【医師監修】夜驚症(睡眠時驚愕症)とは?「突然叫ぶ・パニック」への対処法、原因、夜泣き・てんかんとの違い

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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夜驚症(やきょうしょう)とは、子どもが発症することの多い睡眠障害の一つで、睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)とも呼ばれます。寝ている子どもがいきなり泣き叫んだり、パニックを起こしたりする姿に不安を感じる保護者も少なくないと思います。この記事では夜驚症の特徴や原因、子どもが夜驚症を起こした場合にどう対応すればよいかなどについてまとめました。

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

夜驚症(やきょうしょう)・睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)とは?

この記事で分かること

  • 夜驚症(睡眠時驚愕症)の具体的な症状や特徴
  • 夜驚症が起こる原因として考えられていること(ストレス、睡眠不足など)
  • 「夜泣き」「悪夢障害」「てんかん」といった、似ている症状との違いや見分け方
  • 夜驚症と発達障害の関連性について
  • 症状を起こした時の具体的な対処法
夜驚症とは?睡眠時に悲鳴や叫ぶ声をあげて暴れたり、極度のパニックを起こす睡眠障害
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夜驚症・睡眠時驚愕症は睡眠ー覚醒障害群の一つ

夜驚症(睡眠時驚愕症)とは、睡眠時に突然恐怖に襲われ叫び声をあげたり、大声で泣いたりする睡眠ー覚醒障害群の一つです。多くは思春期までには消失します。
瞳孔の散大、脈拍の上昇、発汗など自律神経系の緊張の兆候が見られます。
症状は眠りについてから起床するまでの最初の3分の1以内の時間で起こります。1~10分症状が続くことが多いですが、それよりも長く続くこともあります。
症状を起こしている間、声かけても無反応な場合が多く、落ち着かせることは非常に困難です。
また症状のあとに目を覚ましても、本人はほとんど何も覚えていない、もしくは断片的にしか覚えていないなども特徴です。
睡眠時驚愕症は「夜驚」「夜泣き」とも呼ばれます。

まれに大人でも発症することがあります。この記事では、主に子どもの夜驚症についてご紹介しますが、7章目で大人の夜驚症への対処法、治療法について紹介します。

夜驚症・睡眠時驚愕症は医学的にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)で定義されています。以下はDSM-5の定義です。DSM-5では、「睡眠時驚愕症型」として「睡眠時随伴症群」のうちの「ノンレム睡眠からの覚醒障害」の中に分類されています。
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因とは?

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は解明されていない

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は、現時点で明確に判明していません。思春期までにほとんどの夜驚症の症状は自然に消えることが多いため、脳における睡眠機能の発達が途中段階であることが深く関わっていると考えられています。

眠りのメカニズムと夜驚症の関係は?

睡眠は大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠にわけることができます。レム睡眠は比較的浅い眠りで、身体は休んでいるものの脳は活動している状態を指します。一方で、ノンレム睡眠は深い眠りで、身体も脳も休んでいる状態を指します。この2種類の眠りが睡眠の中で一定の時間ごとに交互に起こります。

しかし、夜驚症・睡眠時驚愕症を発症しやすいといわれている3歳~8歳ごろは、レム睡眠とノンレム睡眠をはじめとした睡眠の機能を形成する真っ最中です。そのため、脳の中の睡眠と目覚めを調節している部分がまだうまく働いていないことがあると考えられています。

深い眠りのノンレム睡眠中であるにも関わらず、日中感じていた不安やストレス、恐怖などによって、脳に興奮が与えられてしまうことがあります。そうすると、脳が深い眠りにあるまま一気に目覚めに向かって、覚醒しようとしてしまいます。通常眠りから目覚めるときは、浅い眠りのレム睡眠を経て覚醒しますが、まだその機能が未発達の場合、脳が完全には覚醒しないまま興奮状態になってしまうと考えられています。

そのため、寝ているときに脳の一部が覚醒し、興奮・パニックを引き起こしてしまうにもかかわらず、本人は何も覚えていないという症状が現れると考えられているのです。

夜驚症の子どもにとって、何がパニックの原因になるの?

