ADHD(注意欠如多動症)のある人に処方される薬ストラテラ、そのストラテラの効果・副作用について詳しく解説します

ライター:発達障害のキホン
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10248000042

ストラテラはADHD(注意欠如多動症)の人に処方される薬です。ストラテラとはどんな薬なのでしょうか。また、副作用などが心配になるかもしれません。この記事ではストラテラの効果や副作用だけでなく、飲み始めたら将来やめられるのかなどについても詳しく解説します。

目次

ストラテラとはどんな薬なの?

ストラテラは不注意、多動性、衝動性といったADHD(注意欠如多動症)の症状を改善するために処方される薬です。現在ADHD(注意欠如多動症)の治療に承認されている薬は、ストラテラとコンサータ、そして2017年に承認されたインチュニブの3つです。どちらの薬も医師から処方されるもので、薬局などで自分で買うことはできません。

ストラテラは2003年にアメリカで発売開始されてから海外でも広く使用されており、日本では2009年に18歳未満の子どもに承認されました。さらに、2012年には18歳以上の成人にも承認が拡大され、幅広い年齢の人への処方が可能となっています。ただ、6歳未満の子どもへの安全性と有効性は確立されていません。

ストラテラはアトモキセチン塩酸塩という成分の入った薬で、脳の前頭前野部分に多く存在する神経伝達物質「ノルアドレナリン」を活性化させる働きを持っています。脳の前頭前野部分は、順序だてた行動や、行動をコントロールする役割を果たしており、ADHD(注意欠如多動症)の人はこの部分に何らかの不具合があると推測されています。ストラテラはドーパミンの代謝も調節することで、症状を改善させると推測されています。

また、ストラテラは薬物依存に関係する中枢神経系には作用しないために、薬への依存性は低いといわれています。
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ストラテラはどういった場合に処方されるの?

先ほど述べたとおり、ストラテラは医師の指導のもとで、本人の症状などにあった適正量が処方されます。自己判断で飲むのをやめたり、飲む量を変えたりすることはせず、医師の指示どおりに飲み続けることが大切です。

それでは、どのような場合にストラテラが処方されるのでしょうか。

アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に記載されているADHD(注意欠如多動症)の診断基準でADHD(注意欠如多動症)が重度と判断された場合には、治療初期から薬物療法を検討することが推奨されています。

またたとえ重度でなくとも、環境調整などの薬物療法以外の治療をすすめているにもかかわらず、ADHD(注意欠如多動症)の症状が改善されず本人も周りも日常生活に大きな困りごとが生じている場合にも薬物療法が検討されます。ただし、どのような場合であっても、ADHD(注意欠如多動症)の症状や日常生活の困りごとは個人差が非常に大きいことから、医師とよく相談することが重要です。
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ストラテラの用法・用量

ストラテラは飲み薬で、現在カプセルと液体薬剤のどちらかが処方されます。カプセルは5mg・10mg・25mg・40mgの4種類あり、医師が処方した用量になるように組み合わせることが可能です。カプセル内の物質は刺激物のためカプセルを分解することは禁止されています。

そこで、まだカプセルが飲めない子どもや、カプセルが飲みづらい人には、液体薬剤(内用液)0.4%を選べるようになっています。

18歳未満の子どもと18歳以上の成人では処方量や処方回数が異なります。子どもには体重に基づき決定した1日分の用量を1日2回に分けて処方される一方、成人では体重に関係なく用量が決められ1日1回もしくは2回に分けて処方されます。

また、子どもも成人も少量からの服用で治療がはじまります。どのように処方されるかは、医師が診断の上で判断しますので、かかりつけの医療機関で相談してください。
出典:患者向医薬品ガイド ストラテラ|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/530471_1179050M1023_1_01G.pdf
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ストラテラの効果はどれくらいであらわれる?

