全国の発達障害当事者会が一堂に会する日本初のフォーラム!〜発達障害当事者会フォーラム2017〜

ライター:秋定美帆
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当事者会の全国調査が発表される大規模フォーラム「発達障害当事者会フォーラム2017」が2017年7月17日に開催されました。昨年初めて実施された当事者会に関する全国規模の調査結果をもとに、当事者会のこれからを、登壇した方々を含めるその場にいた全員が改めて考える機会となりました。今回の記事では、調査結果の概要と、フォーラム当日の様子をレポートします。

「発達障害フォーラム2017」が開催!当日の様子をレポートします

発達障害のある成人当事者の方々にとって、似た特性のある人同士で繋がり、交流したり、お互いの困りごとを共有・相談したりすることができる「当事者会」の集まり。

当事者会の趣旨や活動内容は団体ごとにさまざまですが、これまで数ある当事者会の実情が横断的・網羅的に調査されることはなかなかありませんでした。

そうした中、7月17日に、「発達障害当事者会フォーラム2017」※が開催されました。昨年初めて実施された当事者会に関する全国規模の調査結果をもとに、当事者会のこれからを、登壇した方々を含め、その場にいた全員が改めて考える機会となりました。

発達障害当事者の方、また発達障害を身近に考える方などで、早い時間から会場は満席に。大人の発達障害への関心の高まりを感じられるフォーラムでもありました。

※主催: 一般社団法人発達・精神サポートネットワーク(代表理事・川島美由紀), 発達障害当事者協会(代表・新孝彦)
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第一部は、今回のフォーラムの主催者であり、「Necco カフェ」オーナーで発達障害当事者協会運営委員の金子磨矢子さんの挨拶からスタート。昨年の発達障害者支援法改正により、成人の発達障害の存在が正式に認められたこと、またそのために尽力された方への感謝の言葉を語られました。

「発達障害の支援を考える国会議員連盟」事務局長の高木美智代衆議院議員(現: 厚生労働副大臣)もフォーラムに駆けつけ、「幼少期からライフステージに合わせ、切れ目ない支援ができるよう、縦横の連携を深めて支援させていただく」とご挨拶されました。また、一般社団法人日本発達障害ネットワーク市川宏伸理事長からは、「当事者が団結して声をあげる重要性」の話がありました。

そして、東京大学社会科学研究所・助教の御旅屋逹先生から「発達障害の当事者同士の活動支援のあり方」の調査報告が行われました。

成人の発達障害への関心の高まりや当事者の支援ニーズの掘り起こしの不足などの背景から行われた今回の調査。回答のあった、76箇所の都道府県・政令指定都市の発達障害者支援センターの意見がまとめられました。

「手探りで進めてきた初めての調査です。全ての当事者会の一般的な傾向を表したものとは言い切れません」としながらも、調査結果からはさまざまな課題が見えてきました。

大きな課題は、利用者間の人間関係と運営に関わる資金だと回答したセンターが多く、また参加者には偏りがあることも分かりました。

30代〜40代の男性の参加が多いという結果は、子供の頃には発達障害が知られておらず、働き始めてから特性のせいで孤立してしまうなどの問題が生じることが多いこと、また就労していないことが問題化されやすいのが男性であるということが反映されているようです。

詳しい結果については、下記をご覧ください。
「発達障害の当事者同士の活動支援のあり方」の調査報告
https://neccocafe.com/wp-content/uploads/5d05f0b7e33c5bf076f0cf834d3c48f9.pdf

12の当事者団体が一堂に。それぞれの工夫や課題を共有。

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第二部では、12の発達障害当事者会の方々が登壇し、座談会形式のフォーラムが行われました。事前に用意された7つの質問にそれぞれの団体が回答し、それを元に議論が進みました。

「当事者会を運営することで、人生のリカバリーができました
「症状を苦に生きる目的をなくしてしまう人などを見てきましたが、そのようなことが起こらないように頑張っていきたいです」
など、登壇した方の気持ちのこもった言葉は、そこにいた多くの参加者の胸に響いたようでした。

参加団体は以下の通りです。
・ほんわかカフェ(Neccoカフェ茶話会)
・一般社団法人 東京言友会
・発達障害ピアサポート サピア
・千葉県発達障害当事者の会
・DX会
・つむぎ 発達障害当事者会
・東京・多摩「大人の発達障害」当事者会
・NPO法人 日本トゥレット協会
・みどる中高年発達障害当事者会
・アスペ・発達凸凹の集い「優しい時間」
・足利こころのピアサポート「ゆいまーる」
・発達障害当事者協会
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「当事者として発達障害支援センターをどのように捉えているか?」
という質問には、

