ゲルストマン症候群とアルツハイマー、発達障害との違いは?

ゲルストマン症候群が疑われる場合に、区別がつきにくい疾患があります。アルツハイマー型認知症と発達障害がそれにあたり、症状や病巣が似ているため医療機関で詳しく検査をする必要があります。症状が似ていても対処法はそれぞれ違うため、見分けた上で適切な処置を考えられるといいでしょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマーは脳に様々な問題が生じ、記憶力の低下や被害妄想などの症状が起こる病気です。

・具体的な症状:判断力の低下、発話困難、記憶力の低下、「誰かが私の物を盗んだ!」というような被害妄想などがあります。

・原因:脳のニューロンの機能低下、神経伝達物質の減少、ホルモンバランスの乱れなど、様々な要因があります。 

・対処法:アルツハイマーは明確な治療法が見つかっておらず、介護が必要となる場合があります。しかし、薬を飲むことで症状が軽減した例もあります。
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発達障害

発達障害とは、先天的な脳機能の発達の凸凹と、その人が過ごす周りの環境とのミスマッチから、社会生活に困難が生じる障害です。ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害(LD)といった種類があり、ゲルストマン症候群は、特に学習障害と見分けがつきにくいとされています。

・具体的な症状:集中力の欠如、学習の困難、落ち着きがない、癇癪を起こす

・原因:脳の発達の特性と言われていますが、詳しいことはわかっていません。

・治療法:現在のところ根本的に治療する方法はありません。環境調整や周りの接し方、スキルトレーニングなどで困りごとが緩和される場合があります。または症状を緩和するための投薬が行われる場合があります。
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発達障害とは?特徴・症状・分類や診断方法について【専門家監修】

なぜ見分けが難しいのか?

ゲルストマン症候群・アルツハイマー型認知症・発達障害の症状は似ている点があるため、見分けをつけることが難しいとされています。

3つの疾患とも、脳の機能に異常が生じて起こる病気のため、判断が難しくなる場合があります。

また、その症状も似ています。ゲルストマン症候群の4つの症状は、アルツハイマー型認知症での服を着ることが難しくなる「着衣失行」という症状や、発達障害での計算、文字を書くこと、手先を使う動きが苦手になる症状によく似ています。

見分け方はあるの?

原因や症状が似ていたとしても、3章で挙げたような検査をしていくと違いを見つけることができます。問診や検査、脳のどの部分に異変が生じているのかなどを詳しく調べることで判別していきます。

疑わしい症状が出たけれども、どの病気に当てはまるかわからない場合は、専門家に相談し検査を受けてみることをおすすめします。

ゲルストマン症候群の治療法とリハビリ方法は?

ゲルストマン症候群は治療法が見つかっていませんが、時が経つにつれて症状が和らいでいくと言われています。自然の回復を待つ以外にもリハビリによって日常で必要な動作ができるようにもなります。リハビリを希望する場合は、医療機関のリハビリテーション科に相談するとよいでしょう。ゲルストマン症候群のリハビリの一例を紹介します。

作業療法

作業療法では、検査で確認できた症状の中で、日常生活での困り度合いが大きいものを選び、具体的な行動目標を設定します。例えば、「箸を使ってご飯が食べられるようにする」「自分の名前を自分で書けるようにする」などです。目標を設定した後は、作業形式の練習を繰り返します。

・文字を書く
まず、ひらがなを書く練習から始めます。練習する文字を要素に分けます。そしてそれをなぞったり、模写をして慣れたら見本無しで書く練習をします。ひらがなが書けるようになったら、漢字も同じ過程に沿って練習します。

・数字を理解する
「1の次は2、3の次は4」「4から1つ減ったら3になる」などの数の変化をイメージしやすくなるための練習をします。例えば、積み木やおはじきを使って数の変化を視覚でとらえられるようにします。

・その他の日常動作
日常動作の練習をする際には、まず動作を単純化することから始めます。その後、簡単な動きから段階的に練習をしていきます。例えば、爪を切る練習では、安全な詰め切りの持ち方を覚えるために洗濯バサミをつかんで動かすことから始めたり、はさみで物を切る練習をする際にはまずはさみを平面に置いた状態で、穴に指を入れ、動かしてみることから始めます。

日常動作の練習のときには、自助具(物を掴みやすくするグリップなど)を使う、いきなり空間操作ではなく、平面上で動かす練習をする、動きを単純化する、ということがポイントです。

訓練による回復は、退院後も継続しないと効果が持続しないと言われています。なので、家族がサポートをしながら動作の練習を続けることをおすすめします。

その他の療法

他には脳に高圧の酸素を注入する高圧酸素療法や、計算機を使うこと、ワープロを使って文章入力をする練習なども行います。計算機やワープロといったツールを使うことで、文章を組み立てることや、計算をすることの練習を負荷が少ない状態ですることができます。

まとめ

ゲルストマン症候群とは、脳の損傷や病変により、失語・失算・手指失認・左右認識障害などが現れます。命にかかわる病気ではなく、詳しい原因や治療法が発見されていませんが、症状の組み合わせによっては日常生活に大きな支障をきたします。

少しでも生活上の不自由を解消するためには、作業療法や高圧酸素療法などを受けることがおすすめです。診断基準や療法が明確に統一されておらず、情報収集が難しいゲルストマン症候群ですが、専門家と相談しながら療法を続けていくことで困りごとの改善につながるでしょう。

ゲルストマン症候群のような脳の分野の異変が原因となっている病気は、近くの脳分野が関係する病気を併発することも珍しくありません。そのため、専門家に症状や不自由を感じる点を相談しながら、自分に合った対処法を見つけられるとよいですね。
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