「相手の気持ちをよく考えて」その言い方は子どもに届かない!?「心の理論」から考える声掛けの方法

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公園の砂場で玩具の取り合いが始まると、親が出てきて「自分がされて嫌なことはお友達にしないで」「相手の気持ちをよく考えて」と言葉をかけている光景に出くわします。でも大人の言葉は子どもの左耳から右耳へ通過しています。

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『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。

幼い子どもは“自分中心”の世界に生きています。つまり“自己中”。

「これこれこういうことをしたら、相手がどう感じるか」とか「自分が同じことをやられたら、どう感じるか」と考えることがなかなかできません。相手の気持ちがわからないので、噛みついたりいきなり玩具を奪い取ったりして、トラブルが多発する時期です。

さて、相手の置かれている状況に立って考えることを専門用語で「心の理論」と言います。4歳未満の子どもの多くは、まだこれを獲得していないそうです。

この発達を調べるテストに「サリーとアンのテスト」があります。

サリーとアンのテストとは

このテストでは、サリーとアンという女の子2人が描かれたテスト用紙を見て、登場人物の行動を推測することで、「自らの視点ではなく、相手側に立って考えることが出来るかどうか」を調べることができます。

このテストを行うと3歳児、4歳前半児のほとんどが、見たままの光景を答えてしまい、登場人物であるサリーとアンの行動を推測することが難しいそうです。

4歳後半以降になると、子どもは他人の置かれた状況について考えられるようになり、登場人物の行動を推測することができるようになり、正答率が上がります。

しかし、自閉症スペクトラム障害などをはじめとする発達障害の子どもは、この「心の理論」の獲得に困難を示し、正解率が年齢に対して低いと言われています。

息子の結果はというと……

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私の息子は自閉症でもう17歳ですが、東大病院の精神科で受けたこの心理テストの結果が以下でした。「サリーとアンのテスト」以外にもたくさんの「心の理論」の検査を受けました。
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息子は50%しか正解できませんでした。
主治医によると、通常6歳過ぎれば、定型発達児であれば100%の正答率らしいです。

こんな状態ですから「相手がこうすると嫌がるだろう」ということがわからず、自分の気持ちだけで突っ走って、相手にしつこくしてしまい、今もトラブルが多いです。

子どもたちに通じない言葉のかけかた

「心の理論」の発達が追い付いていない子どもたちに、次のような言葉をかけても、子どもの心には響いていないかもしれません。

「自分がされて嫌なことは、相手にもしてはだめ」
「お友達の気持ちになって、もっと優しくしなさい」

何故なら、子どもたちにとって自分は相手ではないからです。

特に、発達障害の子どもは心の理論の獲得が遅れると言われているので、これらの言葉は「馬の耳に念仏」となっているように思います。

どういう声掛けをすればいいの?

相手を叩いて玩具を奪いとる場合

「それはやってはいけないこと」とシンプルに伝えましょう。

こんなときは「玩具が欲しいときは噛みついたり叩いたりしないで『貸して』と言おうね」と代替案を具体的に示してあげましょう。言葉がまだ出ていなかったら「貸して」と手を出す動作を親が示し、真似させましょう。

「人に迷惑がかかるから」も通じない

まだ相手の立場に立てない子どもにとって「人に迷惑がかかるからやってはいけない」も通じないことがあります。また、子どもは字面通り受け取って、「人がいなければやっても構わない」と考えてしまう危険もあります。

例えば、「バスの中では他のお客さんに迷惑がかかるから、静かにしていなさい」「ほら、運転手さんに怒られちゃうよ」と叱っていると、「たまたまその車両に他の乗客がいなければやってもいい」「運転手が優しい人で怒られなければ騒いでもよい」と考えてしまうかもしれません。

こんなときはシンプルに「電車やバスはお家ではないから、お口は閉じていよう」とだけ伝えましょう。

喧嘩する体験をさせる

我が子が発達障害であっても、周りもまだまだ自己中心的な子どもです。子どもどうしの諍いを回避させようと、いつも大人がすぐに仲裁入ってしまったら、子どもの成長の機会を奪うことになりかねません。

相手にやられる経験を通して初めて「こうされると嫌なんだ」と相手の立場に立つ気持ちが育つこともあるでしょう。

積み木手に持って武器にして相手を叩いたり水や砂をかけたり、噛みついたりしない限りは見守りに徹し、子ども自らが気づきを得ることができるようにすることが大切ではないでしょうか。
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(C)あべゆみこ
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まとめ

定型発達児であれ、発達障害児であれ社会性がまだ育っていない時期に「相手の立場に立って」はハードルが高いのです。そもそも「相手の立場に立つ」という考え方が定着していないのですから、そのことを前提で言い方・伝え方を考えていく必要があります。

「それはしてはならないこと」とシンプルに伝えたり、「こうすればいいよ」と具体的にどうすればいいかを伝えることで、子どもは望ましい行動をとりやすくなるのかもしれませんね。
立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子(著),市川宏伸(監修)
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