「頑張れ!できるよ!」そんな励ましが実は子どもを追い詰めているとしたら…?

ライター:林真紀
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発達障害児が笑顔でいられるにはどうしたらいいんだろう、そのためには大人はどう関わっていけばいいんだろう…。発達障害児に関わる誰もが持つそんな気持ち。私が先日出席した講演会で学んだ、目から鱗の考え方をご紹介します。

臨床心理士さんの元で、発達障害児の追体験!目からウロコだったその内容とは

先日、「発達障害の子どもに対する大人の関わりのポイント」についての講演会情報を見つけたので、聴講に行ってきました。保育園や幼稚園での発達相談や巡回を行っている臨床心理士の先生が、現場での体験を元にお話ししてくださいました。

そこで私たちは、「発達障害児の気持ちを会場の皆さんも追体験してみましょうか。体験して想像してみなければ、子どもへの支援を考えることも難しくなってしまいますから」とおっしゃり、いくつかの実験を始めました。

これまで、ブカブカの手袋をはめて細かい作業をしたり、全ての音が一斉に聞こえる動画を見て、「発達障害児の世界」を体感したことはありました。

けれども、今回の講演ではこのような感覚の問題ではなく、「こういう風に目標を設定してもらえると楽になるよ」ということが分かる実験をしてもらいました。これがとても分かりやすく、私にとっては目から鱗でした。

「頑張れ!頑張れ!」がうとましい…それを痛感した体験

手を組んでひっくり返す
Upload By 林真紀
突然ですが、上の写真のように、手を逆に組んで、ひっくり返してみてください。この状態で、隣の人から「この指を動かして」「次はこっちの指を動かして」「次はこっち」「はいこっち」と横から矢継ぎ早に指示を出されたとします。

隣から指示する人は、さらに「頑張れ!」「できるよ!」「はい頑張れ!」「よくできた!ハイ次!」と叱咤激励します。

実際にやってみると分かるのですが、途中でどの指を動かしているのか全く分からなくなってきます。ゆっくりと順番に指示されていればなんとかできますが、「次!」「はい次これね!」「次!」と言われているうちに、段々と頭が混乱してくるのです。

そして明らかに混乱している頭で必死に指を動かしているときに、隣から「頑張れ!頑張れ!」「できるよ!」という掛け声をかけられ続けると、非常にうとましく感じられます。プレッシャーになるのです。

「もういいから、黙ってて、少し私のペースでやらせてくれ!」というイライラした気持ちになってきます。

そのとき私はハッとしました。

自分は、同じことを息子にやっている…。不器用な息子がもたもたと課題に取り組んでいると、私は隣から「はい次!」「頑張れ!」「できる、君ならできるよ!」と矢継ぎ早に言っていることに気付いたのです。

この体験は、まさにそんな発達障害児の気持ちを追体験するためのものだったのです。

キャパシティを超えた目標を設定されると、人はどうなる?

次にこんな実験です。発達検査でもよくやるかもしれません。数字の復唱をさせられました。

講師の方が「4925」と言うと、会場の聴衆も元気に「4925」と復唱します。楽勝です。みんな7桁ぐらいまでは割とサラッと復唱できました。ところが、講師の方が突然18桁の数を言いました。

「385025960324850256 はいどうぞ!」

すると驚いたことに、私も他の聴衆も「3850…」以降が言えなくなってしまいました。

これを聞いて講師の方が言いました。

「みなさん、さっきまで7桁ぐらいまで楽に覚えられていたのに、4桁しか言えませんでしたね。つまり、キャパシティを超えてしまうと、今まで出来ていたことすら出来なくなってしまうんです。

これは発達障害児に関しても同じことが言えます。右肩上がりの発達を望んではいけないんです。今何ができるか、それを見極めていかなきゃいけないんです。その子のキャパシティを超える発達を望むと、それまで出来ていたことすら出来なくなるんです。」

これは、衝撃的な体験でした。

私を含め、多くの親にとって、発達障害児が大きく成長する瞬間というのは喜ばしいものです。そして喜ばしい気持ちのままに、子どもに「もっと頑張ろう」「こんなに出来たんだからまだまだ出来るよ!」と次のステップを提示してしまうことがあります。

けれども、子どもたち一人一人に違ったキャパシティがあることを、その都度考えていかなければならないのだと思います。
次ページ「折れない心をつくるのは、キャパシティに合った目標」

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