虐待の可能性があるときは?

素早い通告が子どもの命を救います!

虐待から子どもを守るためには、虐待のリスクに周囲が気づき、早期に関係機関に通告することが最も大切です。

速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。

そのため、虐待の通告はとても重要な役割を担っており、児童虐待の防止等に関する法律では通告を国民の義務と定めています。
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv22/01.html
「もし違ったらどうしよう」とためらってしまうかもしれません。

しかし虐待かどうかの判断は児童相談所が行うので、通告者が虐待であるかどうかを判断する必要はありません。少しでも虐待の可能性がある場合、そのリスクを見落とさないためにも、より多くの情報が必要です。そのため「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であればためらわず通告してください。

もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながらあえて通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。

どこに通告すればいいの?

まずは「189」に電話相談!
「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけると最寄りの児童相談所につながります。

児童相談所に電話をすると、専門家が子どもの状況や、「いつ、どこで、どのような異変を確認したのか」などの聞き取りを行います。
まずは「189」に電話相談!
まずは「189」に電話相談!
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「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金は相談者の負担となりますが、相談料などは一切かかりません。

また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。

虐待の通告への対応を含め、その後の親子への支援は児童相談所が担当します。

虐待の通告は親も救う

虐待の疑いがある子どもを見つけても、「自分の子どもなんだから、これ以上のことはしないだろう」「通告したら、親子の関係をより悪化させてしまうのではないか」「親から告げ口をしたと恨まれないか」と不安に感じ、通告に踏み切れないこともあるかもしれません。

虐待が起きている家庭は孤立状態にある場合が多く、困りごとを共有できずにいます。通告によって行政が虐待の存在に気づければ、保護者が子どもへの向き合い方を見直し、必要な支援につながる可能性を高め、自らの困難さへの対処をすることにつながるのです。

通告後はどんなサポートがあるの?

虐待が発見されたら、近くの児童相談所か行政の相談窓口に報告されます。通告が受理されたあと、保護者や児童本人にヒアリングして重症度・緊急度の審査が行われます。審査の結果を踏まえて、児童の一時保護を含めた措置を検討します。

在宅支援

在宅支援とは、子どもの生活拠点は家庭のままにして、家族への支援を行うことです。在宅支援が行われる場合は、虐待のリスクはあるが「止めたい」という保護者の意思が確認できるときや、保護者を支援することで問題の改善が期待できるときなどです。児童相談所や自治体、民間団体などさまざまな機関から広い支援を受けることができます。

1.ペアレントトレーニング
ペアレントトレーニングとは、行動療法的な考え方を使って保護者自身が子どもとの関わり方を学んでいく方法です。

子どもを自分の思い通りに操作するために暴力や暴言に頼る方法ではなく、より良い関係の中で親子関係を築く方法を学びます。

2.ピアカウンセリング
ピアカウンセリングとは、子育てに困りごとを抱えている保護者同士が話し合うことで困りごとを共有し、支え合う関係性を築くことです。
境遇が似ている人と気持ちを共有することで、自分自身の行動を受け止め、許容することができるようになります。

3.支援団体と保護者の面談
主に児童相談所と行政の担当課による家庭訪問や面談です。話を聞いたり、困りごとの相談に応じたりすることで、保護者が孤立してしまうことを防ぎつつ、子どもに対する行動を客観的にとらえられるように促します。

4.幼稚園、学校内での見守り
主に教職員によるモニタリングを行います。また、子どもへの日常生活に関する質問を通して子どもが健やかに育っているか、虐待の再発はなさそうかの変化を観察します。児童相談所から指示があれば、追加の支援も行われます。

5.地域での見守り
児童委員の人が家庭訪問等を通して、家庭内の状況を見守ります。

社会的養護

親子を分離する必要があると判断された場合は、児童福祉施設や里親に預けられます。子どもの保護を保護者が拒否するときは、児童相談所が裁判所に申し立てをし、裁判所の命令によって児童を保護することになります。

今までは児童福祉施設に預けられることが多かったものの、2017年8月に厚生労働省が被虐待児の施設受け入れよりも、里親の受け入れを増やす方針を発表しました。この方針は、家庭に近い環境での発育が必要な子どもの選択肢を広げることが狙いです。こういった世相の変化によって、子どもの特徴に合った、支援の幅が広がっていくことになるでしょう。

子どもが保護されている間には、保護者に向けた関係機関からの支援が行われます。支援によって親子関係の再構築が望める場合、家族が再び一緒に暮らすこともあります。

子どもに虐待しそうになったときは

「自分が虐待をしてしまうのではないか」「自分が虐待をしているのではないか」、また「どうしても自分をコントロールできない」などと悩む保護者の方も少なくないようです。

そういった悩みを抱える保護者向けのサポートがあります。

子育ての悩み相談や地域で受けられるサポートを知りたい場合は、児童相談所のほか各市区町村の役場(役所)にある「児童福祉課」「子育て相談課」で対応してもらえます。情報収集や気軽に話せる相手がほしい場合はサポートをしている団体に連絡してみるとよいでしょう。

また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けていると共に、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っているところもあります。このように信頼できる専門機関とつながることで、育児のストレスを減らすことが期待されます。
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