分ける条件となっています。5歳以上になると、症状が週に1回以上、少なくとも半年間続くことが診断の目安になっています。
しかし反抗挑戦性障害(反抗挑発症)か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)と診断されます。判断が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。
反抗期は、子どもが周囲の大人などに否定や拒否の態度や行動が多くあらわれる時期を示し、子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。個人差はありますが、反抗期には保護者などに反抗的な態度をとったり、イライラしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。
例えば第1次反抗期と呼ばれることもある5歳未満(1歳半から4歳ごろ)の子どもの場合、周囲の人に対して怒る、乱暴な言葉を用いて反抗する、かんしゃくを起こすなどの行為がほとんど毎日、少なくとも半年間続くことが、見分ける条件となっています。5歳以上になると、症状が週に1回以上、少なくとも半年間続くことが診断の目安になっています。
しかし反抗挑戦性障害(反抗挑発症)か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)と診断されます。判断が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の診断
医療機関では、2023年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版改訂版)や『ICD-10』の基準を用いて診断されます。
DSM-5-TRの診断基準は以下の通りです。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)では、怒りっぽい、口論や挑発的な行動、執念深さなどが半年以上続きます。
具体的な行動としては、頻繁な癇癪・いらいら・怒り、目上の人との口論・反抗的な態度・周囲を苛立たせる・失敗を人のせいにする、意地悪で執念深い様子などが挙げられます。
このような症状が4つ以上みられ、かつ5歳未満の場合ではほとんど毎日、5歳以上では1週間に1回の頻度で、ともに半年以上にわたって続きます。
小児期から診断されますが、発達段階や環境などを踏まえた上で慎重に判断されます。
また診断にあたっては、このような特徴的な行動が、精神病性障害や物質が原因となる障害、抑うつ障害や双極性障害などの症状によらないことの確認が必要となります。
世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)は素行症という疾患のなかに含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する素行症のうち軽度のものであると位置づけられています。
DSM-5-TRの診断基準は以下の通りです。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)では、怒りっぽい、口論や挑発的な行動、執念深さなどが半年以上続きます。
具体的な行動としては、頻繁な癇癪・いらいら・怒り、目上の人との口論・反抗的な態度・周囲を苛立たせる・失敗を人のせいにする、意地悪で執念深い様子などが挙げられます。
このような症状が4つ以上みられ、かつ5歳未満の場合ではほとんど毎日、5歳以上では1週間に1回の頻度で、ともに半年以上にわたって続きます。
小児期から診断されますが、発達段階や環境などを踏まえた上で慎重に判断されます。
また診断にあたっては、このような特徴的な行動が、精神病性障害や物質が原因となる障害、抑うつ障害や双極性障害などの症状によらないことの確認が必要となります。
世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)は素行症という疾患のなかに含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する素行症のうち軽度のものであると位置づけられています。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の主な原因
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。
しかし育った環境は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢が苦手といったもともとの気質や、遺伝的要因なども関わり合うともされているため、原因ははっきりと解明されていないのが現状です。
しかし育った環境は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢が苦手といったもともとの気質や、遺伝的要因なども関わり合うともされているため、原因ははっきりと解明されていないのが現状です。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を発症しやすい人
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の最初の症状は就学前にあらわれることが多く、青年期早期以降に発症することはあまりないといわれています。
発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いといわれています。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまりみられなくなります。
発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いといわれています。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまりみられなくなります。
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反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の治し方・対応方法・接し方
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の治し方
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)の治療は
・症状を緩和すること
・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること
・家族のストレスを軽減すること
・行為障害への進行を予防すること
を目的として実施されます。
治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。
薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を根本的に治療する薬はないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。
社会技能訓練は、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)のある人が、大人や友達がいる場で周囲のサポートを受けながら行う、社会での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとりかた、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処法、目上の人との適切なやり取りのしかたなどの練習を行います。
また、否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。トラブルを起こさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)のある本人ではなく、その保護者が子どもとの関わり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援もあります。主に、保護者の対応方法を変えられるようになることを目的としています。
