療育にも活用される「音楽療法」の最前線! 子どもたちへの多彩なアプローチについて徹底取材!

ライター:林真紀

発達障害のある子どもの療育に、「音楽療法」を取り入れる動きが広がっています。今回、7月初旬に茨城県つくば市で開催された「世界音楽療法大会」に参加し、国内で行われている音楽療法を取り入れた取り組みについて取材してきました!音楽療法は子どもたちにどのような働きかけをするのか、子どもの特性に応じてどのようなプログラムを行うのか、最新の実践・研究をご紹介します。

発達障害の子どもの療育にも用いられる音楽療法。その最新の動向をお届けします!

みなさんは、「音楽療法」という言葉を聞いたことがありますか?

音楽療法とは、音楽のさまざまな力を利用して、対象者が抱えている困りごとの改善を促したり、よりよい生活を送ったりすることができるようにアプローチする療法です。
音楽療法とは。音楽療法を取り入れる目的や対象、具体的な受け方をご紹介のタイトル画像

音楽療法とは。音楽療法を取り入れる目的や対象、具体的な受け方をご紹介

この音楽療法を、発達障害のある子どもの療育に取り入れる試みが世界的に広がっていることをご存知でしょうか。

まだ日本では音楽療法の保険適用や法整備が実現されておらず、音楽療法士の資格も国家資格となっていないため、療育としての普及には多くの壁が存在しています。

しかし、今回茨城県つくば市で5日間に渡って行われた「世界音楽療法大会」への取材を通して、すでに日本でも医療や教育の現場で発達障害児の療育に音楽療法を取り入れようとする試みがなされていることが分かりました。

今回の記事では、世界音楽療法大会への取材を通して学んだ、音楽療法の実践・研究の様子をお伝えします。
第15回世界音楽療法大会の写真
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世界中から音楽療法士が集まる「世界音楽療法大会」とは?

第15回世界音楽療法大会の様子
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「世界音楽療法大会」とは、世界中から音楽療法士が集まり、世界レベルでの音楽療法の発展をサポートするために行われているイベントです。
第15回世界音楽療法大会 公式サイト
https://www.jmta.jp/world/music_15/index.html
世界音楽療法連盟によって3年に1度、世界各地で開催されてきました。現在では、世界約50カ国から約2,500人が参加する、非常に大きな大会となっています。
第15回世界音楽療法大会のパンフレット写真
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音楽療法が用いられる場面は、世界的には非常に広く、プログラムをざっと見るだけでも「認知症患者」「末期がん患者」「未熟児」「ホームレス」「DV被害者」等々、多様な人々を対象とした音楽療法の研究がなされています。

そしてその中でも、「発達障害児と音楽療法」というテーマは、国内での注目度の高さが感じられ、同様の発表は常に満席で立ち見が出る賑わいでした。その様子から、音楽療法はまさにこれから日本の療育分野で、飛躍的に活用されてゆくのではないかと感じることができました。

今回、この大会の中で、実際に発達障害のある子どもの療育に音楽療法を取り入れる活動をされている方々にお話しを聞くことができました。この先進的な取り組みについて、詳しくご紹介していこうと思います。

1. 放課後等デイサービスや特別支援学校での音楽療法の取り組み

音楽療法士の松﨑聡子さん
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まず最初に取材したのは、兵庫県の特別支援学校や放課後等デイサービスなどで音楽療法のセッションを担当されている音楽療法士の、松﨑聡子さんです。

兵庫県では、阪神淡路大震災後、県民の心のケアに音楽が有効であるということから、震災から4年後の1999年に県独自の音楽療法士養成講座をスタートさせました。そして兵庫県知事から認定を受けた第一期生が中心となり、2002年に「兵庫県音楽療法士会」が発足。現在では、約250名の会員が音楽療法の普及・発展を目指して活動を行っています。

2011年に発生した東日本大震災でも、復興支援活動として、被災地支援活動、県内避難者支援活動を行ったそうです。
兵庫県音楽療法士会
https://hmta.jp/
多方面で活躍する音楽療法士ですが、残念ながら国家資格ではないため、医療現場や教育現場に入っていくことは、現状ではなかなか難しいといいます。そのような背景から、松﨑さんをはじめ多くの音楽療法士は放課後等デイサービスでのセッションを行うことが多いそうです。

松﨑さんは定期的に放課後等デイサービスや特別支援学校でセッションの時間を持ち、楽器や音楽を使って、発達障害のある子どもの社会性を伸ばす療育に取り組んでいます。

「音楽は、発達障害児の療育に用いる上で数々の優れた面がある」、と松﨑さんは言います。

「音楽」は「言葉」と異なり、「感じるもの」という側面が大きく、子どもの心にダイレクトに訴えかけることができます。

また、
「始めと終わりがはっきりしているため見通しが立てやすい」
「繰り返しがある」
等、自閉傾向の強い子どもが好む構造になっているのも特徴です。

その他にも、楽器を使うことにより、子どもは五感を刺激され、感覚統合訓練の役割も果たしてくれるとのことです。

また、何よりも大切なのは、音楽を通して、セラピストと子どもがコミュニケーションを取ることです。これこそが、音楽療法のなかで一番大切な部分であると言っても過言ではありません。

音楽療法士のピアノに合わせて楽器を鳴らす、音楽療法士と順番に楽器を鳴らす、出来たら音楽療法士とハイタッチをする…子どもたちは、このように音楽を通してコミュニケーションを学び、社会性を獲得していくのです。

その他にも、松﨑さんが子どもたちに音楽療法を実施する際、とても大切にしていることがあります。それは、その子が音楽療法のセッションの中で学んだことを、日常の生活でも実践できるようにサポートしていくことです。

音楽療法のセッションのなかで、子どもは社会性やコミュニケーションなどのさまざまな部分で成長を見せてくれます。しかし、それがセッションの中だけで終わってしまっては意味がない、と松﨑さんは考えます。そのためにも、保護者の協力は必須であるとのこと。

松﨑さん含め、音楽療法士は、長いスパンでその子の成長を見ており、その子の長い人生の中の大切な一時期を自分たちが担っているという気持ちでセッションに取り組んでいるそうです。
次ページ「2. 医療現場での音楽療法の取り組み」

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