強度行動障害とは?原因や症状、助けとなる支援など【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
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強度行動障害とは、自傷行為や物を壊すなど周囲の人に影響を及ぼす行動が多く、家庭でかなり努力をして養育しても難しい状態が続き、特別な支援が必要な状態を言います。強度行動障害の特性や周りの環境をきちんと把握し、本人に合った支援・治療を行うことが大切です。この記事では強度行動障害の特徴や症状、支援、治療、相談先についてご紹介します。
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
強度行動障害とは?
強度行動障害とは、危険な場所への飛び出しや高いところに登るなどの行動、食べ物以外を口にする異食や睡眠の大きな乱れ、激しい自傷行動や他害・物損、大声で叫んだり、長時間泣き続けるなど、本人や周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が高い頻度で起こるため、特別な支援が必要になっている状態のことをいいます。
強度行動障害という名称は、医学的な診断名ではありません。行政・福祉において使われており、必要な支援を判断するために用いられている用語です。
強度行動障害のある人の実数は明らかにされていませんが、関連サービスを利用されている方の数は2021年10月時点でのべ68,906人とされています。
強度行動障害という名称は、医学的な診断名ではありません。行政・福祉において使われており、必要な支援を判断するために用いられている用語です。
強度行動障害のある人の実数は明らかにされていませんが、関連サービスを利用されている方の数は2021年10月時点でのべ68,906人とされています。
強度行動障害という状態になる年齢は人それぞれですが、特に中学生や高校生という思春期以降に強いこだわりや自傷行動、他傷や破壊行動などが激しくなる場合が多いといわれています。
強度行動障害のある人の多くは重度の知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性があることが分かっており、障害の特性と環境のミスマッチがあると強度行動障害の状態になりやすいようです。
障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスを活用しながら、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だと言えるでしょう。
強度行動障害のある人の多くは重度の知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性があることが分かっており、障害の特性と環境のミスマッチがあると強度行動障害の状態になりやすいようです。
障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスを活用しながら、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だと言えるでしょう。
強度行動障害の特徴は?どの程度だと強度行動障害と言えるの?判定基準やチェックリストは?
強度行動障害の特徴は、自傷や他害、睡眠の乱れや異食などが本人や周囲の人の生活に影響を及ぼす強さや頻度で生じるということです。以下のような行動がどの程度の強さで、またどのくらいの頻度で表れるかを総合的に評価し、支援の必要性を判断していくことになります。強度行動障害を判断する基準は複数あります。年齢や受ける支援(福祉・医療)の違いによって異なります。
強度行動障害は医学的な診断名ではないため、医師による診断基準ではなく行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、医師や支援者が基準と照らし合わせて評価していきます。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。
強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定める代表的な「行動関連項目」についてご紹介します。
2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。
突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。
強度行動障害は医学的な診断名ではないため、医師による診断基準ではなく行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、医師や支援者が基準と照らし合わせて評価していきます。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。
強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定める代表的な「行動関連項目」についてご紹介します。
2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。
突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。
強度行動障害と行動障害の関係
行動障害とは、年齢や発達段階にそぐわない自身や他者を傷つけることもある行動のことで、自傷、攻撃性、衝動性、反抗的な行動、ひきこもり、不眠・不食などが挙げられます。行動障害は発達障害や精神障害などが背景となって生じることがあります。
行動障害のある人の中で、不適切な行動の強度や頻度が著しく、周囲を含めて生活に影響が大きく出ている場合を強度行動障害と呼んでいます。
行動障害のある人の中で、不適切な行動の強度や頻度が著しく、周囲を含めて生活に影響が大きく出ている場合を強度行動障害と呼んでいます。
強度行動障害の原因
強度行動障害の原因は、興味関心の限定やこだわり、それに対する過度な執着性や感覚の過敏性といった障害特性に環境がうまく合ってないことにより、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。特に重度の知的障害(知的発達症)やASD(自閉症スペクトラム)との関連が指摘されています。特性と環境によっては、知的障害(知的発達症)・発達障害の特性の度合いにかかわらず強度行動障害が見られることがあります。
強度行動障害による自傷や他害などの行動は、本人に合った環境設定などで軽減していくと言われています。そのため、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切になります。以下に、そのヒントをご紹介します。
■感覚の問題・コミュニケーションの苦手さ
知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性がある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。
「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。
■こだわりが強く余暇が乏しい
発達障害のある人の中には、こだわりが強かったり、興味や関心が限定的な場合があります。そのことに強く執着してほかのことができなくなったり、できることやすることが極端に少なかったりして、暇をつぶすための自傷行動をしてしまうこともあります。また、好ましくない行動であっても、なかなかやめられないということもあります。
強度行動障害による自傷や他害などの行動は、本人に合った環境設定などで軽減していくと言われています。そのため、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切になります。以下に、そのヒントをご紹介します。
■感覚の問題・コミュニケーションの苦手さ
知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性がある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。
「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。
■こだわりが強く余暇が乏しい
発達障害のある人の中には、こだわりが強かったり、興味や関心が限定的な場合があります。そのことに強く執着してほかのことができなくなったり、できることやすることが極端に少なかったりして、暇をつぶすための自傷行動をしてしまうこともあります。また、好ましくない行動であっても、なかなかやめられないということもあります。
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強度行動障害の支援は?
