自傷行為とは?痛くても行う理由や精神障害との関係、具体的な止め方、周囲の適切な対応を解説します

自傷行為とは?痛くても行う理由や精神障害との関係、具体的な止め方、周囲の適切な対応を解説しますのタイトル画像

自傷行為は自らを死なない程度に傷つける行為です。その多くは、10代~20代に見られます。自傷行為はやめたくてもなかなかやめられません。その背景には脳内物質が分泌しているからかもしれません。この記事では、自傷行為と紛らわしい自傷行動、自殺行為との違いや、自傷行為の種類、理由、目的から精神障害との関係まで詳しく説明します。

発達障害のキホンのアイコン
発達障害のキホン
412382 View
目次
  • 自傷行為とは
  • なぜ自傷行為をするのか
  • 自傷行為のメカニズム
  • 自傷行為と精神障害の関係は?
  • 自傷行為はやめないとだめなのか
  • 自傷行為をやめるには
  • 精神科を受診をするかどうかの基準
  • 自傷行為を見つけたら?周囲が気をつけること
  • まとめ

自傷行為とは

自傷行為とは、ネガティブな気分を軽減する、人間関係のトラブルを解決する、ポジティブな気分になるといったことを期待して自分の体を意図的に傷つける行為です。

自傷行為の方法は人それぞれ異なります。具体的には次のようなものがあります。

・リストカット
・鉛筆や針を腕に刺す
・消しゴムで繰り返し皮膚をこすって、やけどをつくる
・火のついたたばこを皮膚に押し付ける
・自分を叩いたり、頭を壁にぶつけたりする
・薬を過剰に飲む
・治りかけた傷口をこする など

どれも死に至るレベルの傷がつくことはありませんが、周りからすると痛々しく見えます。

自傷行為と子どもの自傷行動との違い

自傷行為は、10代から20代の人がすることが多いと言われています。もっと低年齢で、頭を壁に打ちつけるなどの行動が見られる場合は、「自傷行為」ではなくてコミュニケーションの困難などからくる「自傷行動」である可能性があります。

コミュニケーションが困難な子どもが、親にかまってほしいことなどを伝える手段として自らを傷つけたり、感覚が鈍い子どもが感覚遊びとして頭をどこかにぶつけたりすることがあります。このような行動が自傷行動です。自傷行動は自閉症などの発達障害のある人や、知的障害のある人に見られる場合もあります。

自傷行為と自傷行動は、どちらも自分を傷つける点では共通ですが、その理由や対処法は異なるので注意が必要です。自傷行動に関しては関連記事を参照してください。
自傷行動とは?自閉症・知的障害のある人に見られる自傷行動の原因・対処法・相談先まとめのタイトル画像

関連記事

自傷行動とは?自閉症・知的障害のある人に見られる自傷行動の原因・対処法・相談先まとめ

自傷行為と自殺行動との違い

誤解されやすいのですが、自傷行為そのものは自殺するための行動ではありません。

自傷行為と自殺行動にはどのような違いがあるのでしょうか。自傷行為と自殺行動の背景には、どちらも精神的苦痛があると考えられていますが、この苦痛の性質に違いがあります。

自殺行動の要因となる苦痛は「もうなにをやってもだめだ」という絶望感や無力感から生じることが多いです。そして、自殺行動に至るような人は、「この苦痛はいかなる方法でも回避することができないものだ」と考えてしまいます。

そのため、自殺を考えている人は、「自殺」が今のつらい状況から解放される唯一の手段だと確信していることも珍しくありません。

自傷行為をする人は、精神的につらい時期とそうでない時期を繰り返しています。つらいときに、一時的につらくないようにするための手段が自傷行為なのです。

自傷行為を理解する上で注意しなくてはいけないことは、自殺とは目的が違うということなのです。

なぜ自傷行為をするのか

自傷行為を経験したことがない人は、リストカットをはじめとする自傷行為は周囲の関心を集めたり、周囲に自分の状況をアピールしたりするために行われるのだと考えがちです。

しかし、自傷行為は必ずしも周囲の人へのアピールのために行われているとは言えません。自傷行為の経験がある人の話を聞いていくと、自傷行為は一人でいるときに周りの人に気づかれないように注意して行われていることが少なくないことがわかります。

