赤ちゃんと目が合わない原因は?ASD(自閉スペクトラム症)との関係や視力発達【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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赤ちゃんをあやす時や授乳をする時など、赤ちゃんと目が合わないと感じると、疾患や発達障害、愛着形成への不安を感じてしまうことがあるかもしれません。この記事では赤ちゃんと目が合わない原因と目の病気・ASD(自閉スペクトラム症)との関係、目が合わなくて不安に感じた時の対処法をご紹介します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

赤ちゃんと目が合わない原因は?ASD(自閉スペクトラム症)との関係って?

赤ちゃんと目が合わない時、その原因としてどのようなことが考えられるのでしょうか。

育児本やWebサイトで調べてみると、「目の疾患」や「ASD(自閉スペクトラム症)」という言葉が目についたという人もいるかもしれません。でも、赤ちゃんと目が合わないのは、赤ちゃんの成長の過程や個人差が原因となっていることが多いと言われています。例えば、次のような原因が考えられます。まずはそれらに当てはまる様子はないか、赤ちゃんの様子をよく見てみましょう。

赤ちゃんと目が合わない原因で考えられるもの

赤ちゃんと目が合わない原因として考えられることを紹介します。

・他のことに興味を持っている
・個性や性格、発達のペースの違い
・感覚の違い
・目や視力の異常

赤ちゃんにとって身の回りの物はすべて新鮮であり、興味や関心の対象です。保護者がそばであやしてくれていても、他に何か気になるものを見つけると、そちらへ興味の対象が移って目線も移動することが考えられます。

また、生まれたばかりの赤ちゃん一人ひとりは性格も異なり、じっと凝視されるのが苦手な赤ちゃんもいます。

中には視覚や聴覚が敏感な赤ちゃんもいて、急に近づかれたり、大きいと感じる声で話しかけられたりするととっさに顔をそむけてしまうことも考えられます。
参考:発達の目安が気になります……|公益財団法人母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ
https://www.mcfh.or.jp/jouhou/sodachi/kyokusen_3.html
公益財団法人母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ
https://www.mcfh.or.jp/
ここまでは赤ちゃん個人差などですが、目が合わない背景に疾患や障害がある場合も考えられます。

目の疾患がある赤ちゃんは、視線が定まらなかったりきょろきょろしたりする様子が多く見られ、保護者と目が合うことが少ない場合があります。赤ちゃんによく現れる目に関する異常には、斜視・眼振・弱視などが挙げられます。これらの詳しい症状や治療方法に関しては「目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?」の章で解説します。

また、発達障害の一つであるASD(自閉スペクトラム症)には、「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚の偏りがある」という特性があり、そのことによって目が合わないということも考えられます。しかし、乳児の頃は目が合わないという兆候が見られないことも多くあります。ASD(自閉スペクトラム症)と目が合わないことの関係は次の章で詳しく紹介します。

自閉スペクトラム症との関係って?

この章では、目が合わない赤ちゃんとASD(自閉スペクトラム症)がどのような関係にあるのかについて詳しく紹介します。
■ASD(自閉スペクトラム症)とは?
ASD(自閉スペクトラム症)は、主に「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚の偏りがある」という特性があります。
ASD(自閉スペクトラム症)の診断がつくのはお子さんの状態によっても違いはありますが、早くても3歳ごろと言われています。このくらいの年齢になると、以下のようなASD(自閉スペクトラム症)の特徴が目立ちやすくなります。

◇周囲にあまり興味を持たない傾向がある
例えば、生活の中で次のような様子が見られます。

・視線を合わせようとしない
・他の子どもに興味をもたない
・名前を呼んでも振り返らない
・指さしをして興味を伝えることをしない など

◇コミュニケーションを取るのが困難
以下のように、会話や人と関わることが難しいと感じていることがあります。

・言葉の遅れや、オウム返しが見られる
・一方的に自分の言いたいことだけを話す
・質問に対してうまく答えられない
・ごっこ遊びなど、集団での遊びにあまり興味を示さない など