薬には飲んですぐ効果が現れるものと、効果が現れるまでに時間がかかるものがあります。ストラテラは後者のタイプで、毎日飲み続けることで効果があらわれる薬ですから、ADHD(注意欠如多動症)の症状が改善するためには少し待つ必要があります。

約2週間で不注意、多動性、衝動性の改善がみられるようになり、安定した効果が得られるまでには6~8週間かかると考えられています。なお、薬の効果があらわれれば、その効果は途切れることなく終日にわたって続くといわれています。
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ストラテラがADHD(注意欠如多動症)の症状の改善に効果があることは、2009年に高橋道宏医師らが行った調査研究で明らかとなっています。

調査は国内41医療機関で合計245人の日本人のADHD(注意欠如多動症)のある子ども(6歳以上18歳未満)を対象に行われました。

この調査研究では、ストラテラを服用するグループと、ストラテラの薬成分(アトモキセチン塩酸塩)が入っていないニセの薬を服用するグループに分けられ、医師も子どももどちらがストラテラか分からないようにした上で実施されました。

調査票を用いてADHD(注意欠如多動症)の症状を点数化し、服用前と服用後の変化について調べた結果、ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩1.8mg/kg)を服用したグループで総合点が11.6ポイント改善し、ストラテラがADHD症状の改善に有効であることが明らかとなりました。
また、アメリカのマウントサイナイ医科大学のNewcorn JH医師らが2008年に発表したストラテラとコンサータの薬の効果を比較した研究では、ADHD(注意欠如多動症)に適応が認められている薬コンサータを服用しても効果のあらわれなかった6歳から16歳までのADHD(注意欠如多動症)のある子ども70人のうち、30人(43%)はストラテラを服用して効果があったことが報告されています。
参考:Takahashi, M., et al. Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology. August 2009, 19(4): 341-350
https://www.liebertpub.com/doi/pdfplus/10.1089/cap.2008.0154
参考:Newcorn, JH. et al.. Am J Psychiatry. 2008, 165(6):721-730
https://ajp.psychiatryonline.org/doi/pdf/10.1176/appi.ajp.2007.05091676
ADHD(注意欠如多動症)の症状や、薬の効果の感じ方には個人差が大きいため、一概に「ストラテラを服用したからこのように改善した」ということはできません。しかし、実際に服用した人の体験談を見てみると、ゆるやかな症状改善を実感する人が多いようです。
 15歳、男児。混合型AD/HDで反抗挑戦性障害を併存する。家庭では朝起きが困難で親が何回起こしても起きない、起きても登校の身支度が遅く、遅刻することが多い。指示に従えず、反抗的態度が目立つ。アトモキセチンを1日0.5mg/kgより開始し、徐々に1.5 mg/kgまで漸増していったところ、1.2mg/kg頃から上記症状が軽減してきて、朝起きがスムーズになり、自分で起きることができるようになった。身支度ができるので、遅刻もしなくなった。有害事象は認められなかった。

引用:「こころの治療薬ハンドブック第10版」P.263|酒井・宮本・芳尾・諸川(編), 株式会社星和書店(2015)
出典:http://amzn.asia/cUGlAaI

ストラテラの副作用

ADHD(注意欠如多動症)への効果が報告されている一方でストラテラには副作用があることも分かっています。

特に気をつけなければいけない副作用は、重大な副作用の肝機能障害・黄疸・肝不全・アナフィラキシーです。非常にまれなもので、先ほどご紹介した2009年に高橋道宏医師らが実施した試験でも、これらの副作用は報告されていません。しかし、どのくらいの頻度で起こるかは不明であるものの、服用する場合には念のため注意する必要があります。

以下に副作用ごとの自覚症状をご紹介します。一般的には、記載された症状のうち複数の症状が同じ時期に起きるようですので、服用後に自覚症状が出た場合はすぐに服用を中止して、医師もしくは薬剤師に相談してください。
・肝機能障害:からだがだるい、吐き気、嘔吐、食欲不振、かゆみ
・黄疸:白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿が褐色にな る
・肝不全:吐き気、嘔吐、食欲不振、羽ばたくような手のふるえ
・アナフィラキシー:からだがだるい、ふらつき、意識の低下、考えがまと まらない、ほてり、眼と口唇のまわりのはれ、しゃがれ声、息苦しい、息切れ、動悸、じんましん、判断力 の低下

引用:患者向医薬品ガイド ストラテラ|独立行政法人医療品医療機器総合機構
出典:https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/530471_1179050M1023_1_01G...
重大な副作用ではないものの、ストラテラを服用すると起きやすい副作用もご紹介します。