強度行動障害は状態であり、個人に対する治療というよりも環境と個人との両方にアプローチしていきます。福祉サービスによって強度行動障害がある人の生活全般を支援し、そのうえで検査、薬物療法、入院治療などの医療を組み合わせることがあります。
以下に強度行動障害のある人が受けることのある支援を紹介します。
以下に強度行動障害のある人が受けることのある支援を紹介します。
環境調整
環境調整とは、困りごとがある場合に特性などに応じて周りの環境を本人に合わせて整える、困りごとの解消を目指す方法のことです。強度行動障害は特性と環境のミスマッチが原因となるため、治すという観点ではなく環境調整をして自傷や他害を起こさなくてもいい状況を作っていくという考え方が大事です。
環境調整の例として、ASD(自閉スペクトラム症)があり授業の見通しが立たずにパニックになってしまうことがある子どもに対して、授業の流れをイラストなど視覚的にわかりやすく書いたものを渡すことで、パニックを起こさずに済むようにするなどの方法があります。
どういった環境が合うかは子どもによって異なるため、支援者と一緒に子どもにとってストレスとなる状況を把握して、工夫しながら取り組んでいくとよいでしょう。
環境調整の例として、ASD(自閉スペクトラム症)があり授業の見通しが立たずにパニックになってしまうことがある子どもに対して、授業の流れをイラストなど視覚的にわかりやすく書いたものを渡すことで、パニックを起こさずに済むようにするなどの方法があります。
どういった環境が合うかは子どもによって異なるため、支援者と一緒に子どもにとってストレスとなる状況を把握して、工夫しながら取り組んでいくとよいでしょう。
行動療法(ポジティブ行動サポート)
行動療法とは、行動の原因を分析し、問題となる行動が起きにくくなるように働きかけ、代わりに適切な行動を起こせるようにしていく治療法です。
予防のためのプログラムとして以下のような支援が行われることがあります。
・機能的行動アセスメントに基づく支援
・TEACCHなどによる基本的なASD(自閉スペクトラム症)特性に対する支援
・家族や保護者が子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニング
予防のためのプログラムとして以下のような支援が行われることがあります。
・機能的行動アセスメントに基づく支援
・TEACCHなどによる基本的なASD(自閉スペクトラム症)特性に対する支援
・家族や保護者が子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニング
薬物療法
強度行動障害の特徴である興奮やパニックなどの激しさを抑えたり、やわらげたりする目的で、薬物療法が行われることがあります。
しかし薬物療法は本来の障害特性を根本から治療するためのものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を抑制するためのものです。そのため、ほかの治療法と組み合わせて行います。
しかし薬物療法は本来の障害特性を根本から治療するためのものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を抑制するためのものです。そのため、ほかの治療法と組み合わせて行います。
入院治療
強度行動障害が悪化した場合には、精神科などで短期入院が行われるケースがあります。入院治療において具体的にできることをご紹介します。
・検査による身体状態の評価
強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。
・行動や情緒に対する状態評価
施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。
入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。
・環境変化によるこだわり行動などのリセット
強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。
・家族や施設スタッフのレスパイト
レスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。
入院治療を行う場合には、本人が入院している間に支援機関と一緒に本人との関わり方や環境調整など支援体制の整理を行い、退院後の在宅支援・施設での生活のことを見据えることが大切です。
・検査による身体状態の評価
強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。
・行動や情緒に対する状態評価
施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。
入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。
・環境変化によるこだわり行動などのリセット
強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。
・家族や施設スタッフのレスパイト
レスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。
入院治療を行う場合には、本人が入院している間に支援機関と一緒に本人との関わり方や環境調整など支援体制の整理を行い、退院後の在宅支援・施設での生活のことを見据えることが大切です。
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