遅発性ジスキネジアとは?どんな症状があるの?抗精神病薬の副作用・遅発性ジスキネジアを徹底解説!【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
ジスキネジアとは、繰り返し唇をすぼめたり、舌を左右に動かしたり、口をもぐもぐさせるといったことを自分の意志とは無関係に繰り返してしまう症状のことを示します。ジスキネジアのなかでも、抗精神病薬などを長く服用している人に副作用としてあらわれるものを“遅発性ジスキネジア”と呼びます。
まだ明らかになっていないことも多い副作用ですが、この記事では具体的な症状や遅発性ジスキネジアを発症しやすい薬剤などを詳しくご紹介します。
監修: 山科満
中央大学文学部教授
精神科医から文系の大学教員となって,発達障害傾向ゆえに不適応に陥っている若者の多さに驚き,発達障害と本腰を入れて向き合うようになった。
遅発性ジスキネジアとは
ジスキネジアとは、口をもぐもぐさせたり、繰り返し唇をすぼめたり、下を左右に動かすといったことを自分の意思とは無関係に繰り返す症状のことを示します。ジスキネジアの中でも、抗精神病薬などを長く服用している人に副作用としてあらわれるものを遅発性ジスキネジアと呼びます。
「繰り返し唇をすぼめる」「舌を左右に動かす」「口をもぐもぐさせる」「口を突き出す」「歯を食いしばる」「目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている」「勝手に手が動いてしまう」「足が動いてしまって歩きにくい」「手に力が入って抜けない」「足が突っ張って歩きにくい」
引用リンク:重篤副作用疾患別対応マニュアル「ジスキネジア」|厚生労働省 平成21年5月
上記の中でも「繰り返し唇をすぼめる」「舌を左右に動かす」「口をもぐもぐさせる」「口を突き出す」というような唇と舌の症状があらわれることが多くあります。これらの動きのほかにも「足を組んだり外したりする」「ドアノブを回すような動きを繰り返す」「椅子から立ったり座ったりする」など、同じ動きを異常なほどくりかえしてしまうこともあります。
症状が軽い場合には日常生活に支障が出ないことも多く、副作用に気づかず見過ごされてしまうことあるようです。
抗精神病薬を服用していて、このような症状がみられた場合には、精神科・神経科の専門医を受診するようにしましょう。
症状が軽い場合には日常生活に支障が出ないことも多く、副作用に気づかず見過ごされてしまうことあるようです。
抗精神病薬を服用していて、このような症状がみられた場合には、精神科・神経科の専門医を受診するようにしましょう。
遅発性ジスキネジアを発症する原因
原因は明らかではありません
遅発性ジスキネジアを発症する原因は、現段階でははっきりとは明らかになっていません。しかしこれまでの研究から、特に「ドーパミン※1」が関係しているのではないかと推測されています。
遅発性ジスキネジアのほとんどが、抗精神病薬を使用したあとに現れます。ほかにも制吐剤や抗てんかん薬、抗うつ薬などであらわれることもあります。
ジスキネジアは、「随意運動※2」を調整する役割を持つ脳の一部(大脳基底核)に何らかの障害が起こって発症すると考えられています。大脳基底核は、ドーパミンという物質によって調整されています。抗精神病薬のなかには、ドーパミンを受け取る場所である「ドーパミン受容体」に作用する薬が多くあります。
この働きをもつ薬を長期間服用するとドーパミンの働きのバランスが崩れたり、ドーパミンの代謝物が大脳基底核に何らかの障害を起こすことが原因ではないかと考えられているのです。
※1 ドーパミン…脳の中枢神経系にある神経伝達物質のこと
※2 随意運動…人間の生物的な動きのうち、筋肉を自分で動かす運動のこと
遅発性ジスキネジアのほとんどが、抗精神病薬を使用したあとに現れます。ほかにも制吐剤や抗てんかん薬、抗うつ薬などであらわれることもあります。
