眼振・眼球振盪(がんきゅうしんとう)とは?種類や原因、症状から治療方法まで詳しく解説します!

2017/04/28 更新
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眼振とは、知らず知らずのうちに目が動いてしまう疾患です。自覚症状はなく、子どもの場合は特に第三者が違和感に気づくことが重要になってきます。この記事では、どういった様子が見られたら眼振の疑いがあるのか?そもそも眼振はどんな疾患で、治療法があるのか、また他の疾病との関連性はあるのかについてもご紹介します。

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目が勝手に動く…眼振(がんしん)とは?

眼球振盪(がんきゅうしんとう)とは、以下の3つの条件を満たしている眼球の動きのことです。

・動き方に規則性がある
・周期性がある
・本人が意図しているわけではない


また眼球振盪は一般的に略して、眼振(がんしん)と呼ばれています。

眼振と聞いて、なじみのない人が多いとは思いますが、実は健康な人も含めてすべての人が日常生活のなかで眼振を行っています。

例えば、電車に乗っているときに、目の前を次々と通り過ぎていく建物を見ようとすると、動くものを追跡するゆっくりした動きと、次の建物に視線をずらすためのはやい動きが交互に行われます。

このように、日常生活で目のゆっくりした動きとはやい動きが交互に起こっている場合も眼振の一つだと言えます。

他にも、ぐるぐると回ったときや、急に立ち上がったときなどの場面でも眼振は起こっています。

こうした、日常生活のなかで起こりうる特に困りごとのない眼振を生理的眼振といい、困りごとのある眼振を病的眼振といいます。

病的眼振はさらに、先天性の眼振後天性の眼振の2種類に分類できます。

眼振の患者さんは、例えば、視力の低下が伴ったり、「眼球が動く」という見た目が目立つことから、将来のことや他人とのかかわりに対して不安を感じたりして困っています。

この記事では、病的眼振を中心に扱っていき、その要因や症状、治療法などを紹介していきます。

眼振による眼球運動の種類

眼振とひとくくりに言っても、さまざまな眼球の動き方があるため、眼球の動き方によって眼振は分類されています。

具体的には、眼球が動く方向・眼振特有の動きである緩徐相(かんじょそう)の有無・眼球が動く頻度・眼球がどれくらい揺れるかなどによって分類されます。

ここでは、眼球が動く方向と緩徐相について詳しく紹介しています。

眼球が動く方向

眼球が動く方向は、おおまかに水平方向・垂直方向・回旋性の3種類に分けることができます。

水平方向は右や左に、垂直方向は上下に眼球が動きます。回旋性というのは、眼球の位置は変わりませんがその場で回転します。ペットボトルのふたを閉めるときの、キャップのように眼球が動くとイメージするとわかりやすいかもしれません。

ですが、眼球の動く方向は、水平方向と回旋性が合わさっていることもあり、きれいに3つに分けられるということではないので注意が必要です。

眼球に特徴的な緩徐相がある

眼球には、緩徐相と呼ばれる特徴的な動きがあり、この動きがあるかないかで律動眼振振子眼振の2種類の眼振に分類されます。

緩徐相は、眼球のゆっくりとした動きのことです。ゆっくりとした動き以外にすばやく眼球が動く急速相もありますが、急速相は緩徐相によってできたズレをなくすために生じます。よって眼振で重要に考えられているのは、緩徐相の方です。

緩徐相と急速相の目の動きは、イメージとしては「仕事中や勉強中など椅子に座っているときにうっかり寝てしまうとき」に似ています。うたた寝の際、ゆっくり頭が下がっていき(緩徐相)、突然目が覚めて元の姿勢に戻った(急速相)ような動線を描いて、眼球が動くのです。

◇律動眼振
律動眼振は、上述の緩徐相と急速相が区別されて現れる眼振のことを言います。
律動眼振の中でも、ゆっくりとした眼球の動きの速度が一定なのか、それとも少しずつ速くなったり、遅くなったりするのかでさらに分類されることもあります。

◇振子様眼振
振子様眼振は、緩徐相と急速相の区別がつかず、眼球が往復運動をするときに、往路と復路の揺れ方が等しい眼振のことを指します。

このように眼振は、いろいろな観点から分類することができますが、詳細な分類ができないケースも多くあります。

先天性の眼振が発症する要因は?

