誰にも負けたくない!息子のこだわりを溶かした「アサーショントレーニング」との出合い

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自分の意見と違う意見を言われると、相手を即「敵」扱いの息子。自分でも悪いと分かってる、でもどうしたらいいか分からない。そうか、息子の生きづらさの原因は、他者が異なる意見を言ったときに、どうやってそれを尊重したら良いのか、やり方が分からないからなんだ…。そんな息子に、大学の先生が、あるソーシャルスキルトレーニング(SST)について教えてくれました。

林真紀
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じゃんけんも点数も超・負けず嫌い!?息子に浮き上がったソーシャルスキルの課題

息子が小学校に入学してしばらくしたある日、学校の面談のときのこと。

「息子くんはじゃんけんに負けただけで、この世の終わりみたいな感じになってしまうんです。落ち込んでしまって、なかなか立ち直れない」

という話を、先生からされました。さらに、問題はじゃんけんだけにとどまりませんでした。

「隣のお友達よりもテストの点数が少しでも低いと、落ち込んでしまって立ち直れない」
「ほかの人に『違うよ』と否定されると、パニックになってしまって、怒りがなかなかおさめられない」

といったことが次々と出てきました。息子の課題は、もっぱら「他者を尊重するということはどういうことか」ということを考えることでした。

勝負をすれば、どちらかが勝つし、どちらかが負ける。負けてしまったとしても、それは世界の終わりではない。勝った相手に敬意を表し、次に繋げるための糧にすることが大切です。

また、自分と違う意見を言われたとしても、それは自分の全てを否定するものではない。人はそれぞれみんな異なる意見を持っていることを理解して、尊重できるようになってほしい。

学校での様子を聞いて、そういったソーシャルスキルを学ぶことが、息子にとって一番大切だと思いました。けれども、私が息子にそれをいくら説明したところで、「だって悔しい」という一言で終わり…。

もっとうまく伝える術がないだろうか、と考えていたところで、息子を定期的に見てくださっている大学の先生から、「アサーショントレーニング」を紹介していただいたのです。

SSTにもぴったりな「アサーショントレーニング」って?

「アサーション」とは、一言で言ってしまえば、「自分も相手をも尊重したコミュニケーション方法」のことを言います。

息子を見てくださっている大学の先生いわく、この「自他尊重」という考え方が、発達障害児のSSTにおいてとても重要な意味を持つことになると言います。自分への尊重と相手への尊重、どちらが欠けても、コミュニケーションは苦痛を伴うものに変わってしまいます。

あるアメリカの心理学者は、人間関係の持ち方について、以下の三つに分けることができるとしています。

■攻撃的なコミュニケーション/アグレッシブ
(強がり・尊大・無頓着・他者否定的・操作的・自分本位・支配的)
自分のことだけを考えて、他者を踏みにじるやり方。
「私はOK、あなたはOKではない」

■非主張的/ノン・アサーティブ
(引っ込み思案・卑屈・消極的・自己否定的・他人本位・相手任せ・服従的)
自分よりも他者を常に優先し、自分のことを後回しにする方法。
「私はOKではない、あなたはOK」

■アサーティブ
(正直・率直・積極的・自他尊重・自発的・自他協力・歩み寄り)
自分のことをまず考えるが、他者を配慮するやり方。1と2のやり方の良い部分をミックスしたもの。
「私もOK、あなたもOK」

非主張的/ノンアサーティブなコミュニケーションしかできないと、「自分はやっぱりダメなやつだ」「人の気も知らないで」というような自己評価の低下や相手に対する恨みがましい気持ちが残ります。

対して、アグレッシブなコミュニケーションしかできないと、相手の気持ちや欲求を無視し、自分勝手な行動を取ってしまうので、相手と穏やかなコミュニケーションを続けていくことは当然難しくなります。

それに対して、アサーティブなコミュニケーションとは、自分も相手も尊重し、相手の意見を表明する権利を尊重すること、自分の言論の自由も尊重することを大前提としています。

私と息子のコミュニケーションについて考えると…

さて、大学の先生に教えていただいた本を読みながら、自分や息子の行動について「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」「アサーティブ」の類型に分けてみました。

まず私は、他人からの評価を気にするあまり、自分の言いたいことを飲み込んでニコニコしてしまうところがあります。しかし、心には「私ばっかり我慢して…」というストレスが少しずつ蓄積されていきます。そして、ストレスが限界に達すると、突然「アグレッシブ」に転向します。今度は怒りが収まらなくなってしまうのです。