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は、現時点で明確に判明していませんが、パニックを引き起こす原因として、以下のようなことが要因になるのではないかと考えられています。

・ストレスや不安
・睡眠不足
・騒音の環境
・発熱のある病気に罹患している
・睡眠中に膀胱内に尿が充満する
・睡眠時無呼吸症候群
・ADHD
・薬の副作用(向精神薬、精神安定剤、睡眠薬など)

参考:Leung et al. Sleep Terrors: An Updated Review. Curr Pediatr Rev. 2020;16:176-182.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31612833/
大人にとっては何でもないことだとしても、子どもにとっては強い不安や恐怖、興奮状態を引き起こす要因になる場合があります。例えば、怖いテレビ番組や本を見たり読んだりした、発表会や学芸会など緊張する出来事が近くにある、といったことでも夜驚症を発症する場合があります。また、旅行や遊園地へ行くなどといった子どもにとって楽しい体験も強い興奮が与えられるという点で、夜驚症のきっかけになることがあります。

また、明確には分かっていませんが遺伝的要因もあると考えられています。DSM-5によると第一度生物学的親族(特定の個人から見て、父母や兄弟、姉妹を指します)では、夜驚症になる確率が10倍高いといわれています。
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
日本精神神経学会 (監修), 高橋 三郎 (翻訳), 大野 裕 (翻訳), 染矢 俊幸 (翻訳), 神庭 重信 (翻訳), 尾崎 紀夫 (翻訳), & 2 その他
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夜驚症と夜泣きの違いって?

夜に子どもが泣く、と聞くと「夜泣き?」と思うことが多いと思います。子どもを寝かせたのにまた泣き出してしまう、という共通点がある夜驚症と夜泣きはどの点で異なってくるのでしょうか。

夜泣きは抱っこやスキンシップで落ち着き、また眠りにつくことがある

夜泣きとは、「お腹がすいた、おむつが濡れた、暑い、寒い」などといった生理的な理由と関係なく泣き続けることです。夜泣きは生後3、4ヶ月ごろから1歳、2歳までの子どもに多く見られます。この時期の子どもは睡眠サイクルが不安定であるため、睡眠が浅くなりやすい傾向にあります。そして眠りから覚醒しやすいことに加え、この時期の子どもは覚醒したときに感じた不安や興奮をうまくコントロールすることもまだ難しい段階にあります。そのため、夜目覚めたときに泣いてしまい、夜泣きが起こるのです。夜泣きは抱っこやスキンシップでだんだんと落ち着き、また眠りにつくことが多くあります。
参考:未就学児の睡眠指針|子ども家庭庁 健やか親子21
https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s4_nyu_pan004.pdf

夜驚症は突然泣き叫んだり、恐怖を浮かべた表情で泣き続けたりする

一方夜驚症は、ただ泣くのではなく突然泣き叫んだり、恐怖に満ちた顔で泣き続けたりすることが特徴です。

夜泣きが発生する時期が新生児期~乳児期であるのに対し、夜驚症は3歳から8歳といった、幼児期から学童期に多く発症します。また、「夜驚症の原因とは?」でご紹介したように、夜驚症から起こるパニック状態は脳の一部分だけの覚醒により起こっています。そのため、周りが落ち着かせようとしても効果がなく、本人はパニックを起こしたことを覚えていないという点が大きな特徴です。
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夜驚症と悪夢障害の違いとは?