ジスキネジアは、「随意運動※2」を調整する役割を持つ脳の一部(大脳基底核)に何らかの障害が起こって発症すると考えられています。大脳基底核は、ドーパミンという物質によって調整されています。抗精神病薬のなかには、ドーパミンを受け取る場所である「ドーパミン受容体」に作用する薬が多くあります。
この働きをもつ薬を長期間服用するとドーパミンの働きのバランスが崩れたり、ドーパミンの代謝物が大脳基底核に何らかの障害を起こすことが原因ではないかと考えられているのです。
※1 ドーパミン…脳の中枢神経系にある神経伝達物質のこと
※2 随意運動…人間の生物的な動きのうち、筋肉を自分で動かす運動のこと
遅発性ジスキネジアを発症しやすい薬剤
統合失調症の治療薬は、遅発性ジスキネジアをもっとも発症しやすいといわれています。
海外の研究では、抗精神病薬を使用している人の約25%に遅発性ジスキネジアがみられるという報告があります。
海外の研究では、抗精神病薬を使用している人の約25%に遅発性ジスキネジアがみられるという報告があります。
比較的高い発症割合のため、心配になってしまう方もいるかもしれません。しかし開発が新しい薬剤は、遅発性ジスキネジアを発症しづらいことが分かっています。第一世代と呼ばれる薬剤では32.4%の発症率であるのに対し、第二世代と呼ばれている新しい薬では13.1%と発症率が低下しています。
なお、子どもに処方されることがあるリスペリドン(リスパダール)やアリピプラゾール(エビリファイ)はどちらも第二世代と呼ばれている薬です。
なお、子どもに処方されることがあるリスペリドン(リスパダール)やアリピプラゾール(エビリファイ)はどちらも第二世代と呼ばれている薬です。
発症しやすい人のタイプはある?
遅発性ジスキネジアについて、これまでに分かっていることをいくつかご紹介ます。
まず高齢者や糖尿病を合併している人、脳になんらかの器質的な病気のある人では、遅発性ジスキネジアを発症しやすいことが明らかになっています。
また若年層の発症は少なく、加齢とともに発症する人が多くなることでも知られています。遅発性ジスキネジアの発症平均年齢は65歳くらいであるとの報告が多いようです。
発症する人の平均年齢が高い理由には、服用歴が長ければ長いほど遅発性ジスキネジアの発症が増加することも関係しているかもしれません。
口をもぐもぐさせるような運動は、高齢になると薬を飲んでいなくとも起きてくることもあるようです。そのため高齢者での見極めには注意が必要です。心配なときは、かかりつけの医師に相談しましょう。
まず高齢者や糖尿病を合併している人、脳になんらかの器質的な病気のある人では、遅発性ジスキネジアを発症しやすいことが明らかになっています。
また若年層の発症は少なく、加齢とともに発症する人が多くなることでも知られています。遅発性ジスキネジアの発症平均年齢は65歳くらいであるとの報告が多いようです。
発症する人の平均年齢が高い理由には、服用歴が長ければ長いほど遅発性ジスキネジアの発症が増加することも関係しているかもしれません。
口をもぐもぐさせるような運動は、高齢になると薬を飲んでいなくとも起きてくることもあるようです。そのため高齢者での見極めには注意が必要です。心配なときは、かかりつけの医師に相談しましょう。
参考リンク:重篤副作用疾患別対応マニュアル「ジスキネジア」|厚生労働省 平成21年5月
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c21.pdf
遅発性ジスキネジアの診断・検査
遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬など原因となり得る薬剤を服用している場合に、症状の様子から判断されます。
遅発性ジスキネジアと似た症状があらわれる病気があることから、血液検査、CT・MRI、脳波検査、眼科的検査のほか、必要であれば遺伝子検査などを行い鑑別します。
遅発性ジスキネジアと似た症状があらわれる病気があることから、血液検査、CT・MRI、脳波検査、眼科的検査のほか、必要であれば遺伝子検査などを行い鑑別します。