眼振が発症する要因は遺伝によるものもあるとされていますが、細かい原因やメカニズムはまだ判明していないものも多く見られます。

先天性の眼振は、ヒトがものをしっかりと見るために必要な3つの要素のうちのどこかに問題があると発症します。次の3つのうちいずれかまたはいくつかに異常が見られると、眼振の症状が起こりえます。

・固視
固視とは、じーっとなにかを見ることです。「見たいものを眼球の中心に置いておけるかどうか」と言い換えることもできます。

ヒトの眼は無意識のうちに常に少し動いていたり、視線をうつすときに一直線ではなく微妙にぶれながらうつしたりしています。このような眼の動きのなかで、見たいものから視線が外れてしまうような動きを抑制することも固視するためには必要です。

・固視の継続
1度、見たいものを眼球の中心にいれることができても、その状態を維持できなければものを見ることはできません。眼と脳をつないでいる中枢神経のはたらきがうまくいかなかったり、眼の周りの筋肉が麻痺してしまったりすると維持することが困難になります。

・正常な前庭眼反射
前庭眼反射とは、頭の位置が変わっても、それにあわせて眼の位置を調整する仕組みのことです。例えば、目の前にあるモノをじーっと見ながら、少し首を回してみてください。もし眼の位置が調整されなければ、モノから視点がずれるはずですが、前庭眼反射によってモノを見ながら首を回せるのです。

先天性の眼振の特徴

先天性の眼振は、生後まもなく発見されることが多いですが、軽度な眼振の場合にたまに成人になるまで気づかず、大人になってから眼科検診等で見つかることがあります。

先天性の眼振には、以下のような特徴が見られます。
・両眼性である。
・振れ幅は左目、右目で差が見られない。
・眼振はじっと見つめようとすると目立つようになる。
・周期性後退眼振を除いて、視界が揺れたりめまいを起こしたりしない。
・目を閉じたり、暗いところにいくと眼振の症状が軽くなる。
・両目を内側に寄せる(=輻湊)と眼振の症状が軽くなる。
・頭位異常や異常な頭部運動が多くみられる。
・視力が悪く、乱視を合併しやすい。
・静止位(=眼振の症状が軽くなる視線方向(null point))があることが多い。

先天性の眼振は、律動眼振、振子眼振、周期性交代眼振や新生児点頭痙攣(けいれん)などの種類があります。

律動眼振と振子眼振は、先天性の眼振のなかで、緩徐相があるかないかで分けられる眼振です。詳しくは先の章で紹介しましたので、以下では周期性交代眼振と新生児点頭痙攣の特徴を紹介します。

◇周期性交代眼振
周期性交代眼振は、100~240秒ごとに眼振の方向を変える水平方向の眼振です。先天性の眼振だけでなく、後天性の眼振でも見られることがあります。

先天性の眼振では、視界が揺れているなどの自覚症状が見られないのが一般的ですが、周期性交代眼振では先天性であっても周期的に変化する見え方を自覚している人がほどんどです。

◇新生児点頭痙攣
この眼振にかかった子どもは点頭という、首をこっくりと頷くような動作や首をひねるようにまわす動作をすることが多いです。

新生児点頭痙攣は、生後3ヶ月から1歳半までに発症し、多くは数年以内に、遅くとも8歳までには自然に治ります。
しかし、最近では新生児点頭痙攣は内斜視や弱視を引き起こすという報告もされており、眼振は自然に見られなくなるが長期的な検査や治療が必要だと考えられています。

