強度行動障害とは?原因や症状、なりやすい人や対応・支援など【専門家監修】
強度行動障害とは、自傷行為や物を壊すなど周囲の人に影響を及ぼす行動が多く、家庭でかなり努力をして養育しても難しい状態が続き、特別な支援が必要な状態を言います。
強度行動障害の特性や周りの環境をきちんと把握し、本人に合った支援・治療を行うことが大切です。この記事では強度行動障害の特徴や症状、支援、治療、相談先についてご紹介します。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
この記事で分かること
- 強度行動障害の概要と、自傷・他害などの具体的な症状
- 強度行動障害が起こる主な原因について
- 判定基準と医学的な診断との違い
- 「治す」ではなく「支える」という視点と、環境調整などの具体的な支援方法
強度行動障害とは?どんな症状?
強度行動障害という名称は、医学的な診断名ではありません。行政・福祉において使われており、必要な支援を判断するために用いられている用語です。
強度行動障害の基本情報
- 症状:激しい自傷行動や他害・物損、異食や睡眠の大きな乱れ、叫び続けるなど
- 原因:興味関心の限定やこだわり、感覚過敏性などの障害特性と環境がうまく合ってないこと
- 対応:環境調整、行動療法、薬物療法、入院治療など
強度行動障害は何歳から?
強度行動障害になりやすい人は?
障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスを活用しながら、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だと言えるでしょう。
強度行動障害の特徴は?どの程度だと強度行動障害と言えるの?判定基準やチェックリストは?
強度行動障害は医学的な診断名ではないため、医師による診断基準ではなく行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、医師や支援者が基準と照らし合わせて評価していきます。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。
強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定める代表的な「行動関連項目」についてご紹介します。
2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。
突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。
【強度行動障害の行動関連項目の例】
- 大声・奇声を出す
- 異食行動
- 多動・行動停止
- 不安定な行動
- 自らを傷つける行為
- 他人を傷つける行為
- 不適切な行為
- 突発的な行為
- 過食・反すう等
強度行動障害と行動障害の関係
行動障害のある人の中で、不適切な行動の強度や頻度が著しく、周囲を含めて生活に影響が大きく出ている場合を強度行動障害と呼んでいます。
なぜ起こる?強度行動障害の主な原因は「環境とのミスマッチ」
強度行動障害による自傷や他害などの行動は、本人に合った環境設定などで軽減していくと言われています。そのため、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切になります。以下に、そのヒントをご紹介します。
■感覚の問題・コミュニケーションの苦手さ
知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性がある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。
「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。
■こだわりが強く余暇が乏しい
発達障害のある人の中には、こだわりが強かったり、興味や関心が限定的な場合があります。そのことに強く執着してほかのことができなくなったり、できることやすることが極端に少なかったりして、暇をつぶすための自傷行動をしてしまうこともあります。また、好ましくない行動であっても、なかなかやめられないということもあります。
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強度行動障害は「治す」もの?大切なのは本人に合った支援
福祉サービスによって強度行動障害がある人の生活全般を支援し、そのうえで検査、薬物療法、入院治療などの医療を組み合わせることがあります。
【強度行動障害の支援例】
- 環境調整
- 行動療法(ポジティブ行動サポート)
- 薬物療法
- 入院治療
以下に強度行動障害のある人が受けることのある支援を紹介します。
環境調整
環境調整の例として、ASD(自閉スペクトラム症)があり授業の見通しが立たずにパニックになってしまうことがある子どもに対して、授業の流れをイラストなど視覚的にわかりやすく書いたものを渡すことで、パニックを起こさずに済むようにするなどの方法があります。
どういった環境が合うかは子どもによって異なるため、支援者と一緒に子どもにとってストレスとなる状況を把握して、工夫しながら取り組んでいくとよいでしょう。
行動療法(ポジティブ行動サポート)
予防のためのプログラムとして以下のような支援が行われることがあります。
・機能的行動アセスメントに基づく支援
・TEACCHなどによる基本的なASD(自閉スペクトラム症)特性に対する支援
・家族や保護者が子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニング
薬物療法
しかし薬物療法は本来の障害特性を根本から治療するためのものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を抑制するためのものです。そのため、ほかの治療法と組み合わせて行います。
入院治療
・検査による身体状態の評価
強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。
・行動や情緒に対する状態評価
施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。
入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。
・環境変化によるこだわり行動などのリセット
強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。
・家族や施設スタッフのレスパイト
レスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。
入院治療を行う場合には、本人が入院している間に支援機関と一緒に本人との関わり方や環境調整など支援体制の整理を行い、退院後の在宅支援・施設での生活のことを見据えることが大切です。
強度行動障害のある人への福祉サービス
強度行動障害のある人への福祉サービスの種類
在宅で受ける福祉サービス
行動する際に生じる可能性のある危険を回避するための援護です。移動中の介護、衣服の着脱介護、排泄や食事などの介護を行います。
・重度障害者等包括支援
重度の障害者等に対し、居宅介護、同行援護、重度訪問介護、行動援護、生活介護、短期入所、共同生活援助、自立訓練、就労移行支援及び就労継続支援を包括的に提供します。
・重度訪問介護
居宅における生活全般を援助します。また移動時の支援や日常生活に関する相談および助言も行います。
施設で受ける福祉サービス
主として夜間において、入浴、排泄及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。
・短期入所
短期間の入所を必要とする人を対象に、入浴、排泄及び食事などの必要な介護を行います。
・共同生活援助(グループホーム)
共同生活をしている人を対象に、夜間や休日に入浴、排せつなどのかいごのほか、相談対応や日常生活上の援助を行います。
どの福祉サービスを利用するか、どのように支援を組み合わせるかは人それぞれです。まずは相談支援専門員に相談しましょう。障害者総合支援法におけるその他の支援について知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。
障害者総合支援法を解説、自立支援法との違い、平成30年施行の障害者総合支援法の改正のポイントを紹介
知的障害者施設には具体的にどんな施設がある?知的障害に関する施設の役割、費用、申請方法をご紹介!
