場面緘黙(選択性緘黙)の原因とは?子どもの緘黙はなぜ起こる?大人の場合は?について解説【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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場面緘黙(選択性緘黙)とは、たとえば家庭では問題なくおしゃべりができるのに、幼稚園や学校、公共の場など特定の場面で「話せない」状態をいいます。子どもだけではなく大人も場面緘黙の症状があらわれることもあります。場面緘黙にはどのような原因があるのでしょうか?その多くは「不安」から身体を守るメカニズムに起因しています。特定の場面で話せなくなってしまう原因を探っていきましょう。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

場面緘黙って?

場面緘黙(選択性緘黙)とは、発声器官には問題がなく、言語能力があると認められているにもかかわらず、特定の場面で話すことができなくなる症状のことをいいます。家庭などでは活発に話すことができるものの、学校などの公共の場では話せなくなることが多くみられます。

※以前は「選択性緘黙」という名称もありましたが、2018年に日本場面緘黙関連団体連合は、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)とICD(国際疾病分類)の和訳を『場面緘黙』に改定することを求め、『DSM-5-TR』では正式な診断名になりました。

子どもの場面緘黙は2~4歳で発症することが多いですが、小学校に入学するなど話す機会が増えて初めて表面化する場合もあります。
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場面緘黙とは?話さないのではなく、話せない…症状、相談先、接し方まとめ【医師監修】

場面緘黙の特徴とよくある誤解

場面緘黙とは、学校や公共の場所などの特定の場面で話せなくなる症状のことです。家庭では流暢に話すことができる場合も多いため、学校の先生から「お子さんは学校で話しません」と言われて、症状を初めて認識するケースもあります。
場面緘黙がある子どもは、自分の意思で話す場所を選んでいるのではなく、またわざと「話さない」わけでもありません。不安や緊張から、一定の状況におかれると、どうしても話すことができなくなってしまうのです。これは症状を理解するために、とても重要なポイントです。

場面緘黙は「時間が経過すれば自然と治る」と思われがちですが、大人になっても緘黙の症状が続いたり、大人になってから発症することもあります。大人の場面緘黙は、子どもの頃に発症し、それが継続ないし再発する場合がほとんどですが、子どもの頃の場面緘黙についてはっきりとした自覚症状がない場合もあります。
次から、場面緘黙の原因や治療について詳しく解説していきます。

場面緘黙の原因は?

場面緘黙の原因は単一ではなく、人によってさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。はっきりとしたメカニズムは分かっていませんが、育て方が原因ではなく、本人がもつ要因と環境要因が考えられています。

本人が持つ要因

場面緘黙のある人には、不安や緊張を感じやすい「抑制的な気質」を持つ人が多いとされています。また、社交不安や分離不安などの不安症を併せ持つケースもみられます。
さらに、ASD(自閉スペクトラム症)が背景にある場合もありますが、詳しくは次章「発達障害と場面緘黙」で解説します。

環境要因

場面緘黙は、個人だけでなく環境が大きく影響する問題です。「話す」という行為は相手がいて初めて成り立つものです。場面緘黙のある人が家庭では話せる一方で、特定の社会的状況で話せなくなるのは、そうした特定の状況が話しづらさを引き起こしていると考えられます。
緘黙症状に影響する環境因子として以下のようなものが挙げられます。

・作業量や作業内容の負荷
・環境の刺激(音、情報、臭いなど)
・見通しが立ちにくい状況
・教師や周囲の態度
・話さなくても済む状況

特に「話さなくても済む状況」とは、周囲が配慮しすぎることで本人が声を出さなくても生活できる環境が整ってしまうことを指します。配慮や支援は重要ですが、年齢や生活ステージに応じて、徐々に「話す必要がある状況」を作ることも大切です。
参考:厚生労働科学研究成果データベース|吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究「場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf

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