弱視は、メガネやコンタクトを使っても視力が上がらないような状態のことを言います。

眼振がある子どもに見られる特徴

眼振のあるひとは、眼球が揺れているため、ふだんからものが揺れて見えていると思われがちです。しかし、上の章で見てきたように先天性の眼振では、ものが揺れて見えることは珍しく、ほとんどめまいや耳鳴りがみられません。

そのため、本人みずから不調を訴えることは少なく、子どもの場合は特に気づきにくいです。眼科に行ったときや第三者に眼球が動いていることを指摘されたときにはじめて眼振かもしれないと疑うことになります。視覚的に眼球が動いていることが確認できた場合以外にも、子どもの眼振が疑われるケースがいくつかあります。

◇注視・追視が見られない

赤ちゃんは生まれた直後から、目の前のものを見つめること(=注視)ができます。また、生まれた直後は視力が低く、目の前を動いているものを目で追うこと(=追視)はできませんが、数か月すると視力が発達して動くものを目で追えるようになります。

眼振のある子どもは、注視や追視ができないことがあるので、ずっと目がきょろきょろしていたり、目の前で手を振っても目で追わなかったりします。これらの様子が見られるときは眼振の可能性があり、注意が必要です。

◇不自然に頭を動かしている

子どもが、不自然に首を傾けていたり、あごを上下に動かしたりしているときも眼振が疑われます。先天性の眼振の多くでは、眼振の症状が軽くなる静止位(null point)という視線方向があります。

先天性の眼振には視線の方向によって、眼の揺れ方がひどくなったり、おさまったりすることがあり、静止位は、もっとも眼振がおさまる視線方向のことです。子どもはその視線方向でものを見るために、顔を動かして調整しようとします。そのため、不自然に頭を傾けるなどの様子が見られます。

これらの様子が見られたからといって、必ずしも病的な眼振というわけではありません。しかし、万が一のために、もし子どもにこのような様子が見られたときは、眼科で相談することがおすすめです。

先天性の眼振の治療法は?

先天性の眼振に対して、さまざまな治療法が考えられていますが、いまだに眼の揺れそのものを治す方法は見つかっていません。先天性の眼振の治療は対症療法になります。

子どもの視力がメガネやコンタクトで矯正できる場合には、できるだけ矯正することが推奨されています。具体的な対症療法を紹介します。

プリズム療法

プリズム療法は主に、乳幼児を対象に行われます。プリズム療法は、メガネをかけると視力が矯正できるのと同じように、特殊なメガネを使うことで眼振の症状を軽減する療法です。

そもそもプリズムは、光の進行方向を曲げるものです。ヒトがなにかを見えたと感じるのはすべて、光が目の中に入り、その情報が処理されるからです。プリズムによって光を曲げるというとイメージがつきにくいかもしれませんが、光の進む向きが変わることは身近なところで起きています。

例えば川の底を見て浅いと思ったのに意外と深かったケースも実は水によって光が曲げられているために起こります。

このように、目と見たいものの間に、水やプリズム、ガラスなどがあると光の進行方向が曲げられてしまいます。プリズム治療はこの光が曲げられる性質を利用した療法です。

プリズム治療のメカニズムは大きく2つあります。

1.静止位にあわせる
眼振の子どもには、見やすい位置(=静止位)があります。その位置で見るために不自然に頭を動かすので頭位異常が起きていました。

それなら、特殊なメガネで目に入ってくる光の位置を調整してあげれば、頭を動かさず正面を向いたままでも見やすくなるのではというのが1つ目の考え方です。

2.輻湊(ふくそう)による眼振の軽減を利用する
先天性の眼振では、眼を内側に寄せる(=輻湊)と眼振の症状が軽くなったり視力があがったりすることが多いとされています。

この療法では、特殊なメガネで遠くのものを見るときでも、まるで近くのものを見ているかのように光の進行方向を変化させ、目を内側に寄せるように促します。そうすることで、眼振の症状を軽くするという治療です。