子どもを対象に行われたストラテラの安全性を確かめる試験では、頭痛(22.3%)、食欲減退(食欲がなくなる)(18.3%)、傾眠(眠気でうとうとしてしまう)(14.0%)、腹痛(12.2%)、悪心(吐き気)(9.7%)の副作用が報告されました。

また、成人を対象にして行われた試験で報告された副作用は、悪心(吐き気)(46.9%)、食欲減退(食欲がなくなる)(20.9%)、傾眠(眠気でうとうとしてしまう) (16.6%)、口渇(口の渇き)(13.8%)、頭痛(10.5%)です。

このような症状が出た場合でも、すぐに医師に相談しましょう。食欲がなくなる、吐き気や腹痛などといった消化器系の副作用を防ぐためには、食事直後に薬をのむなどの対策をとることが重要です。
参考:患者向医薬品ガイド ストラテラ|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/530471_1179050M1023_1_01G.pdf
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出典:Takahashi, M., et al. Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology. August 2009, 19(4): 341-350
https://www.liebertpub.com/doi/pdfplus/10.1089/cap.2008.0154
なお、ストラテラを服用すると、自殺したくなる気持ちを生じる(自殺念慮)リスクが高まる可能性が心配されています。2008年にBangs医師らは過去に発表された複数の論文を横断的に調べて検証した研究を行っています。

この研究では、ストラテラを服用した患者で、実際に自殺した例はなかったことが報告されました。ストラテラを服用したグループで自殺念慮が発症した率は0.37%、ストラテラの薬成分の入っていないニセの薬を服用したグループでは0%と、ストラテラを服用したグループで自殺念慮の発症率が高いことが分かりました。

一方、実際に自殺をしてしまう危険率は両グループとも違いがなかったことも明らかとなっています。また、2016年にフロリダ大学のStephan博士らが行った最新の調査結果でも、他のADHD(注意欠如多動症)の服用薬と比べてストラテラを服用している人の自殺リスクは高まらなかったことが報告されています。

まれではあるもの、ストラテラを服薬した直後にはげしく興奮したり攻撃的になることが報告されているので、自殺念慮も含めて周囲の人はストラテラを服用する際には注意深く見守る必要があります。
出典:Bangs, ME., et al.J Am Acad Child Adolesc Psychiatry, 2008, 47(2):209-218
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18176331
出典:Linden, S., et al., Pediatrics. May 2016、 137 (5) e20153199; DOI: 10.1542/peds.2015-3199
https://pediatrics.aappublications.org/content/137/5/e20153199
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また、ADHD(注意欠如多動症)の子どもがストラテラを服用する場合は、長期間にわたる服用への影響も心配になるかもしれません。しかし、ストラテラ服用後に身長と体重の伸びがゆるやかになる場合があるものの、成長へ与える影響は一時的なものであることが分かっています。

2007年にアメリカのマサチューセッツ総合病院のSpencer医師らが、ストラテラを服用している北米人の子ども61人を5年間にわたって調査したところ、成長には影響がなかったことが報告されています。
出典:Spencer, TJ. et al. J Child Adolesc Psychopharmacol.2007, 17(5):689-700
https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/cap.2006.0100

ストラテラの値段

ストラテラの薬価は厚生労働省が定めており、決定した薬価に基づいて医療機関で診療報酬が計算されます。今のところストラテラと同じ効果をもつ後発医薬品(ジェネリック薬)は承認されていないため、治療をすすめていく上で用量が増量される場合などには、経済的負担も大きくなることも考えられます。

子どもへの医療費助成をしている自治体も多くあるので、お住まいの地域の自治体のホームページなどで確認してみると良いかもしれません。また、子どもや大人も利用できる自立支援医療制度(精神通院)を活用すると、通常であれば3割の自己負担が最大で1割に減額することも可能です。関連記事をぜひ参考になさってください。
ストラテラカプセル  5mg1カプセル : 203.00円
ストラテラカプセル 10mg1カプセル : 241.80円  
ストラテラカプセル 25mg1カプセル : 303.80円
ストラテラカプセル 40mg1カプセル : 343.60円
ストラテラ内用液 0.4%1mL : 156.40円

引用:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和2年6月19日適用)|厚生労働省
出典:https://www.mhlw.go.jp/topics/2020/04/dl/tp20200619-01_01.pdf
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ADHD(注意欠如多動症)への薬物療法に期待できること