保護者は子どもの反抗的な行動の動機・行動のパターンを理解し分析することによって、問題行動に対して上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。
・症状を緩和すること
・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること
・家族のストレスを軽減すること
・行為障害への進行を予防すること
を目的として実施されます。
治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。
薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を根本的に治療する薬はないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。
社会技能訓練は、反抗挑戦性障害(反抗挑発症)のある人が、大人や友達がいる場で周囲のサポートを受けながら行う、社会での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとりかた、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処法、目上の人との適切なやり取りのしかたなどの練習を行います。
また、否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。トラブルを起こさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。
反抗挑戦性障害(反抗挑発症)のある本人ではなく、その保護者が子どもとの関わり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援もあります。主に、保護者の対応方法を変えられるようになることを目的としています。
保護者は子どもの反抗的な行動の動機・行動のパターンを理解し分析することによって、問題行動に対して上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。
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反抗挑戦性障害(反抗挑発症)がある子どもへの対応方法・接し方
過剰に興奮してしまう場合、思った通りにならずすねてしまう場合、自分のペースで行動したがる場合など具体的な状況別に、対応法を解説します。
■過剰に興奮してしまう場合
素直に従うことがなく、無視するか、返事はするものの結局行わない傾向がある場合、指示を繰り返すと、興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。
このような場合が多い子どもには、前もって約束する方法がよいでしょう。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出すよう促します。そうすることで子どもにとって指示をする大人との対峙するのではなく、約束を守るかどうかという「自分との対峙」となるように誘導します。
具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞き出すのではなく、まず約束したという事実を伝え、次に「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードなどを用いるのもおすすめです。
■思った通りにならずすねてしまう場合
衝動性が高く、思いついてすぐに行動してみたものの思い通りにならない場合など、ちょっとした拍子にすねていじけたり、反抗的な態度をとったりする場合があります。
すねる原因として、多くの失敗体験によって自信が持てなくなり、「どうせやっても失敗してしまう」とネガティブな思考が染み付いていることが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を積む必要があります。
おすすめは、運動や料理などをその子どもにとって身近な行動を通じて、成功を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっていることを実感してもらいます。
ここで重要なのは、
・何をやるべきかを明確にする
・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す
・子どものモチベーションを維持するために結果のみではなく過程も評価する
ことです。
また、子どもは「本当に自分にできるのか」と不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけつつ、自信をつけてあげることが大切です。
■自分のペースで行動したがる場合
自分のペースで行動したがる場合、集団で遊ぶことや、ほかの子どもたちとの共同作業が苦手なこともあり集団に入るよう誘うとパニックを起こす、周りの子どもたちと興味やペースが合わなくなり怒りだしてしまう、といったことがあります。
このような場合は、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整することが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないことが重要です。
■過剰に興奮してしまう場合
素直に従うことがなく、無視するか、返事はするものの結局行わない傾向がある場合、指示を繰り返すと、興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。
このような場合が多い子どもには、前もって約束する方法がよいでしょう。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出すよう促します。そうすることで子どもにとって指示をする大人との対峙するのではなく、約束を守るかどうかという「自分との対峙」となるように誘導します。
具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞き出すのではなく、まず約束したという事実を伝え、次に「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードなどを用いるのもおすすめです。
■思った通りにならずすねてしまう場合
衝動性が高く、思いついてすぐに行動してみたものの思い通りにならない場合など、ちょっとした拍子にすねていじけたり、反抗的な態度をとったりする場合があります。
すねる原因として、多くの失敗体験によって自信が持てなくなり、「どうせやっても失敗してしまう」とネガティブな思考が染み付いていることが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を積む必要があります。
おすすめは、運動や料理などをその子どもにとって身近な行動を通じて、成功を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっていることを実感してもらいます。
ここで重要なのは、
・何をやるべきかを明確にする
・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す
・子どものモチベーションを維持するために結果のみではなく過程も評価する
ことです。
また、子どもは「本当に自分にできるのか」と不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけつつ、自信をつけてあげることが大切です。
■自分のペースで行動したがる場合
自分のペースで行動したがる場合、集団で遊ぶことや、ほかの子どもたちとの共同作業が苦手なこともあり集団に入るよう誘うとパニックを起こす、周りの子どもたちと興味やペースが合わなくなり怒りだしてしまう、といったことがあります。
このような場合は、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整することが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないことが重要です。
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