バイオフィードバック療法

バイオフィードバック療法は、プリズム治療の2つ目と同様に、輻湊を利用した療法です。眼球運動を音に変える装置をつかって、子ども自身が聞こえてくる音で判断しながら、輻湊を意識的におこなって眼振の症状を軽くするコツを体で憶える方法です。

この療法は、眼振を完治させるのではなく、子どもが眼球運動を止める必要があるときに意図的に眼振を止めることができるようになるのが目的です。

薬物療法

眼振の治療方法の1つとして、薬が用いられる場合があります。

近年、内服薬や目薬によって、眼振の症状が抑えられるという報告はいくつかされています。例えば、てんかん治療で使われるガバペンチンが乳児の眼振に、筋肉の硬調に有効なバクロフェンが周期交替制眼振に有効だと報告されています。

しかし、それらの薬が眼振に有効だという明確な証拠は見つかっておらず、さらなる研究が必要です。

手術療法(外科手術)

手術療法が行われるのは以下の場合です。

顔の向きが正面を向いていない。かつ、顔の向きが正面でないほうが、視力がよかったり眼球が動きにくくなったりする。

手術療法は、眼球の周りの筋肉を調整することで、眼振の症状が治まる顔の向きが正面でなかったのを正面に変える療法だといえます。こうすることで、眼振自体を治療することはできなくても、眼振が原因で生じていた頭位異常を抑えることができます。

後天性の眼振の特徴

ここまで、先天性の眼振を見てきましたが、この章では後天性の眼振についてみていきます。後天性の眼振は、先天性の眼振とは異なり、めまいや耳鳴りなどの症状が起こりやすいのが特徴的です。

後天性の眼振の種類

後天性の眼振は大きく5つの原因に分けることができます。

3章で触れた、ものを見るときに必要な
・固視できるかどうか
・前庭眼反射が正常かどうか
・固視を維持することができるかどうか
のいずれかに異常が見られる場合と、

これらの他に、以下で説明する
・薬剤性眼振
・てんかん眼振

の2種類が加わります。

◇薬剤性眼振
薬剤性眼振は、水平性と垂直性が混ざったような眼球運動がおこります。

薬剤性眼振は中枢神経を抑制するような薬を服用していることが原因で発生する眼振です。ヒトは全身に神経を張りめぐらしていますが、中枢神経はそれらのなかで中心的な働きをするもので、脳や背骨のなかにある神経のことです。

◇てんかん眼振
てんかん眼振は、てんかん発作中に生じる水平性の律動眼振(目がゆっくりずれていき、急に元の位置に戻る)です。てんかん眼振には次のような傾向が見られます。

・通常、数分間でおさまる。(持続する場合もあるので注意が必要)
・けいれんが止まったときに、両目が同じ方向を向いたままになるが、眼振は静止する。
・脳波を調べると、てんかん特有の波長が見られることがある。
・こわばりからけいれんが起こる強直(きょうちょく)間代(かんたい)発作が伴う。

また、てんかん眼振の治療は抗けいれん薬で行われます。
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後天性の眼振の治療法は?

後天性の眼振は、さまざまな原因が考えられ、多岐にわたるため、まずはその原因を追究することが大切です。

頭位異常が見られる場合には手術が行われたり、後天性の眼振のもとになっている疾患を治療したりすることで、眼振を治療していきます。

まとめ

眼振は、その原因や症状の表われ方に非常に多くの種類がある疾患です。

人によってはめまいを訴えたりすることもあるほか、本人の自覚症状がなくとも、眼振によって頭位異常が起きて、周りから目つきが悪いと思われたり、そっぽを向いていると勘違いされたりしてしまうこともあります。

現在、眼振そのものの治療法は確立されていませんが、眼振の種類によっては後遺症もなく治る場合もあります。それに、眼振そのものを治すことが難しくても、眼振の症状にアプローチしていくことで、眼振のある子ども自身が生活しやすくすることはできます。

もし、子どもに少しでも眼振が疑われるような様子が見られたときには、眼科にかかり専門家に診てもらうようにしてください。
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