夜驚症・睡眠時驚愕症とは?特徴、原因、対応方法、治療法についてまとめました【医師監修】

ライター:発達障害のキホン

夜驚症(やきょうしょう)とは、子どもが発症することの多い睡眠障害の一つで、睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)とも呼ばれます。寝ている子どもがいきなり泣き叫んだり、パニックを起こしたりする姿に不安を感じる保護者も少なくないと思います。この記事では夜驚症の特徴や原因、子どもが夜驚症を起こした場合にどう対応すればよいかなどについてまとめました。

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監修: 藤井明子
さくらキッズくりにっく院長 
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年より東京都世田谷区にあるさくらキッズくりにっくで発達外来を行っている。病気に限らず、子どものすべてを診るクリニックをめざし、お子さんだけでなく、親御さん子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。三人の子供を育児中である。
目次

夜驚症・睡眠時驚愕症とは?

夜驚症(やきょうしょう)は、睡眠時に悲鳴や叫び声をあげて突然覚醒し、極度のパニックを起こす睡眠障害の一つです。睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)ともいいます。

3歳~8歳ごろの子どもに発症しやすいといわれていますが、まれに大人でも発症することがあります。この記事では、主に子どもの夜驚症についてご紹介します。

子どもの夜驚症は、ノンレム睡眠からの不完全な覚醒による障害であり、多くの場合は成長と共に症状が落ち着き、特別な治療を必要としません。

夜驚症の症状は、眠りについてから起床するまでの最初の3分の1以内の時間で起こります。そして1回のパニック状態の多くが1~10分続きますが、それよりも長く続くこともあります。

夜驚症は、パニックを起こしている間に家族などが話しかけても、無反応かあるいはとても鈍い反応しか見せないということが多くあります。また症状のあとに目を覚ましても、ほとんど何も覚えていなかったり、断片的にしか覚えていないという特徴があります。

夜驚症・睡眠時驚愕症は医学的にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)で定義されています。以下はDSM-5の定義です。DSM-5では、「睡眠時驚愕症型」として「睡眠時随伴症群」のうちの「ノンレム睡眠からの覚醒障害」の中に分類されています。
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因とは?

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は、現時点で明確に判明していません。思春期までにほとんどの夜驚症の症状は自然に消えることが多いため、脳における睡眠機能の発達が途中段階であることが深く関わっていると考えられています。

眠りのメカニズムと夜驚症の関係は?

睡眠は大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠にわけることができます。レム睡眠は比較的浅い眠りで、身体は休んでいるものの脳は活動している状態を指します。一方で、ノンレム睡眠は深い眠りで、身体も脳も休んでいる状態を指します。この2種類の眠りが睡眠の中で一定の時間ごとに交互に起こります。

しかし、夜驚症・睡眠時驚愕症を発症しやすいといわれている3歳~8歳ごろは、レム睡眠とノンレム睡眠をはじめとした睡眠の機能を形成する真っ最中です。そのため、脳の中の睡眠と目覚めを調節している部分がまだうまく働いていないことがあると考えられています。

深い眠りのノンレム睡眠中であるにも関わらず、日中感じていた不安やストレス、恐怖などによって、脳に興奮が与えられてしまうことがあります。そうすると、脳が深い眠りにあるまま一気に目覚めに向かって、覚醒しようとしてしまいます。通常眠りから目覚めるときは、浅い眠りのレム睡眠を経て覚醒しますが、まだその機能が未発達の場合、脳が完全には覚醒しないまま興奮状態になってしまうと考えられています。

そのため、寝ているときに脳の一部が覚醒し、興奮・パニックを引き起こしてしまうにもかかわらず、本人は何も覚えていないという症状が現れると考えられているのです。

夜驚症の子どもにとって、何がパニックの原因になるの?

夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は、現時点で明確に判明していませんが、パニックを引き起こす原因として、以下のようなこと要因になるのではないかと考えられています。

・ストレスや不安
・睡眠不足
・騒音の環境
・発熱のある病気に罹患している
・睡眠中に膀胱内に尿が充満する
・睡眠時無呼吸症候群
・ADHD
・薬の副作用(向精神薬、精神安定剤、睡眠薬など)

参考:Leung et al. Sleep Terrors: An Updated Review. Curr Pediatr Rev. 2020;16:176-182.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31612833/
大人にとっては何でもないことだとしても、子どもにとっては強い不安や恐怖、興奮状態を引き起こす要因になる場合があります。例えば、怖いテレビ番組や本を見たり読んだりした、発表会や学芸会など緊張する出来事が近くにある、といったことでも夜驚症を発症する場合があります。また、旅行や遊園地へ行くなどといった子どもにとって楽しい体験も強い興奮が与えられるという点で、夜驚症のきっかけになることがあります。

また、明確には分かっていませんが遺伝的要因もあると考えられています。DSM-5によると第一度生物学的親族(特定の個人から見て、父母や兄弟、姉妹を指します)では、夜驚症になる確率が10倍高いといわれています。
出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(2014,医学書院/刊)
https://www.amazon.co.jp/dp/4260019074

夜驚症と夜泣きの違いって?

夜に子どもが泣く、と聞くと「夜泣き?」と思うことが多いと思います。子どもを寝かせたのにまた泣き出してしまう、という共通点がある夜驚症と夜泣きはどの点で異なってくるのでしょうか。

夜泣きとは、「お腹がすいた、おむつが濡れた、暑い、寒い」などといった生理的な理由と関係なく泣き続けることです。夜泣きは生後3、4ヶ月ごろから1歳、2歳までの子どもに多く見られます。この時期の子どもは睡眠サイクルが不安定であるため、睡眠が浅くなりやすい傾向にあります。そして眠りから覚醒しやすいことに加え、この時期の子どもは覚醒したときに感じた不安や興奮をうまくコントロールすることもまだ難しい段階にあります。そのため、夜目覚めたときに泣いてしまい、夜泣きが起こるのです。夜泣きは抱っこやスキンシップでだんだんと落ち着き、また眠りにつくことが多くあります。
参考:未就学児の睡眠指針|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000375711.pdf
一方夜驚症は、ただ泣くのではなく突然泣き叫んだり、恐怖に満ちた顔で泣き続けたりすることが特徴です。

夜泣きが発生する時期が新生児期~乳児期であるのに対し、夜驚症は3歳から8歳といった、幼児期から学童期に多く発症します。また、「夜驚症の原因とは?」でご紹介したように、夜驚症から起こるパニック状態は脳の一部分だけの覚醒により起こっています。そのため、周りが落ち着かせようとしても効果がなく、本人はパニックを起こしたことを覚えていないという点が大きな特徴です。

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