◇強いこだわりを持つ
日常生活での強いこだわりとは、例えばこのようなことを指します。

・興味を持つことに対して、同じ質問を何度もする
・ものごとの手順が変わると混乱してしまう
・視覚・触覚・聴覚・味覚・嗅覚に対して過敏、鈍麻がある など
■どの程度目が合わないと気にすべき?
どの程度目が合わないと受診や相談に行ったらいいのかと、程度が気になる保護者もいると思います。

ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんには生後1年程度から視線処理に特徴が表れ、顔、特に目を見ることが少ないという傾向が見られます。さらに、見るだけでなく自分が見られることにも反応が乏しさや、保護者が目線を向けた先に興味を示すことも少ないという傾向もあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている子どもの保護者が、その子どもが赤ちゃんだった時を振り返ってみて「そういえばあまり目が合わなかったな…」と思い起こすことはあるようです。しかし、これらはあくまで傾向で単に「赤ちゃんと目が合わない」ということだけでASD(自閉スペクトラム症)と判断はできません。赤ちゃんの様子と診断基準を照らし合わせ、総合的に判断されます。

赤ちゃんにこのような気になる様子があると保護者としては心配な気持ちを抱くと思いますが、目が合わない赤ちゃんに対しては、「それだけでASD(自閉スペクトラム症)があるとは言えない」「赤ちゃんの時点でASD(自閉スペクトラム症)があると明確に診断できる場合は少ない」という2点を押さえておきましょう。

そのうえで、それでも不安が残る場合や、目が合わないということに加えて他にも気になる様子が見られる場合は、かかりつけの小児科や近くの保健センター、子育て支援センターなどで詳しく相談するとよいでしょう。

一度専門家に赤ちゃんがどのような様子か話してみるだけでも不安や困りごとが解消されることがありますし、ASD(自閉スペクトラム症)に関する、より詳しい情報も得られることもあります。

赤ちゃんの視力発達のメカニズム――生後1ヶ月から1歳までの変化

赤ちゃんは生まれた直後からものがはっきり見えているわけではありません。生まれてから1歳までの間、どのように視力が発達していくのかについて説明します。

生後直後~生後2ヶ月

生まれてすぐの赤ちゃんの視力は0.01~0.02で、明るいか暗いかが分かる程度と言われています。生後1ヶ月~2ヶ月ごろでは、形や色を識別できるようになり保護者や・おもちゃなどの動きを目で追う「追視」が見られるようになります。

生後3ヶ月~生後6ヶ月

生後3ヶ月過ぎから生後6ヶ月頃は急激に視力発達する時期です。生後3ヶ月では視力が0.1くらいになり、人や物をじっと見つめることが増えると言われています。ただ、まだ視線が定まらないことも多く見られ、それが生後6ヶ月ごろになるとどこを見るかという視線も定まってきます。

生後7ヶ月~1歳

生後7ヶ月ごろには、奥行や距離感も見て捉えられるようになっていきます。1歳にもなると視力は0.2ほどまで伸び、より細かいものも捉えることが可能になります。それゆえに探索活動が活発になり、行動の幅も広がっていきます。

生後1ヶ月から3歳ごろにかけては、特に視覚の発達が盛んな時期とされています。視力の発達自体は8歳くらいまでに成人と同じレベルに達します。視力が発達するこの時期に、両目で人や物をしっかりと見ているかどうかはもちろん、何か異変に気づいたらすぐに対応することが重要です。

目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?

先ほど、赤ちゃんと目が合わない場合、目の病気や視力の異常の可能性もあると説明しました。

赤ちゃんの目や視力の病気についてここでは以下を紹介します。
・斜視
・弱視
・眼振(がんしん)
・白内障
・緑内障
・網膜芽細胞腫

斜視

斜視とは、片目は正面を向いていても、もう片方の目が内側・外側・上側・下側など違う方向を見てしまっている状態を指します。斜視は子どもの約2%に見られる小児眼科の代表的な病気で、眼鏡などの矯正器具で治るものもあれば、手術による治療が必要なものもあります。

