【医師監修】夜驚症(睡眠時驚愕症)とは?「突然叫ぶ・パニック」への対処法、原因、夜泣き・てんかんとの違い
夜驚症(やきょうしょう)とは、子どもが発症することの多い睡眠障害の一つで、睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)とも呼ばれます。寝ている子どもがいきなり泣き叫んだり、パニックを起こしたりする姿に不安を感じる保護者も少なくないと思います。この記事では夜驚症の特徴や原因、子どもが夜驚症を起こした場合にどう対応すればよいかなどについてまとめました。
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
夜驚症(やきょうしょう)・睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)とは?
この記事で分かること
- 夜驚症(睡眠時驚愕症)の具体的な症状や特徴
- 夜驚症が起こる原因として考えられていること(ストレス、睡眠不足など)
- 「夜泣き」「悪夢障害」「てんかん」といった、似ている症状との違いや見分け方
- 夜驚症と発達障害の関連性について
- 症状を起こした時の具体的な対処法
夜驚症・睡眠時驚愕症は睡眠ー覚醒障害群の一つ
瞳孔の散大、脈拍の上昇、発汗など自律神経系の緊張の兆候が見られます。
症状は眠りについてから起床するまでの最初の3分の1以内の時間で起こります。1~10分症状が続くことが多いですが、それよりも長く続くこともあります。
症状を起こしている間、声かけても無反応な場合が多く、落ち着かせることは非常に困難です。
また症状のあとに目を覚ましても、本人はほとんど何も覚えていない、もしくは断片的にしか覚えていないなども特徴です。
睡眠時驚愕症は「夜驚」「夜泣き」とも呼ばれます。
まれに大人でも発症することがあります。この記事では、主に子どもの夜驚症についてご紹介しますが、7章目で大人の夜驚症への対処法、治療法について紹介します。
夜驚症・睡眠時驚愕症は医学的にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)で定義されています。以下はDSM-5の定義です。DSM-5では、「睡眠時驚愕症型」として「睡眠時随伴症群」のうちの「ノンレム睡眠からの覚醒障害」の中に分類されています。
夜驚症・睡眠時驚愕症の原因とは?
夜驚症・睡眠時驚愕症の原因は解明されていない
眠りのメカニズムと夜驚症の関係は?
しかし、夜驚症・睡眠時驚愕症を発症しやすいといわれている3歳~8歳ごろは、レム睡眠とノンレム睡眠をはじめとした睡眠の機能を形成する真っ最中です。そのため、脳の中の睡眠と目覚めを調節している部分がまだうまく働いていないことがあると考えられています。
深い眠りのノンレム睡眠中であるにも関わらず、日中感じていた不安やストレス、恐怖などによって、脳に興奮が与えられてしまうことがあります。そうすると、脳が深い眠りにあるまま一気に目覚めに向かって、覚醒しようとしてしまいます。通常眠りから目覚めるときは、浅い眠りのレム睡眠を経て覚醒しますが、まだその機能が未発達の場合、脳が完全には覚醒しないまま興奮状態になってしまうと考えられています。
そのため、寝ているときに脳の一部が覚醒し、興奮・パニックを引き起こしてしまうにもかかわらず、本人は何も覚えていないという症状が現れると考えられているのです。
夜驚症の子どもにとって、何がパニックの原因になるの?
・ストレスや不安
・睡眠不足
・騒音の環境
・発熱のある病気に罹患している
・睡眠中に膀胱内に尿が充満する
・睡眠時無呼吸症候群
・ADHD
・薬の副作用(向精神薬、精神安定剤、睡眠薬など)
また、明確には分かっていませんが遺伝的要因もあると考えられています。DSM-5によると第一度生物学的親族(特定の個人から見て、父母や兄弟、姉妹を指します)では、夜驚症になる確率が10倍高いといわれています。
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夜驚症と夜泣きの違いって?
夜泣きは抱っこやスキンシップで落ち着き、また眠りにつくことがある
夜驚症は突然泣き叫んだり、恐怖を浮かべた表情で泣き続けたりする
夜泣きが発生する時期が新生児期~乳児期であるのに対し、夜驚症は3歳から8歳といった、幼児期から学童期に多く発症します。また、「夜驚症の原因とは?」でご紹介したように、夜驚症から起こるパニック状態は脳の一部分だけの覚醒により起こっています。そのため、周りが落ち着かせようとしても効果がなく、本人はパニックを起こしたことを覚えていないという点が大きな特徴です。
夜驚症と悪夢障害の違いとは?