強度行動障害のある人への福祉サービスは広がっている
適切な支援を行うための人材育成として、強度行動障害支援者養成研修も行われています。研修は「基礎研修」と「実践研修」があり、オンラインでの講習と集合しての演習という内容です。支援員や医療関係者、特別支援学校の先生などに受講資格があり、全部の課程を受けると、「修了証書」が交付されます。
そのほかにも、ICTを利用した支援者同士のネットワークの構築など、さまざまな支援体制が整えられています。
ライフステージごとの強度行動障害に関係する支援
そのため、できるだけ早く本人にとって適切な環境を整えること、また発生しやすい時期を見越して支援を組み立てていくことが大切です。
この章ではライフステージごとの支援についてご紹介します。
・幼児期
睡眠や食事に関する問題、強いこだわりなどが幼児期からみられる場合があります。
児童発達支援における支援、幼稚園・保育所の支援、地域の療育事業を利用する方が多いです。障害受容への支援やそれに伴う情報提供・相談支援・親グループのカウンセリングなどのペアレントトレーニングが行われます。
またこの時期にはきょうだいが生まれるなど、本人よりも他の家族の要因により、支援が必要になる場合もあります。一時的に支援の補助をしてもらうために、「居宅介護事業」「移動支援事業」「短期入所事業」などを使うとよいでしょう。
・学齢期
自傷行動や他害、破壊的行動などが激しくなってくる時期です。
強度行動障害のある人は特別支援学校に通うことが多いです。学校外の支援としては、「放課後デイサービス」「行動援護事業」「短期入所事業」が挙げられます。行動援護事業を使えない場合には「居宅介護事業」または「移動支援事業」を使います。
「行動援護事業」と「移動支援事業」の違いについては、以下の記事を参考にしてみてください。
移動支援とは?同行援護・行動援護との違い、費用、サービス利用までの流れ、通学・通勤の利用について【専門家監修】
成人期の支援は、日中活動では訓練等給付として「就労継続支援事業B型」、介護給付の「生活介護事業」が、生活支援として「行動援護事業」「短期入所事業」が中心となります。地域生活を希望すれば施設入所支援でなく「共同生活援助(グループホーム)」を利用することもできます。
強度行動障害についての相談先
・発達障害者支援センター…上記の支援機関へのアドバイスなどを行う
・基幹相談支援センター…対応が難しい場合の、地域の相談支援事業所への後方支援を行う
・相談支援事業所…支援のコーディネート・マネジメントを取りまとめる
このような位置づけから、子どもの強度行動障害について悩んでいる場合は、まずは地域の相談支援事業所に問い合わせてみるとよいでしょう。
相談支援事業所では、まず日常生活における本人や家族の困りごとについて、相談支援専門員によるヒアリングが行われます。そのうえで、困りごとを解決するためにどんな支援があると良いのかを一緒に考えます。場合によっては相談支援専門員とサービス事業所に見学に行くこともあるようです。
また実際に支援を受けることになった場合、サービス等利用計画が必要になります。これはチームで1人を支援をする際、周りの人がそれぞれどのような役割を果たして支援をしていくのか、本人やご家族がどんな生活を希望するかなどを記入したものです。
強度行動障害のある人が支援を受ける流れ
さらに個別支援計画に加えて、支援手順書が作成される場合があります。これは本人に関わる支援者が共通の支援方法をとるための手順書です。強度行動障害がある人は支援者の接し方が少しでも違うと混乱するといったように、周りの人に影響を受けやすいため、支援方法を統一する必要があるからです。
このように本人に関わるさまざまな人たちの間で情報共有がされ、一人ひとりに合った支援ができるような仕組みづくりがされています。
まとめ
強度行動障害は、周りの人たちが特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を把握し、本人に合った環境を整えていくことで改善していきます。
また、家庭だけでは難しいことも多いため、支援者や医療関係者と一緒に対応していくことが大切です。子どもの強度行動障害に悩んでいる人は、まずは地域の相談支援事業所などに相談してみるとよいでしょう。
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