ゲルストマン症候群とは?左右がわからない、文字が書けない...詳しい症状や治療法をまとめました

2017/07/14 更新
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ゲルストマン症候群とは感覚器におこる障害で、失書・失算・左右識別障害・手指失認などの症状が起こります。脳の一部が損傷することが原因と考えられています。症状が似ているため、アルツハイマーや発達障害と区別がつきにくいとされています。この記事では、ゲルストマン症候群の詳しい症状、治療法、似ている病気との違いを説明していきます。

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目次

ゲルストマン症候群とは

ゲルストマン症候群とは、失書・失算・左右識別障害・手指失認などの症状が出る脳機能障害です。4つの症状すべてが出る人は少なく、大体の人は部分的な発症となります。

ゲルストマン症候群は、脳の頭頂葉などの領域の損傷が原因とされており、脳卒中や交通事故で脳が傷ついた後に発症することが多い障害です。大人に発症することが多く、原因や症状が似ているため、アルツハイマー症候群との区別がつきにくいと言われています。

子どもに発症する場合は発達性ゲルストマン症候群と呼ばれますが、その原因はよくわかっていません。文字の読み書きや計算ができず、学校生活についていけなくなった際に見つかることが多いです。症状が似ているため発達障害(特に学習障害)との見分けがつきにくく、対処法を決める際には医療機関での詳しい検査が必要となります。

身体的な健康問題にかかわる病気ではありませんが、日常生活の基本的な動作に大きな不便が起きる場合もあります。それでも医療機関や家族の協力を得れば、生活の質を上げることができます。

ゲルストマン症候群の症状

ゲルストマン症候群の4つの症状について、より詳しく説明していきます。ゲルストマン症候群は、その他の脳機能の不調が併発する可能性があり、ここで出てくる症状以外の異変が見られる場合もあります。

・失書
失書とは、文字を書くこと・文章を組み立てることに障害があることを言います。例えば漢字が思い出せない、文字を書くことができない、それぞれの言葉にイメージを結び付けられず文の意味を理解できないといった症状があります。生活上では、相手の話をよく理解できない、思っていることを文字に起こせないなどの困りごとが生じます。

・失算
失算とは、基礎的な計算能力が低下することです。数の大小関係や「1、10、100...の順に大きい数を表す」という順序性の把握が苦手になります。数字の概念の理解が難しくなることで、日常的に数の計算が難しくなる以外にも、時計が読めなくなるという困りごとも生じます。

・左右識別障害
左右識別障害(左右誤認、左右失認とも言う)とは、自分や他人の体の左右の違いを認知できず、空間的な位置関係の把握が難しくなることを言います。集団行動の際に指示を理解することが難しかったり、ネクタイをしめたり絵を書いたりすることが苦手になるといった困りごとが生じます。

・手指失認
手指失認とは、手指に関する言語・視覚・触覚の刺激が働かなくなることです。例えば、目を閉じた状態で誰かに指を触られ「これは何指?」と聞かれても認知できなかったり、「親指を出してください」と言われても理解できなかったりすることがあります。指を上手に操作できないため、爪切りや料理をするなどの動作が難しくなります。

ゲルストマン症候群かな?と思ったら...

気になる症状がある場合は、医療機関に相談してみましょう。ゲルストマン症候群については、大人は脳外科や脳神経外科、子どもは小児感覚器科などが担当になります。次のような検査を用いて診断をします。

・脳の異変の調査
脳に異変が生じていないか、脳を写し取って調べます。この場合に用いられる検査はCTスキャンやMRIがあり、担当する医師がそのときの状況に応じてどの方法を利用するか決定します。

・手指認知テスト
手指認知テストとは、手を触られ、どの指を触られているかを答える検査です。目を開けた状態や閉じた状態など、さまざまな状態のもと検査を行い、手指に関するどの感覚に異常があるのかを調べます。

・左右認知テスト
左右認知テストは、自分・他者の体に対して「右手を挙げてください」という単純命令と「右手で左耳を触ってください」という二重命令によって左右認知の程度を調べます。

・読み書きテスト
読み書きテストでは、「指示に従って書く」「音声を聞いて書きとる」「漢字単語の書きとり、仮名単語の書き取り」「五十音・数字を書きだす」「写字」「自分の考えを書きだす」などの方法で読み書き能力を測ります。

・数の認知・操作・計算テスト
数の認知・操作・計算テストでは、足し算・引き算などの基礎的な計算問題や、月・日・年・時刻などの数的情報を認識すること、数字を正しい順番で数えることなどを通して数字を扱う能力を測ります。

これらの方法の以外にも、さまざまな検査があり、調べたい症状によっていくつかの検査を組み合わせて行います。

ゲルストマン症候群の検査においては「この指標がどれくらいだと確定」といった明確な指標はありません。そのため、医療機関ごとにその評価基準が変わる可能性があるのが現状です。診断がつくかどうかよりも「どういった動作にどのような困りごとがあるのか」を確かめてリハビリに臨めるようにするとよいでしょう。

ゲルストマン症候群とアルツハイマー、発達障害との違いは?

