世界中で翻訳された自閉症啓発アニメ『Amazing things happen』「僕らはみんな違う。それは素晴らしいことなんだ」制作者の想いを取材

ライター:発達ナビニュース
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2017年に公開された自閉症について描いた一本の短編アニメーション『 Amazing things happen』。それは瞬く間に話題になり、29ヶ国語に翻訳され世界中でシェアされました。今回、この制作者であるイギリスのアレックス・アメリーンズさんに、作品の制作過程や作品への想いなどについて取材することができました。(取材・文/林真紀)

世界中で再生されている自閉症のアニメ制作者にインタビュー!

『 Amazing things happen』

2017年に公開されたある動画。公開と共に世界中で話題になり、29カ国語に翻訳され、世界中でシェアされ続けています。動画のタイトルは「素晴らしいことが起こるんだ」(原題:Amazing things happen)-自閉症の啓発を目的としてつくられたアニメーションです。

この動画をつくったのは、イギリスのプロのアニメーターであるアレックス・アメリーンズさん。今回、アレックスさんに、制作過程や作品への想いなどについてインタビューすることができました。

取材・文/林真紀
林真紀のページ
https://h-navi.jp/user/34948
自閉症を啓発するアニメを制作したアニメーターのアレックスさん
アニメを制作したアレックスさん
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アレックス・アメリーンズさんのプロィール

プロのアニメーター。個人で制作した自閉症を啓発するアニメが世界中で再生され話題に。公開後、英国ディスレクシア協会(British Dyslexia Association)などから依頼を受け、積極的に作品を制作している。コロンビア出身で、現在はイギリスで生活。46歳。

子どもの学校で行われた自閉症の講演をきっかけに一人で制作をスタート

─動画の反響がすごいですね。そもそもこの動画の制作はどなたが企画したのですか?

アレックスさん(以下、アレックス): 私がやろうと考えたんです。きっかけは、息子の学校で行われた自閉症についての講演でした。講演自体はとてもためになったのですが、分かりやすい視覚資料がなかったんです。ですから、プレゼンテーションにいろいろと限界がありました。

このときにパッと思いついたんです。全部アニメにできないかなと。アニメにすれば、子どもたちがもっと興味を持って観てくれるでしょうし、あとは、私自身が普段の仕事の気晴らし的につくれたら楽しいかなと。でも、元はそんな大それた計画ではなかったのです。近隣の学校で教材として使ってくれるところがあればいいかな、ぐらいの気持ちで…。

このアイデアを、息子の学校の特別支援コーディネータに話してみたところ、彼女がすぐに「つくってみてください!」と言ってくれたのです。
ミニカーで遊ぶ自閉症の男の子が描かれた「Amazing Things Happen!」のワンシーン
「子どもたちにより自閉症を分かりやすく」とつくられたアレックスさんのアニメのワンシーン
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─始めは息子さんの学校の教材用につくったのですね。アニメ制作にはどのぐらいの期間を要しましたか?

アレックス: まず脚本を書くのですが、それに6~9カ月。脚本が仕上がったら、すぐにキャラクターやアニメのスタイルをつくり始めました。ストーリーボード(絵コンテのようなもの)を組み立てて、声の録音を先にやりました。ナレーションがストーリーの流れを決めますからね。

そして、ストーリーボードを映像化し、場面ごとに組み合わせていきました。全て自分の仕事の空き時間にやったため、完成まで2年近くかかってしまいました。

大切にした「多様性」を描き出すための工夫

表情や動作をつくる作業画面のコラージュ
表情や動作をつくる作業画面のコラージュ
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─制作において大切にしていたことは何ですか?

アレックス: 2つあります。

一つは多様性を描き出すことです。そしてもう一つは、多様性を描くために、シンプルなキャラクターデザインにすることでした。

専用のソフトを使うと、キャラクターのパーツをちょっといじれば、サイズ、身体のプロポーション、性格、エスニシティ等を変えたバージョンが無限につくり出せます。

─キャラクター設定はどんな感じで決めましたか?

アレックス: まず、異なる行動パターンを描き出すために、少なくとも5人の登場人物が必要でした。そして、場合に応じて、ほかにもさまざまなバックグラウンドを持つ登場人物が必要になると考えました。けれども、これを私1人で制作するのは大変です。ですから、描きやすいシンプルなキャラクターにしたのです。

─制作にあたって、実際に自閉症の人に取材したり、どこかを訪問したりしましたか?

アレックス: していません。するべきだったんでしょうけど。最初の段階で、自閉症というものがかなり範囲の広いものであることは感じていました。こんな言葉をご存知でしょうか。「一人の自閉症者に会ったとしても、それは多くの自閉症の中のたった一人に会ったに過ぎない」つまり、一口に自閉症と言っても、一人ひとりが全く異なっているんです。ですから私は、自閉症の子どもたちと毎日接している専門家にアドバイスをお願いしました。

何人かの人にインタビューするのも役には立つかなと思ったのですが、例えインタビューをしたところで、無限の可能性があるこの複雑な世界の、ほんのわずかな部分に過ぎないんじゃないかと思いまして…。
アレックスさんのアニメ制作に協力してくれたトニー教授(左)
アレックスさんのアニメ制作に協力してくれたトニー教授(左)
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─なるほど。多様性を描き出すために、あえて取材は最小限にしたのですね。専門家からはどんなアドバイスをもらったのですか?

アレックス: 脚本段階のときに、自閉症研究の第一人者であるトニー・アットウッド教授に相談しました。トニー教授は、脚本とストーリーボードをチェックしてくださり、使っている言葉も調整してくださいました。私は、この作品は大丈夫だと太鼓判を押されたような感じがして、心強かったです。

もちろん、脚本を書くうえでの準備は怠らないようにしました。自閉症に関する本、ブログ、記事などはたくさん読みました。議論や講演などもたくさん見るようにしました。作品制作に大きなインスピレーションを与えてくれたのは、日本の東田直樹さんが書いた『自閉症の僕が跳びはねる理由』という本ですね。この本を読んで、自閉症の青年の内的な世界を垣間見ることができたのです。素晴らしい本でしたね。
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