乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)とは?症状、予防法について紹介します!【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)は、激しく乳幼児が揺さぶられたときに起こる脳の損傷です。乳幼児揺さぶられ症候群は保護者や子どもに関わる大人の育児ストレスが原因で起こってしまうことが多いといわれています。この記事では、乳幼児揺さぶられ症候群にどんな症状があるのか、そして予防するために保護者が子育てで何に気をつければ良いのかについて詳しく説明します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome/SBS)とは?

赤ちゃんや幼児が激しく揺さぶられることによって脳内が傷ついてしまう状態を乳幼児揺さぶられ症候群(乳幼児揺さぶられっ子症候群)といいます。重度の障害が起きてしまったり、命の危険につながることもあります。元気がなくなる、機嫌が悪くなる、すぐに眠ってしまう状態、嘔吐、けいれん、意識障害、呼吸困難などがみられる場合、速やかに小児科を受診してください。

赤ちゃんは頭が重く首の筋肉が未発達のため、激しい揺れで脳が衝撃を受けやすい状態にあります。また、新生児の脳の大きさは大人に比べて小さく、成長と共にどんどん大きくなっていきます。
このような脳の発達に備えて、頭蓋骨と脳の間にはある程度のすきまがあります。つまり、赤ちゃんの頭の中は、頭蓋骨の中に脳が浮いているような状態にあるのです。そのため、激しく揺さぶられると頭蓋骨の内側に何度も脳が打ちつけられ、脳の血管や神経に損傷が起きてしまいます。

このため、保護者が赤ちゃんをあやしたり抱っこしたりするときは、新生児期・乳児期を通じて頭がぐらぐら揺らされていないかどうか、力強くすばやく揺らしてしまってはいないか、注意する必要があります。新生児~生後6ヶ月ごろまでは、首の筋力が弱く安定していないことから特に注意が必要です。それ以降も頭蓋骨の成長が完了する2歳ごろまでは、頭蓋骨と脳の間に少しのすきまがあるため激しく揺さぶってはいけません。

乳幼児揺さぶられ症候群の症状

赤ちゃんが激しい揺さぶりを受けると、脳細胞が破壊され、脳の中が低酸素状態になります。揺さぶりを受けた直後、赤ちゃんが以下のような症状を見せた場合、乳幼児揺さぶられ症候群の可能性があります。
・元気がなくなる。
・機嫌が悪くなる。
・傾眠傾向(すぐに眠ってしまう状態)
・嘔吐(ウイルス感染による嘔吐症と間違われやすいです。)
・けいれん
・意識障害(呼んでも、応えない)
・呼吸困難
・昏睡(強く刺激しても目を覚まさない状態)
・死
出典:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/070815_shaken.pdf
このように、乳幼児揺さぶられ症候群は死に至る可能性もあります。赤ちゃんを激しく揺さぶってしまい、このような症状が現れた場合は、すみやかにかかりつけの小児科か最寄りの救急救命センターへ子どもを連れていきましょう。

また、命が助かった場合でも、以下のような症状・後遺症を起こしてしまうこともあります。
・脳の周りの出血(硬膜下血腫、クモ膜下出血など)や脳の中の出血
・失明、視力障害
・言葉の遅れ、学習の障害
・後遺症としてのけいれん発作
・脳損傷、知的障害
・脳性麻痺
出典:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/070815_shaken.pdf
硬膜下血腫やクモ膜下出血とは、脳の表面で起きた出血が原因で起こります。
頭蓋骨と脳の間には、頭蓋骨側から「硬膜」「クモ膜」「軟膜」の3つの膜があります。硬膜下血腫やクモ膜下出血は、硬膜・クモ膜と脳の間に血液が溜まってしまう状態を指します。

乳幼児期という脳の発達においてとても重要な時期に、乳幼児揺さぶられ症候群で脳内が傷ついてしまうと、身体機能や精神機能、学習機能などさまざまなところに影響が出てきてしまうことがあります。

どうして乳幼児揺さぶられ症候群が起こってしまうの?

乳幼児揺さぶられ症候群が起きた過去の事例を見てみると、赤ちゃんを揺さぶってしまった原因として多いものは「育児ストレス」です。保護者など、子どもの周りにいる大人が子どものことでイライラしたり、腹を立ててしまったりするときに激しく揺さぶってしまうようです。特に、子どもが泣きやまないときに、激しく揺さぶってしまった、というケースが過去の事例で多く挙げられています。
参考:子ども虐待による死亡事例等の検証について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198645.html
次ページ「どのくらいで乳幼児揺さぶられ症候群になるの?」

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