もし本当に自傷行為が周囲に向けて行われているなら、人の多いところでしたり、積極的に自傷行為をしていることを告白したりしていくはずです。

では、なぜ自傷行為をするのでしょうか。これまで研究・分析されて来た結果によると、自傷行為には次のような理由があるとされています。

◇不快感情の軽減のため
気分が落ち込んでいた時やストレスがたまってしまった時に、そのつらい感情から解放される手段として自傷行為を行うことがあります。

自傷が安定剤の役割を果たしていたり、ストレス解消の唯一の手段になっていたりと、自殺願望はなく、むしろ生きていくために行っていると述べる方も少なくありません。

これは本人が認識することの難しい「心の問題」を、痛みとして認識しやすい「身体の問題」に置き換えることで不快感情を軽減しているとも言えます。

◇自己懲罰的な自傷行為
自分自身を罰したいと考えて自傷行為をする人もいます。このような人は自分の理想や親の期待に対して現実が追いつかなかったときに、「どうしてこんなこともできないんだ」と考えてしまいがちです。

自傷行為の背景にある本人の心理として、周囲に悩みを打ち明けることが苦手で自分ひとりで抱え込んでしまったり、自己評価が低く自分が傷つくのは当たり前だと考えたりしていることもあります。

上記の理由ほど多くはありませんが、一部の人は周囲に自分が愛されているのか知りたかったり、自分がどれだけ絶望しているか伝えたかったり、仕返ししたりするために自傷行為をする場合もあるようです。

自傷行為の多くは「周囲に気づいてもらうため」にするのではなくて、なんとかしたいけれどもどうしようもなくて「一人で解決するため」にしているSOSだと理解するといいでしょう。

自傷行為のメカニズム

自傷行為をしている話を見たり聞いたりしたときに、どうしてわざわざ痛い思いをしてまでそんなことするのか不思議に思ったことはありませんか。

「痛み」を伴う行為によって脳内物質が変化するといわれています。「自傷行為をした時に不快感が軽減される」という一見逆説的な現象がなぜ起こるのか?そのメカニズムをみてみましょう。

ヒトには外傷を負ったり、過度な負荷が身体にかかったりしたときに、脳内で内因性オピオイドと呼ばれる物質を分泌して鎮痛効果を得る仕組みがあります。具体的には、エンケファリンやβエンドルフィンなどです。

例えば、マラソンのような長距離を走るとき、はじめのうちは苦しく感じますが、だんだんその苦痛が和らいでいき、最終的には高揚感に包まれることがあります。この現象はランナーズハイと呼ばれ、脳内でβエンドルフィンが分泌されることで引き起こされています。

ランナーズハイと同じように、自傷行為によっても脳内でこれらの物質が分泌されます。そのため、人によっては自傷行為で痛みをあまり感じません。それどころか精神的な安らぎを感じることもあるのです。

ここで注意しなければならないのが、自傷行為にも「慣れ」と「依存」があることです。例えば、リストカットをしている人でもだんだんと刺激に慣れてきて、頻度が増えたり、より深い傷をつけたりするようになる場合があります。

自傷行為をやめたくてもなかなかやめられない人は、タバコやアルコール依存のように、自傷行為によって脳内物質を分泌することに依存しているのかもしれません。

自傷行為と精神障害の関係は?

自傷行為をする子ども・若者に精神障害が多く認められることが知られています。また精神障害が原因となり、自傷行為が繰り返されることもあります。

これらの子ども・若者の精神障害としては、摂食障害と物質使用障害が多いです。摂食障害とは極度に食事を拒んだり(拒食)、逆に極端に大量の食事をとったり(過食)する状態で、場合によっては生命の危険に関わります。

物質使用障害は、アルコール依存症やたばこ依存症のように、あるものをやめたいと思っていても、使い続けてしまうような症状です。

他にも、気分の浮き沈みの激しい気分障害、過剰に不安や恐怖心を感じてしまう不安障害、社会のルールを守らないで行動してしまう行動障害、うつ病やADHD(注意欠如・多動性障害)などの並存が、自傷行為を行う子ども・若者の中にしばしば見られます。先天的な特性としてADHD傾向のある人が、その特性ゆえに周囲の人との関わりにつまづき、強いストレスを抱えている場合や、気分障害や不安障害などがあり冷静に物事を考えられない状態にある場合、自傷行為を行うリスクがより高まると考えられます。

また、昔は自傷行為は境界性パーソナリティ障害の症状の1つだと誤解されていました。しかし、境界性パーソナリティ障害と自傷行為には、いくつかの似た特徴がありますが、自傷行為をしたからといって必ずしも境界性パーソナリティ障害だということではありません。

