ダウン症の息子を育てる僕が、本当に父親になる日~父の日に寄せて~

ライター:黒木 聖吾
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もうすぐ、父の日。わが家には、小学4年生になったダウン症の息子がいる。息子が生まれてから、親として妻とともに歩んできた。ある施設との出会いによって、「本当に父親になる日」について考えたことを書いてみたい。

父になったことを感じる日

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脩平が小学校へ向かう様子
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もうすぐ父の日だ。父の日は自分が父親であることを感じる日。いつからぼくは父親になれたのだろう?いや、本当になれているのだろうか?

わが家には小学校4年生になった長男、ダウン症のある脩平(しゅうへい)がいる。朝、脩平が元気に家を出て、小学校へ向かう。そんな姿を見ると心からほっとする。

「学校へ行く」そんな簡単なことでさえも、困難な時期があったから。

起きない、着替えない、玄関にしがみつく、泣き叫ぶ…。一体、彼が何につまずいているのか、親として何をしてあげたらいいのか。夫婦でさまざまなことを話し合い、時には迷いながら子育てをしてきた。

わが家の、夫婦の役割分担

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161012432
妻は出版社に勤務し、書籍の編集者をしている。ある日、取材先から帰ってきた彼女が言った。

「あそこで脩平が働けたらいいな」

妻がそんなことを言ったのは初めてだったので驚いた。というのも、脩平の障害が判明してから、僕と彼女とでなんとなく役割の区分が違ったのだ。

僕は父親として、どちらかというと、子どもの「遠い将来」を考えて活動をしてきた。障害者を取り巻く社会環境を変えたい、将来、自分の子に選択肢を増やしてあげたい。そんな思いから、アクセプションズというダウン症啓蒙のためのNPOに携わっている。

一方妻は、日々の子どもの世話を通して、教育環境を整えたり、地域コミュニティでの理解に尽力している。つまり、子どもの近い将来を考えた活動だ。

と、そんなふうに書くと僕も妻も、なんとも素晴らしい親のように聞こえてしまうかもしれないが、そんなことはない。実のところ、共働き夫婦の僕たちは、目の前の子どもの世話や教育で毎日がいっぱいいっぱい。
とくに妻などは戦場のような毎日で、脩平の将来などまだまったく考えられないし、就労なんて想像さえできないという状態。だから、そんな彼女が突然、口にした言葉に驚いたのだった。

その日、彼女が本の取材で訪れたのは、栃木県足利市にある『こころみ学園』。何がそんなに妻の心を動かしたのだろうか。
NPO法人アクセプションズ
https://acceptions.org/

妻の心を動かした、こころみ学園とは?

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こころみ学園、ココ・ファーム・ワイナリー
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こころみ学園とは、1969年、栃木県足利市に誕生した知的障害者施設のこと。

当時、中学校を卒業すると行き場を失っていた知的障害のある子どもたちのために、教師だった川田昇先生が私財をなげうって山を購入し、子どもたちとともにぶどう畑を開墾したのがすべての始まりだった。

僕も以前、NPO法人アクセプションズでココ・ファーム・ワイナリー(こころみ学園と併設)へ見学にいったことがあった。こころみ学園では、知的障害のある園生たちが住み込みの形で、ぶどう栽培やしいたけ栽培、ワインづくりをしている。
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アクセプションズで作成した見学用資料
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学園開設当時、「障害があるのだからおまえは何もしなくていい」と親に言われ、「何もやりたいことなんかない」と言っていた子どもたち、白魚の手をしていた子どもたちが、大自然の中で格闘しながら農業をするうちに、たくましく、したたかな農夫へと変わっていったという。

そして、そこで栽培されたぶどうで丁寧につくったワインは、やがて沖縄サミットにも出されるほどの日本を代表する高品質のワインになった。
次ページ「夫婦の考えを変えた農夫たちの姿」

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