「当事者会のことを教えてもらえることを期待していたが、当事者会の存在自体を知らないと言われるなど、スタッフによって知識に差がある
などの問題が提起されました。当事者が必要としている情報と、支援者が必要だろうと思う情報に差異があるとの声も上がりました。

また、何かトラブルがあったときに専門職の方が中に入ることで冷静に対処できるのではないかという観点から「当事者会として発達障害者支援センターと連携したいか」という質問には、連携したいと語る団体もありました。

「地方で受けられる支援が少ない」、「人の役に立ちたい」、「当事者との横の繋がりを作りたい」など様々な回答が出たのが「なぜ当事者会を作ろうと思ったのか」という質問でした。

都心と比べると地方では自分に合った支援を受けることが難しく、また当事者向けの研修などはめったにないという課題も挙げられました。ならば自分で当事者会をつくることで、勉強会の実施や、講師を招いての研修会の開催なども可能になるのではないかなど、困難な中でも前向きな意見が多く聞かれました。
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続いて、「専門家は当事者だけでは運営が難しいと言っているが、当事者会としてはどう考えているか」という質問。

当事者会を運営することで、いろいろなスキルが身につき人生をリカバリーすることができたという体験から、
「専門家が入ることに反対ではないが、そのために当事者の枠がひとつなくなってしまうのなら当事者に残してほしい」
という意見や、

「当事者だけでも運営可能だとは思うが、特性上事務手続きや事務作業が苦手な方も多いので、そういったことを理解してくれる専門家の方に入ってもらえるとありがたい
などの声がありました。
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「当事者会として困っていることは?」という質問には、薬物療法や対人療法、また薬の副作用など、特に医療の面でピアサポーターの知識にも限界があるといった回答が寄せられました。

またDX会(成人ディスレクシアのための当事者会)は、同質問に対して、ディスレクシア(読み書き困難)の特性が人によって大きく異なるため、ふざけているのでは?と思われることがあるなど、あまり理解が得られないことを訴えました。

「オンラインも活用してきたが、やはり直接顔を合わせないとうまくいかない」
「自分たちのモチベーションを切らさないようにする」
「毎月第何○曜日。場所はどこ。と時間や場所を固定するようにしている」
「事務的な作業は雛形を作ってそれを継続している」
など多くの意見がでたのが、「当事者会を運営していくうえで、どのような工夫をしていますか?」という質問でした。

特性に配慮した工夫はもちろんですが、運営者の負担が大きいため、できるだけ個人の負担を減らす工夫がされているようです。

最後に「当事者に必要な支援は?」という質問には、相談可能な第三者機関の設立や、当事者会運営者の養成講座の必要性を訴える声が多く上がりました。

また、最近成人の発達障害が広く認知され始めており、発達障害と診断される方も増えています。当事者会にも開催する毎に新しい方の参加があることから、都度定番の情報を提供する必要があるといいます。

定番の情報をまとめたサイトなどがあれば、当事者会ではそれを踏まえてもっと深い話ができるようになるなどの意見が集まりました。

熱い議論が交わされたフォーラムの後には、登壇された2名の方にお話を伺いました。
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■アスペ・発達凸凹の集い「優しい時間」横山さん

−他の当事者会の方々とこんな風に集まることは今までなかったので、他の会のお話を聞けて有意義でした。活動については、メンバーには恵まれているのですが、財政的な面では苦労が多いです。参加費の値上げなどを考えましたが、みなさん苦しい中参加してくださっているので、現状維持で頑張っています。
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■つむぎ 発達障害当事者会 野中さん

–このような形で登壇することは今までなかったのでとても緊張しましたが、発表したいと思っていたことは伝えることができたと思います。私は、以前自立神経失調症を発症し、新卒での就職ができず、新人研修の機会を喪失してしまいました。ですが、当事者会の運営に携わることでいろいろなスキルが身につき、一部を補完できました。そのことで、人生をリカバリーすることができたと思っています。
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ロビーには発達障害に関する書籍の販売コーナーも。多くの方が気になる本を手にとっていました。
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■roots 石塚さん

フォーラムが行われた第一会場のほかに、第二会場には就労支援の相談コーナーが設けられました。

出展していた就労移行支援事業所「roots」の石塚さんは、
「rootsでは『働きたい、を叶えたい。』というキャッチコピーのもと、web制作などwebに特化した就労支援を行なっています。Webの世界は特にいろいろな働き方があるので、新しい働き方を当事者のみなさんと一緒に模索していきたいです」
と語ります。

2016年5月に発達障害者支援法が改正され、成人の発達障害に注目が集まるようになりましたが、まだまだその支援が充分であるとは言えません。支援が行き届く社会にするためには、どこに不足があるのかを理解することが重要です。今回のような調査が社会を変えるための大きな一歩であることはもちろん、思いのこもった当事者の言葉は何よりも力があると感じられた今回のフォーラムでした。
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