ただし現在では、自傷行為が単体でなんらかの精神障害や疾患の症状として定義されてるわけではないことに注意が必要です。自傷行為をしているから必ず精神障害というわけではありませんし、逆に精神障害のある人が全員自傷行為をしているわけでもありません。
摂食障害(拒食症・過食症)とは?症状や治療法、関連のある心の病気などを詳しく解説のタイトル画像

関連記事

摂食障害(拒食症・過食症)とは?症状や治療法、関連のある心の病気などを詳しく解説

気分障害(うつ病・双極性障害)とは?「感情がコントロールできない」症状や原因、診断基準を説明しますのタイトル画像

関連記事

気分障害(うつ病・双極性障害)とは?「感情がコントロールできない」症状や原因、診断基準を説明します

うつ病(大うつ病性障害)とは?単なる気分の落ち込みとの違いは?症状や原因、発達障害との関わりまとめのタイトル画像

関連記事

うつ病(大うつ病性障害)とは?単なる気分の落ち込みとの違いは?症状や原因、発達障害との関わりまとめ

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめのタイトル画像

関連記事

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめ

境界性パーソナリティ障害とは?不安・衝動的になる原因・診断基準・治療・周りの人の対処法を紹介のタイトル画像

関連記事

境界性パーソナリティ障害とは?不安・衝動的になる原因・診断基準・治療・周りの人の対処法を紹介

自傷行為はやめないとだめなのか

自傷行為をする人の中には、自傷行為をすることで自分自身の身体は傷ついているかもしれないが、他人に迷惑をかけていないのだからやめなくてもいいと考えている人もいます。

精神科医の松本俊彦氏が中学や高校で薬物乱用防止講演を行い、その講演後にアンケートをすると次のような結果がでました。

自傷行為をしたことのない人が「薬物乱用は絶対にしない」などの感想を持ったのに対して、自傷行為をしたことのある人には「他人に迷惑をかけているわけではないのだから、やりたい人は勝手に薬物を使えばいい」という感想が多くみられたのです。
自傷行為は確かに、あまり他人に迷惑をかけてはいないのかもしれません。しかし自傷行為をすることで絶望感や不安から解放されるからといって、自傷行為をやめなくてもいいということではありません。

自傷行為は自殺の意図が含まれていない行為だとされています。しかし、ある程度自傷行為を繰り返した人の場合には、「消えてしまいたい」や「いなくなりたい」という自殺に繋がってしまう感情を抱くことも珍しくありません。

もし自傷行為が不安への臨時的な対処法になったとしても、絶望感や不安に駆られる根本的な原因には対処することができないのです。自傷行為がエスカレートして自殺に発展するリスクも考慮すると、自傷行為を放置するのではなく、背後にある根本的な原因にアプローチし、本人が自傷行為をしなくても済むための適切な支援を行っていくことが重要であると言えるでしょう。

自傷行為をやめるには

当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

発達障害のキホンを知る

発達障害のキホンを知る

この記事を書いた人

発達障害のキホン さんが書いた記事

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?原因、症状、治療、PTSDに似た発達障害の症状まで解説のタイトル画像

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?原因、症状、治療、PTSDに似た発達障害の症状まで解説

PTSDは、つらいできごとがトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。発症すると、そのできごとに関わる人・場所を過度に避けたり、考...
発達障害のこと
304456 view
2018/12/09 更新
子どもの癇癪(かんしゃく)とは?原因、発達障害との関連、癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめのタイトル画像

子どもの癇癪(かんしゃく)とは?原因、発達障害との関連、癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめ

大声で泣き叫んだり、暴れたりする子どもに困っている…。一旦気持ちが爆発するとなかなか収まらない癇癪ですが、子どもが癇癪を起こす背景には必ず...
発達障害のこと
1278802 view
2018/12/07 更新
難病の軽症高額該当で、医療費助成の対象外でも支援が受けられる?制度該当条件などを詳しく解説します!のタイトル画像

難病の軽症高額該当で、医療費助成の対象外でも支援が受けられる?制度該当条件などを詳しく解説します!

難病法には重症度基準が設けられ、病状の程度が一定以上の人は、医療費助成の対象となります。しかし、指定難病の診断を受けていても、治療により症...
身のまわりのこと
10737 view
2018/12/04 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。