医師にストラテラでの治療をすすめられたとき、薬物療法をはじめることに悩む方も多いかもしれません。4章で副作用を説明したので、この章では薬物療法でどんなことが期待できるのかについて考えてみたいと思います。

まず、薬物療法はADHD(注意欠如多動症)の症状を軽くすることだけが目的ではないということを知ってください。薬物療法をすすめることで、その子の成長を支えていくことが目的です。薬はADHD(注意欠如多動症)を治すものではなく、早い段階で服用したからといって将来の症状が軽くなるものでもありません。

しかし、薬を服用してADHD(注意欠如多動症)の症状が改善すれば、日常生活での困りごとが少なくなります。その結果、これまで本人が困っていたことへの対処法を身につける機会が増えたり、新しいことを学びやすくなります。また、周りの人も「褒める」といったADHD(注意欠如多動症)のある人への好ましい声がけも実践しやすくなることも考えられます。

ADHD(注意欠如多動症)のある人は、日常生活でさまざま困難が多く叱られることも多いため、「自分はだめなんだ」と自分自身を否定しがちです。ADHD(注意欠如多動症)の症状が改善することで、スキルを身につけて困りごとを少なくすれば、本人にも自信がついて自尊心を高めることにもつながることも期待できます。

また、忘れてはならない重要なことは、これらのことは薬物療法をしたからといって達成されるものではということです。薬物療法と同時に、環境調整をすることや、ペアレントトレーニングやソーシャルスキルトレーニングなどの薬物療法以外の取り組みも、ADHD(注意欠如多動症)の治療には非常に大切であることを覚えておきましょう。
参考:Q73 発達障害の子どもにはどういう薬が用いられるのでしょうか?|日本小児神経学会
https://www.childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=80
参考:Q74 発達障害の子どもの薬物療法でどのような効果が得られますか?|日本小児神経学会
https://www.childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=81
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ストラテラはやめられるの?

ADHD(注意欠如多動症)のある子どもでは、成長すると薬の必要がなくなる場合も多くなります。なぜなら、ADHD(注意欠如多動症)の症状は成長するにしたがって軽くなることが多いからです。ストラテラは薬への依存リスクが低いことから、減薬せずに中止することが可能です。

しかし、どのように薬を終了していくかは、処方するときと同じように本人の様子を見ながら医師が判断します。したがって、自分の判断で薬の服用を中止することなく、医師に相談することが重要です。

なお、日本を含めた海外の治療ガイドラインでは、子どもが薬物療法を必要としているか毎年確認することをすすめています。
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■経過
 幼少期から多動であり、幼稚園でもトラブルが絶えなかった。小学1年生になり、多動のみならずクラスメイトをたたくなどの衝動性や集中が続かないなどの理由から受診となり、ADHDと診断された。学校の環境調整を行い、母親がペアレント・トレーニングを受けるなど心理社会的治療が行われ、ADHD症状は軽快傾向にあった。しかし、小学3年になった頃からクラスメイトとの関係の悪化などから症状が悪化し、学校との連携を強化するも改善がみられないため、アトモキセチンを用いた薬物療法を開始した。次第に症状は改善し、小学高学年では特に問題がみられなかった。中学進学を前に薬物療法の終結を検討するも、中学入学という環境変化に伴う悪化を危惧し継続を望んだ。入学後も特に問題はなく、中学1年の2学期から減薬し、3学期には薬物療法を終結した。その後、定期的な通院は継続したが、問題はなく中学卒業を機にフォロー終了とした。
■まとめ
 薬物療法の終結後は多少の症状の悪化はみられたが顕著ではなく、家族や学校の協力があり、本人ができる工夫を適宜治療者と相談しながら治療を継続した。フォローを終了する際、今後いつでも再診できることを付言しておくことも重要である。

引用:「注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版」P.235|齊藤(編), 株式会社じほう(2016)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4840748810

まとめ

ADHD(注意欠如多動症)のある人に医師が処方する薬のひとつ、ストラテラを解説しました。薬物療法を開始するにあたっては、副作用への心配から不安が大きくなってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、不安をひとりで抱えこまずに医療機関に相談することを考えてみてください。

正しく知ることで不安が解消されるかもしれません。なお、医師だけでなく薬剤師も薬の相談に乗ってくれます。
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