夜驚症は睡眠障害の一つ、とはじめに説明しましたが、専門的な治療を必要とせず、辛抱強く見守るというケースがほとんどです。しかし、中には夜驚症とよく似た違う障害や疾患を抱えている場合もあります。以下で、夜驚症とよく似ているといわれている悪夢障害について、症状や夜驚症との違いを見てみましょう。

悪夢障害とは、強い不安や恐怖を伴った夢を頻繁に見る、睡眠障害のことです。3~6歳で始まることが多く、青年期後期あるいは成人期初期に重症度が高まります。
夜驚症との違いは、悪夢障害の場合、絶叫や体動はあまりなく、目覚めと同時にはっきりと意識が戻るという点です。自分が見た嫌な夢をこと細かく話すことができるほど鮮明に覚えているという点も特徴です。発汗、脈拍数の上昇、呼吸が速くなるなどの軽度の自律神経の高ぶりがある場合もあります。
夜驚症が深い眠りのノンレム睡眠中に起こるのに対して、悪夢障害は浅い眠りのレム睡眠中に起こるため、はっきりと覚醒できるのです。悪夢障害は過去の恐怖体験やトラウマが原因となり、似たような恐怖体験の夢を繰り返し見ることもあります。また悪夢障害の場合は自然に消滅しにくいといわれています。

子どもが悪夢を見る回数があまりに多い、目が覚めて夢の内容を詳しく話せる、という様子が見られるなら、一度小児科や精神科へ相談してみることをおすすめします。

夜驚症とてんかんの違いとは?

もう一つ、夜驚症とよく区別される疾患にてんかんがあります。特に夜驚症と区別が難しいてんかんに「睡眠関連てんかん」というものがあります。これは、てんかん発作が睡眠時に限って起こる、あるいは発作のほとんどが睡眠中に起こるてんかんを指します。てんかんとは、慢性的な脳の疾患で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで、さまざまな発作が繰り返し見られます。

また、夜驚症と発現が似ているてんかんに関連した精神症状としては、不安や恐怖感がわき起こってくるなどの精神病様状態や感情障害を伴うことがあります。ほかにも、突然意識を失ってうろうろ動き回るなど、夜驚症の症状と見分けることが難しいてんかんに関連した症状がいくつかあります。
参考:小児の睡眠関連病態 福水 道郎,亀井 雄一,三島 和夫 ,中川 栄二,HayesMarieJ.
http://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/2009118524.pdf?file_id=3308
夜驚症と睡眠関連てんかんをはっきりと見分けることはとても難しいことです。見分ける際には、以下に挙げたような、夜驚症を起こす頻度や時間がヒントとなります。

・子どもが寝始めたあと、夜驚症のような症状を起こす回数があまりにも多い
・子どもが眠りについてからあまりにも時間がたってから症状を起こす
・症状があらわれる一回の時間が10分以上である
・夜寝入りに手足や顔の一部をピクピクと引き攣らせる

子どもの夜驚症の症状にこのような「てんかんかも?」と思われるような特徴がみられる場合、一度病院で診察を受けてみましょう。小児科や精神科の先生に診てもらうことで、「子どもがてんかんかもしれない…」「夜こんなに激しく泣いたりわめいたりするなんて何かの病気かもしれない…」という不安の解消・軽減につながります。

また、夜驚症が頻繁あるいは激しく起こることが続くと周りの大人も睡眠不足になってしまったり、子どもをなだめたりすること、また子育てをしていること自体にも疲れていたりすることが多くあります。症状に不安を感じたときはもちろん、周りの大人が疲れてしまうほどの症状を見せる場合も病院へ行くことをおすすめします。
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夜驚症と発達障害との関係は?

夜驚症をはじめとする睡眠障害は、発達障害の二次障害として現れることが多いとされています。ここで注意すべきことは、夜驚症などの睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではない、ということです。発達障害特有の性質が原因で、睡眠に影響が出やすいということです。