悪夢障害とは、強い不安や恐怖を伴った夢を頻繁に見る、睡眠障害のことです。3~6歳で始まることが多く、青年期後期あるいは成人期初期に重症度が高まります。
夜驚症との違いは、悪夢障害の場合、絶叫や体動はあまりなく、目覚めと同時にはっきりと意識が戻るという点です。自分が見た嫌な夢をこと細かく話すことができるほど鮮明に覚えているという点も特徴です。発汗、脈拍数の上昇、呼吸が速くなるなどの軽度の自律神経の高ぶりがある場合もあります。
夜驚症が深い眠りのノンレム睡眠中に起こるのに対して、悪夢障害は浅い眠りのレム睡眠中に起こるため、はっきりと覚醒できるのです。悪夢障害は過去の恐怖体験やトラウマが原因となり、似たような恐怖体験の夢を繰り返し見ることもあります。また悪夢障害の場合は自然に消滅しにくいといわれています。
子どもが悪夢を見る回数があまりに多い、目が覚めて夢の内容を詳しく話せる、という様子が見られるなら、一度小児科や精神科へ相談してみることをおすすめします。
夜驚症とてんかんの違いとは?
また、夜驚症と発現が似ているてんかんに関連した精神症状としては、不安や恐怖感がわき起こってくるなどの精神病様状態や感情障害を伴うことがあります。ほかにも、突然意識を失ってうろうろ動き回るなど、夜驚症の症状と見分けることが難しいてんかんに関連した症状がいくつかあります。
・子どもが寝始めたあと、夜驚症のような症状を起こす回数があまりにも多い
・子どもが眠りについてからあまりにも時間がたってから症状を起こす
・症状があらわれる一回の時間が10分以上である
・夜寝入りに手足や顔の一部をピクピクと引き攣らせる
子どもの夜驚症の症状にこのような「てんかんかも?」と思われるような特徴がみられる場合、一度病院で診察を受けてみましょう。小児科や精神科の先生に診てもらうことで、「子どもがてんかんかもしれない…」「夜こんなに激しく泣いたりわめいたりするなんて何かの病気かもしれない…」という不安の解消・軽減につながります。
また、夜驚症が頻繁あるいは激しく起こることが続くと周りの大人も睡眠不足になってしまったり、子どもをなだめたりすること、また子育てをしていること自体にも疲れていたりすることが多くあります。症状に不安を感じたときはもちろん、周りの大人が疲れてしまうほどの症状を見せる場合も病院へ行くことをおすすめします。
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夜驚症と発達障害との関係は?
実際、発達障害のある子どもは発達障害がない子どもに比べて夜に覚醒する割合が高いというデータが出ていることから、発達障害のある子どもで夜驚症も併発しているケースも少なくありません。
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夜驚症の対処法は?治療法はあるの?子どもと大人の場合それぞれについて
子どもの夜驚症への対処法、治療法
・子どもがパニックを起こしても無理に押さえつけたり止めたりしない
・子どもが泣き叫んだり動き回ったりすることを想定して、危険がないような環境をつくる(戸締りを確認する、けがにつながるようなものを置きっぱなしにしていないか確認する、など)
保護者が夜驚症についてよく理解し、このようなことを意識して子どもに接することが、夜驚症を発症する子どもを見守る際に大切な姿勢となります。
しかし、夜驚症があまりに激しく、親子の睡眠や健康に支障をきたしている、子どもだけでの宿泊行事の際に不安を感じている場合など、経過観察だけでは心配に思う保護者の方もいると思います。その際は、小児科や睡眠外来のある精神科に症状を具体的によく相談し、何か良い治療法や方策がないか聞いてみることもよいでしょう。カウンセリングや投薬治療などで夜驚症の症状を軽くすることができることもあります。
大人の夜驚症への対処法、治療法
夜驚症の症状に悩んでいる、原因が自分では分からないときは、睡眠外来や精神科のある病院・クリニックを訪れてみるのもよいでしょう。また、ホームページなどを参考にする際は、「睡眠時随伴症」と書かれた箇所に夜驚症に関する情報が載っていることもあるので、合わせて見てみることをおすすめします。
まとめ
夜驚症の多くの場合は子どもの成長の一過程で起き、時間の経過とともに症状が落ち着くという場合がほとんどです。そのため、夜驚症のある子どものために周りの大人ができることは夜驚症のメカニズムや詳細を知り、落ち着いて子どもを見守ることです。
しかし、成長段階で起きるものとはいえ、ほかの疾患も疑われるほど夜驚症の症状が激しい場合や、子どもだけでなく周りの大人も睡眠不足などで生活に支障が出る場合は、小児科や精神科に相談してみましょう。病院に相談することで、不安がある程度軽減されたり、子どもへの対応方法が分かることもあります。子どもの状態を一度冷静に見直したうえで心配なことが残る場合は、小児科医や精神科医の先生に相談することをおすすめします。
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