「思っていることを少しずつ小出しにするようにしたら」と言われますが、どうやって小出しにしたら良いのか分かりません。ある日、突然ドカン!と態度が変わってしまうので人間関係の崩壊を招きかねません。

一方、息子は常に「アグレッシブ」です。ほかの人が自分より点数が高いのは許せない、自分をからかってくる人間はみんな敵だ。自分を否定してくる人間はおかしい。さらに、他者の意見を聞くことなく、自分の意見を一方的に主張しがち。

アサーション・トレーニングの本には、「アグレッシブ」や「ノン・アサーティブ」な生き方をしていると、他者との生活全般にわたって緊張を強いられることになり、「こころの疲れ」が次第にたまっていくとあります。

「こころの疲れ」、それはつまり「生きづらさ」とも捉えられます。だとすれば、「こころの疲れ」を感じないために、他者とのコミュニケーションを「アサーティブ」なものに変えていくのが望ましいということが整理できました。

息子と学ぶアサーション!こんな分かりやすい本があった

とはいえ、「自分も相手も尊重するコミュニケーション」を実践するにはどうしたらいいのか。どうやって子どもに教えたら良いのか。

困っていた私に、大学の先生が「子ども用の本ですから、直接的にアサーションとかアサーティブという言葉は使われていませんが、アサーティブなコミュニケーションの要素がしっかり盛り込まれていると思いますよ。」ととても素敵な本を紹介してくださいました。それがこちらの本です。
学校では教えてくれない大切なこと 2 友だち関係(自分と仲良く)
旺文社 (編集), 藤 美沖 (イラスト)
旺文社
学校では教えてくれない大切なこと 6 友だち関係(気持ちの伝え方)
旺文社 (編集), 藤 美沖 (イラスト)
旺文社
中味は可愛らしい漫画とイラストで構成されていて、小学生が楽しく読むことができます。でも、「アサーティブなコミュニケーション」についての要素が分かりやすく説明されています。

例えば、「気持ち大研究」という項目には、「イライラ星人」「不安ダヨ星人」「ワクワク星人」といったキャラクターが出てきます。個々に、身長と体重があって、よく出没する状況や口ぐせなどが具体的に設定されています。

感情をキャラクター化したこの本を読んでみると…。なんと、息子は客観的に自分の気持ちを観察することができるようになってきたのです。

それまでは、息子が落ち込んだりイライラしたりしているときの様子を見ていると、なんだか意味の分からない感情に一気に飲み込まれてしまい、それをコントロールする術も浮かんでこないように見えました。また、手はわなわな、汗はだくだく、心臓はバクバク、そんな身体の変化に動揺してしまい、ますます感情の制御が難しくなっていたようでした。

本を読んだ後は、感情が高まってきたときに、「あ、イライラ星人が増殖してる!どうやったら退治できるんだっけ??」というように、一歩引いて気持ちの整理ができるようになってきました。

完璧主義な息子の心を溶かすメッセージ

さらに、アサーティブなコミュニケーションで大切な、「自分を尊重する」というプロセスも分かりやすく紹介されています。「いい自分もダメな自分もみんなあなたの大切な一部だよ」「失敗しても大丈夫」「助けてもらってOK!」などのメッセージが漫画の中で出てきて、完璧主義で失敗が許せない息子も「目からうろこ~!!」と言いながら読んでいます。

息子はこの本が大のお気に入りで、夜寝る前に読んで一日を振り返るのが日課になりました。「あ、そうそう、これ俺だ」「うん、俺こういうところで困ってるわ」「あー、そうか、こうすればいいのかあ」とブツブツつぶやいています。きっと、今まで訳も分からず苦しかった気持ちにやっと言葉が与えられたような想いなのでしょう。

息子を育てて常々思うこと。それは、この子が表現できない部分を表現する役を私たち大人が担ってあげているのだということ。表現できないから飲み込まれてしまう、そしてパニックになってしまう。「不安」や「イライラ」などの気持ちもそうでしょうし、自分も友達も尊重するということはどういうことなのか、私たち大人は常にそのやり方を具体的に伝えていくことが求められているのだなと思います。

息子のモヤモヤした気持ちに答えをくれた「アサーショントレーニング」。私自身のコミュニケーションを見直す機会にもなりました。一緒に学びながら息子のサポートや私のためにもどんどん活用していきたいと思います。

参考書籍

改訂版 アサーション・トレーニング ―さわやかな〈自己表現〉のために
平木典子(著)
金子書房
増補改訂 セルフ・アサーション・トレーニング
菅沼 憲治 (著)
東京図書
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