ゲルストマン症候群が疑われる場合に、区別がつきにくい疾患があります。アルツハイマー型認知症と発達障害がそれにあたり、症状や病巣が似ているため医療機関で詳しく検査をする必要があります。症状が似ていても対処法はそれぞれ違うため、見分けた上で適切な処置を考えられるといいでしょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマーは脳に様々な問題が生じ、記憶力の低下や被害妄想などの症状が起こる病気です。

・具体的な症状:判断力の低下、発話困難、記憶力の低下、「誰かが私の物を盗んだ!」というような被害妄想などがあります。

・原因:脳のニューロンの機能低下、神経伝達物質の減少、ホルモンバランスの乱れなど、様々な要因があります。 

・対処法:アルツハイマーは明確な治療法が見つかっておらず、介護が必要となる場合があります。しかし、薬を飲むことで症状が軽減した例もあります。

発達障害

発達障害とは、先天的な脳機能の発達の凸凹と、その人が過ごす周りの環境とのミスマッチから、社会生活に困難が生じる障害です。ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害(LD)といった種類があり、ゲルストマン症候群は、特に学習障害と見分けがつきにくいとされています。

・具体的な症状:集中力の欠如、学習の困難、落ち着きがない、癇癪を起こす

・原因:脳の発達の特性と言われていますが、詳しいことはわかっていません。

・治療法:現在のところ根本的に治療する方法はありません。環境調整や周りの接し方、スキルトレーニングなどで困りごとが緩和される場合があります。または症状を緩和するための投薬が行われる場合があります。
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なぜ見分けが難しいのか?

ゲルストマン症候群・アルツハイマー型認知症・発達障害の症状は似ている点があるため、見分けをつけることが難しいとされています。

3つの疾患とも、脳の機能に異常が生じて起こる病気のため、判断が難しくなる場合があります。

また、その症状も似ています。ゲルストマン症候群の4つの症状は、アルツハイマー型認知症での服を着ることが難しくなる「着衣失行」という症状や、発達障害での計算、文字を書くこと、手先を使う動きが苦手になる症状によく似ています。

見分け方はあるの?

原因や症状が似ていたとしても、3章で挙げたような検査をしていくと違いを見つけることができます。問診や検査、脳のどの部分に異変が生じているのかなどを詳しく調べることで判別していきます。

疑わしい症状が出たけれども、どの病気に当てはまるかわからない場合は、専門家に相談し検査を受けてみることをおすすめします。

ゲルストマン症候群の治療法とリハビリ方法は?

ゲルストマン症候群は治療法が見つかっていませんが、時が経つにつれて症状が和らいでいくと言われています。自然の回復を待つ以外にもリハビリによって日常で必要な動作ができるようにもなります。リハビリを希望する場合は、医療機関のリハビリテーション科に相談するとよいでしょう。ゲルストマン症候群のリハビリの一例を紹介します。

作業療法

作業療法では、検査で確認できた症状の中で、日常生活での困り度合いが大きいものを選び、具体的な行動目標を設定します。例えば、「箸を使ってご飯が食べられるようにする」「自分の名前を自分で書けるようにする」などです。目標を設定した後は、作業形式の練習を繰り返します。

・文字を書く
まず、ひらがなを書く練習から始めます。練習する文字を要素に分けます。そしてそれをなぞったり、模写をして慣れたら見本無しで書く練習をします。ひらがなが書けるようになったら、漢字も同じ過程に沿って練習します。

・数字を理解する
「1の次は2、3の次は4」「4から1つ減ったら3になる」などの数の変化をイメージしやすくなるための練習をします。例えば、積み木やおはじきを使って数の変化を視覚でとらえられるようにします。

・その他の日常動作
日常動作の練習をする際には、まず動作を単純化することから始めます。その後、簡単な動きから段階的に練習をしていきます。例えば、爪を切る練習では、安全な詰め切りの持ち方を覚えるために洗濯バサミをつかんで動かすことから始めたり、はさみで物を切る練習をする際にはまずはさみを平面に置いた状態で、穴に指を入れ、動かしてみることから始めます。

日常動作の練習のときには、自助具(物を掴みやすくするグリップなど)を使う、いきなり空間操作ではなく、平面上で動かす練習をする、動きを単純化する、ということがポイントです。

訓練による回復は、退院後も継続しないと効果が持続しないと言われています。なので、家族がサポートをしながら動作の練習を続けることをおすすめします。

その他の療法

他には脳に高圧の酸素を注入する高圧酸素療法や、計算機を使うこと、ワープロを使って文章入力をする練習なども行います。計算機やワープロといったツールを使うことで、文章を組み立てることや、計算をすることの練習を負荷が少ない状態ですることができます。

まとめ

ゲルストマン症候群とは、脳の損傷や病変により、失語・失算・手指失認・左右認識障害などが現れます。命にかかわる病気ではなく、詳しい原因や治療法が発見されていませんが、症状の組み合わせによっては日常生活に大きな支障をきたします。

少しでも生活上の不自由を解消するためには、作業療法や高圧酸素療法などを受けることがおすすめです。診断基準や療法が明確に統一されておらず、情報収集が難しいゲルストマン症候群ですが、専門家と相談しながら療法を続けていくことで困りごとの改善につながるでしょう。

ゲルストマン症候群のような脳の分野の異変が原因となっている病気は、近くの脳分野が関係する病気を併発することも珍しくありません。そのため、専門家に症状や不自由を感じる点を相談しながら、自分に合った対処法を見つけられるとよいですね。
うちの子は字が書けない (発達性読み書き障害の息子がいます)
千葉リョウコ,‎ 宇野彰
ポプラ社
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