虐待かもと思ったら。判断基準、相談機関など…子どもを救うためにできること

ライター:発達障害のキホン
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児童の虐待の相談件数は年々増えているといわれています。虐待かもしれない場面に出合った際にどう対応すればよいかご存知ですか?方法が分からない、勇気が持てない、などさまざまな不安要素を抱えている人もいるかもしれません。今回は虐待の見つけ方や対処の方法をご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

虐待とは

虐待とは「特定の相手に対して、その人の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格形成に多大な影響を与えること」をいいます。その対象になりやすいのは児童、高齢者、障害者などの社会的な立場が弱いとされる人たちです。

虐待の通告件数は年々上昇しています。通告件数が増加している背景には2つの要因が挙げられます。1つ目はメディアの報道により関心度が高まったこと、2つ目には法律の改正により通報が義務付けられたことです。

令和4年度に、全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は、過去最多の219,170件と発表されています。いまや児童虐待は稀な出来事ではありません。子育ての孤立や貧困など、現代の子育て環境は過酷で、かつて考えられていたような「一部のひどい親」だけが行うというものではなくなってきています。つまり誰にでも、虐待という不適切な親子関係に陥る可能性があるのです。

虐待にいち早く気づき、適切な支援につなげることで、救われる親子がいるかもしれません。
以下では、虐待について、また子どもに及ぼす影響などについて解説します。
参考:令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)|こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a176de99-390e-4065-a7fb-fe569ab2450c/12d7a89f/20230401_policies_jidougyakutai_19.pdf
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虐待の種類

児童虐待の防止等に関する法律(第二条)では、児童虐待を以下の4種類に分類しています。

1.身体的な虐待
殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などで縛るなど

2.心理的な虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと(ドメスティック・バイオレンス/DV)など

3.性的な虐待
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど

4.ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど
参考:児童虐待防止対策|こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai
これら4種類の虐待は単独で起こるだけでなく、複合的に起こることもあります。また、法律の条文に載っていなくても、子どもの健康的な心身の発達を阻害する可能性がある言動は虐待に値します。次の章で紹介する基準をもとに、柔軟に判断することが子どもたちを救うのです。

どこからが虐待なの?

専門機関が虐待かどうかを判断する指標として、児童虐待の防止等に関する法律の定義が使われます。

一  児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二  児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三  児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四  児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000082_20230401_504AC0...
つまり、前の章で挙げた身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の項目に当てはまるような言動が見られる場合に、虐待と判断されるのです。

しかしながら、法律上の定義だけでははっきりと判別できない事例も多いことが事実です。虐待としつけの間には線引きが難しいグレーゾーンが存在し、第三者からは見分けがつきにくいこともあるでしょう。

虐待の判断で重要なポイントは、子どもの視点に立って考えることです。親はしつけや教育のためと思っていても、子どもが耐えがたい苦しみを感じ、心身の成長に悪い影響を与えそうなときは虐待として考えるべきという専門家も増えています。
 
また、もし、虐待かどうか判断しかねるときは、児童相談所にまずは相談しましょう。虐待かどうかの判断をするのは児童相談所です。虐待でなかったとしても、故意によるものでなければ通告をした人自身の責任は問われません。

つまり、通告の段階では主観的な判断であってもよいのです。むしろ、虐待かどうか判断しかねるような段階で早めに専門機関につながることで、支援の手により虐待が未然に防げることもあります。
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