片方だけ目が合うのに、もう片方は違う方向を向いていることが多く見られると、斜視の可能性があります。
斜視とは?手術で治療できるの?原因や発達障害との関連も解説しますのタイトル画像

斜視とは?手術で治療できるの?原因や発達障害との関連も解説します

弱視

弱視とは、先ほど紹介した視力の発達する期間に、目をうまく使えなかったために視力が悪い状態のまま発達が止まってしまうことを言います。強い遠視や乱視が両目に見られる場合や、片目だけに遠視や乱視、斜視があるために視力が発達しない場合に弱視は起こりやすいと言われています。

弱視は早期に適切な治療や矯正(眼鏡着用など)をすることによって、治る可能性は高まります。乳幼児健診の際に気になる点がないか専門家に診てもらうとよいでしょう。
参考:社団法人日本眼科医会 3歳児眼科健診のすすめ
https://www.gankaikai.or.jp/info/20120115_color.pdf
公益財団法人 日本眼科医会 子どもの弱視・斜視-6.斜視の原因
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/06.html

眼振(がんしん)

眼振とは、本人の意思にかかわらず眼球が痙攣するように動いてしまう疾患です。眼球の動きの特徴としては、水平に動く、垂直に動く、回転するという特徴があります。原因として先天的な眼振をはじめ、脳や神経の異常で起こるものなど後天的なものがあります。

先天的な眼振では弱視や斜視を伴うことがあり、後天的な場合はめまいや脳梗塞などの脳、目や耳の病気から生じることがあると言われています。
眼振・眼球振盪(がんきゅうしんとう)とは?種類や原因、症状から治療方法まで詳しく解説します!のタイトル画像

眼振・眼球振盪(がんきゅうしんとう)とは?種類や原因、症状から治療方法まで詳しく解説します!

白内障

白内障とは、目の中にある水晶体が何らかの原因によって濁ってしまう疾患のことです。加齢により生じることが多いと言われていますが、小児白内障と言って子どもに発症することもあります。原因がはっきりしない突発性のものや、家系に白内障の方がいる場合の遺伝性のもの、ダウン症などの全身疾患に伴うものなどいくつかの種類があり、突発性では片目、遺伝性や全身疾患に伴うもは両目に生じることが多いと言われています。

治療方法としては現在では手術が唯一の方法となっていますが、手術後はコンタクトレンズやメガネなどが必要になるため、小児白内障の場合はさまざまなことを考慮しながら手術するか否かを決めていきます。

緑内障

緑内障とは、黒目と白目の境目である隅角(ぐうがく)という部分に異常が生じ、視野が狭くなるという疾患です。子どもの場合は出産後すぐに発症する原発先天緑内障、軽度の隅角の異常で発症が遅れる若年開放隅角緑内障、全身疾患や眼の形成異常に関連して発症する続発小児緑内障という種類があります。

主な症状としては、涙が多くなる、光を眩しく感じる、瞼がけいれんする、黒目が白くなる、黒目が大きくなるなどが見られます。治療として主に手術を行い眼圧を下げていきます。一度で下がらない場合には、数度の手術が必要になることもあります。

網膜芽細胞腫

膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)とは、網膜内に生じる悪性腫瘍のことです。乳幼児に多く、1,7000人に一人の割合で発症するとされています。

猫目現象と言って、瞳孔内に入った光が腫瘍によって白く輝くように見える現象によって気づかれることが多いと言われています。症状は片目だけに生じることが多いですが、両目ともに生じることもあります。早期に気づいて治療を行えば治る可能性が高い疾患です。

こんな症状が出たら目の病気かも?

紹介したような目に関する病気を赤ちゃんが発症している場合、次のような特徴が見られることがあります。

・瞳が白や黄緑色に見えることがある
・目が揺れることがある
・追視が見られない
・片目だけ上下左右に寄っていることがある
・片目を順番にふさいでみると、一方の目だけ嫌がったり、顔を背けたりする
 など

赤ちゃんと目が合わないな?と思ったら、赤ちゃんの目や目の動きを観察し、何か異常がないか見てみることが大切です。

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