実際、発達障害のある子どもは発達障害がない子どもに比べて夜に覚醒する割合が高いというデータが出ていることから、発達障害のある子どもで夜驚症も併発しているケースも少なくありません。
参考:Johnson CR, DeMand A and Shui A:Relationships between anxiety and sleep and feeding in young children with ASD. Journal of Developmental and Physical Disabilities , 27(3), 359-373, 2015.
https://link.springer.com/article/10.1007/s10882-015-9419-3
発達障害者の睡眠困難と支援に関する研究 : 発達障害の 当事者調査から( fulltext )   柴田,真緒; 髙橋,智|東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 2017 –
https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/record/34057/files/18804306_68_25.pdf
これは、発達障害のある子どもは刺激に対して過敏であることが多いため、興奮状態になりやすい、ということが密接に関係していると考えられます。また、夜驚症は脳の発達と関連があり、発達障害のある子どもの場合睡眠をつかさどる脳機能が未成熟であったり、発達が遅れてしまうことがあるといわれています。これが、発達障害と夜驚症が同時に現れる場合があることの理由の一つであると考えられます。
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夜驚症の対処法は?治療法はあるの?子どもと大人の場合それぞれについて

子どもの夜驚症への対処法、治療法

夜驚症は子どもの脳の発達との関連が深いため、成長が進むにつれて症状が治まるケースがほとんどです。それゆえ、多くは専門的な治療を行うことはなく、経過観察をすることも多いでしょう。つまり、子どもの夜驚症に対して保護者自身が落ち着いて、対応することが大切です。子どもに夜驚症という診断がつき、経過観察という措置を取った場合、以下のようなことを頭において夜驚症を起こす子どもに接してみましょう。

・子どもがパニックを起こしても無理に押さえつけたり止めたりしない
・子どもが泣き叫んだり動き回ったりすることを想定して、危険がないような環境をつくる(戸締りを確認する、けがにつながるようなものを置きっぱなしにしていないか確認する、など)

保護者が夜驚症についてよく理解し、このようなことを意識して子どもに接することが、夜驚症を発症する子どもを見守る際に大切な姿勢となります。

しかし、夜驚症があまりに激しく、親子の睡眠や健康に支障をきたしている、子どもだけでの宿泊行事の際に不安を感じている場合など、経過観察だけでは心配に思う保護者の方もいると思います。その際は、小児科や睡眠外来のある精神科に症状を具体的によく相談し、何か良い治療法や方策がないか聞いてみることもよいでしょう。カウンセリングや投薬治療などで夜驚症の症状を軽くすることができることもあります。

大人の夜驚症への対処法、治療法

DSM-5には、夜驚症を発症している人のうち大人である確率は2.2%というデータがあります。冒頭でもご紹介しましたが、夜驚症を発症する大人はとても珍しいといえます。
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大人が夜驚症の症状を見せる場合、ストレスが関与している何らかの二次障害であることが多くあります。そのため、まずストレスの要因が何にあるのか、そして軽減できないか考えてみましょう。また、子どもの場合と同じように、寝室環境を整えることも夜驚症の無意識な行動によるけがの防止のために重要な対処の一つです。

夜驚症の症状に悩んでいる、原因が自分では分からないときは、睡眠外来や精神科のある病院・クリニックを訪れてみるのもよいでしょう。また、ホームページなどを参考にする際は、「睡眠時随伴症」と書かれた箇所に夜驚症に関する情報が載っていることもあるので、合わせて見てみることをおすすめします。
出典:「睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)」(厚生労働省健康づくりサポートネット)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-025

まとめ

夜驚症とは、眠っていても突然泣き出したり騒いだりしてしまうことです。恐怖に満ちた顔つきや泣き方の激しさ、そしてそのパニック状態を覚えていない様子を見ると周りの大人も不安に感じてしまうと思います。

夜驚症の多くの場合は子どもの成長の一過程で起き、時間の経過とともに症状が落ち着くという場合がほとんどです。そのため、夜驚症のある子どものために周りの大人ができることは夜驚症のメカニズムや詳細を知り、落ち着いて子どもを見守ることです。

しかし、成長段階で起きるものとはいえ、ほかの疾患も疑われるほど夜驚症の症状が激しい場合や、子どもだけでなく周りの大人も睡眠不足などで生活に支障が出る場合は、小児科や精神科に相談してみましょう。病院に相談することで、不安がある程度軽減されたり、子どもへの対応方法が分かることもあります。子どもの状態を一度冷静に見直したうえで心配なことが残る場合は、小児科医や精神科医の先生に相談することをおすすめします。
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