不登校8年生の娘が高校を選択!大切なのは早めに学校候補を知ること、そして…

ライター:ヨーコ
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不登校の娘は、中学に一度も顔を出さないまま3年生になりました。そんな娘ですが「高校へは行きたい」と言っています。とはいえ、コミュニケーションの苦手さや、学校に行ってないことを追い目にして、学校見学に踏み出せない様子。私はそんな娘の自主性を尊重しながらも、選択の期限を与え、娘の様子を見守ることにしました。

不登校の子どもたちの高校進学事情

不登校の親の会でこんな話を聞いたことがあります。

不登校の子どもたちは「高校には行きたい」と希望するものの、なかなかパンフレットを見ようとしなかったり、学校見学に行っても門の前でUターンしてしまことがあるそうです。だから進学が決まるのがギリギリになるケースが多いと言います。

我が家のアスペルガー症候群の診断を受けている娘も小学校2年生から不登校。中学校2年生まではほとんど勉強もすることなく毎日を過ごしてきました。そんな娘も中学校3年生になり進路を考える段階にさしかかっています。

実は中学2年生のとき、特別支援コーディネーターの先生が、娘に合いそうな高校を3つセレクトしてくれていました。しかし、その頃の娘は、進学を現実のこととして考えるのは難しい様子で、自分からパンフレットを見ることはありませんでした。

時期が早かったというのもあったでしょうが、「ああ、親の会で聞いた通りだな」と思った私は、「高校のパンフレットはここに置いておくよ」と声だけかけて、しばらく待っていました。

親の会の先輩お母さんたちからは、

「親は早めに準備しておくといいけれど、逆に子どもたちはそっとしておいた方がいい。」
「進学したいと口では言っていても、気持ちが追い付いていないことがあるから、子どもに言われたときにすぐ資料を用意できるようにしておいて、あとは見守る方がいいよ」と聞いていました。

だからパンフを開こうとしない娘を深追いしても、余計に心を閉ざしてしまうと思い、そっとしておくことにしたのです。

進路を決めるまでの気持ち

3つの学校を提案された時点では、「せっかく先生が選んでくれた学校だから信頼できる。全部見てみたい。」と積極性を見せていた娘。

そんな言葉とは裏腹に、自らのパンフレットを開くのは、かなりのパワーが必要だったようです。ひとたびパンフレットを見てしまったら、それまで漠然としていた未来が急に現実味を帯びて、ありありと迫って来るように感じられたのでしょう。娘の「ちょっと待って、もうちょっとだけこのままでいさせて」という気持ちがうかがえます。

「そのうち見るから」といいながら憂鬱そうにパンフが入った袋を置く娘。その姿を見て「高校のことを考えるのって、この子にとってはこんなに負担のかかることなんだ。」と思い知りました。

「パンフレットを見るだけなら簡単でしょ」と無理やり娘に見せようとする気持ちがわき起こらなかったわけではありません。それをしなかったのは、脳裏に浮かぶ先輩ママの体験談の数々があったから。不登校ならではの葛藤、本人たちも精一杯頑張ろうとしているのにうまくいかないつらさあることを知っていたので、「私も気長に頑張ろう」と思ったのでした。

そんなとき、ソーシャルワーカーの方と面談中の「娘の高校の件で悩んでいる」と言うと、「梅雨までに一緒に見学に行ったほうがいいですよ。梅雨に入ってしまえば動きにくくなりますし。」とアドバイスされました。ソーシャルワーカーは娘とも面識があり、我が家の内情をよく知っています。

娘をそっとしておこうという気持ちはあったとはいえ、信頼している福祉のプロからのアドバイスなら試してみようと、思い切って私は娘に期限を提示することにしたのです。

「梅雨までに一つだけでも見学に行きたいから、どこに行ってみたいか5月中に決めてくれる?」

すると、娘もお尻に火が付いたのか5月後半から学校案内のパンフレットを見始め、末日までに「この高校を見に行きたい」と言ってきたのです。

いざ見学へ

娘が選んだその学校は自宅から自転車で通うことができます。

そこはもともと塾だったところで、今は通信制高校の技能連携校になっています。

技能連携校というのは、通信制高校の分校のようなところで、通信制高校と技能連携校の両方に入学することで、技能連携校の方で卒業に必要な出席日数、レポート提出、試験をすべて済ませることができるそうです。

とてもアットホームな雰囲気で、小さな教室がいくつかあり、授業は昼から行われていました。制服もなく、生徒さんが好きなときに来て、自分のペースで学習している、そんな様子でした。

学校は頻繁に出かけるなじみのある地域にあったので、娘はいつものTシャツにジャージ素材の半パン、草履といった格好で、気負った様子もなく家を出ました。ただし、非常用の腹痛の薬はしっかりかばんにいれていたところを見ると、不安の気持ちがなかったわけではないのでしょう。

学校の入り口についても、「入り口はここだよ~」「お~」という感じでリラックスしています。2人で雑居ビルのワンフロアにある学校に入ると、校長先生がニコニコして応接スペースに案内してくれました。

ここの校長先生は息子さんの不登校を経験しており、不登校に理解の深い方です。

在校生が入れてくれたお茶を飲みながら、さりげなく校長先生と娘の面談が始まりました。

「ここは昼から1時間だけ授業があります。できれば週5日来てくれたらいろいろな勉強ができますが、しんどかったらもっと少なくても大丈夫。」という話を聞いて娘もホッとしたようです。

応接スペースからも、教室の様子をうかがうことができ、学校の雰囲気がよくわかった娘は安心したようです。あまり学校らしくないというか、小さな塾といった雰囲気なのもよかったのでしょう。

学習室も見せてもらいました。棚にはカリキュラムに沿ったプリントと、それを理解するための教科書や参考書がセットで置いてあって、来ている子は順番に黙々とこなしていました。

娘が「私は勉強していないから小1からやらないといけないかもしれない」というと、「大丈夫。みんな小学校の勉強から始める子がほとんどだからね。」と言われました。実際、小1レベルから対応しているそうです。

また話の最中にびっくりしたことがありました。

面談中に「体育の時間はテーマパークに行ったり、 ボウリングに行ったりするんだよ」という話が出ました。すると、娘は「それは行かなくてもいいですか。 人が多くてザワザワしていたり、トイレにすぐに行けないようなところに行くのは嫌なんです。」 とはっきり答えました。

初めて会った先生に、はっきり自分の気持ちを言葉にした娘を見るのは初めてで、その様子から娘がいかにリラックスしているかわかりました。

また、そこの学校に入る予定の人には、慣れるためと少しずつ勉強を始めるために付設するフリースクールに入ることを勧めていると聞かされました。

どうやら普通のフリースクールというよりここの学校の補助的な役割をする塾みたいなもので、スタッフも場所も、この学校と一緒ということです。

校長先生の「学校に入るまでここで少しずつお勉強してみませんか?」というお誘いに、「どうする?」と娘に聞いたら「行く」と即答。結局、その日のうちにフリースクールに入学することになりました。

帰ってから、「どこが気に入ったの?」と聞くと「うーん、なんとなく。 ママもそんな感じやろ」と最初は言っていましたが、しばらく経つと「あのゆるい雰囲気がいい」「電車に乗らなくてすむのがいい」とポツリポツリと語っています。彼女にとって安心できる場所だと判断したのでしょうね。
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