誰にも負けたくない!息子のこだわりを溶かした「アサーショントレーニング」との出合い

ライター:林真紀
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自分の意見と違う意見を言われると、相手を即「敵」扱いの息子。自分でも悪いと分かってる、でもどうしたらいいか分からない。そうか、息子の生きづらさの原因は、他者が異なる意見を言ったときに、どうやってそれを尊重したら良いのか、やり方が分からないからなんだ…。そんな息子に、大学の先生が、あるソーシャルスキルトレーニング(SST)について教えてくれました。

じゃんけんも点数も超・負けず嫌い!?息子に浮き上がったソーシャルスキルの課題

息子が小学校に入学してしばらくしたある日、学校の面談のときのこと。

「息子くんはじゃんけんに負けただけで、この世の終わりみたいな感じになってしまうんです。落ち込んでしまって、なかなか立ち直れない」

という話を、先生からされました。さらに、問題はじゃんけんだけにとどまりませんでした。

「隣のお友達よりもテストの点数が少しでも低いと、落ち込んでしまって立ち直れない」
「ほかの人に『違うよ』と否定されると、パニックになってしまって、怒りがなかなかおさめられない」

といったことが次々と出てきました。息子の課題は、もっぱら「他者を尊重するということはどういうことか」ということを考えることでした。

勝負をすれば、どちらかが勝つし、どちらかが負ける。負けてしまったとしても、それは世界の終わりではない。勝った相手に敬意を表し、次に繋げるための糧にすることが大切です。

また、自分と違う意見を言われたとしても、それは自分の全てを否定するものではない。人はそれぞれみんな異なる意見を持っていることを理解して、尊重できるようになってほしい。

学校での様子を聞いて、そういったソーシャルスキルを学ぶことが、息子にとって一番大切だと思いました。けれども、私が息子にそれをいくら説明したところで、「だって悔しい」という一言で終わり…。

もっとうまく伝える術がないだろうか、と考えていたところで、息子を定期的に見てくださっている大学の先生から、「アサーショントレーニング」を紹介していただいたのです。

SSTにもぴったりな「アサーショントレーニング」って?

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10132112837
「アサーション」とは、一言で言ってしまえば、「自分も相手をも尊重したコミュニケーション方法」のことを言います。

息子を見てくださっている大学の先生いわく、この「自他尊重」という考え方が、発達障害児のSSTにおいてとても重要な意味を持つことになると言います。自分への尊重と相手への尊重、どちらが欠けても、コミュニケーションは苦痛を伴うものに変わってしまいます。

あるアメリカの心理学者は、人間関係の持ち方について、以下の三つに分けることができるとしています。

■攻撃的なコミュニケーション/アグレッシブ
(強がり・尊大・無頓着・他者否定的・操作的・自分本位・支配的)
自分のことだけを考えて、他者を踏みにじるやり方。
「私はOK、あなたはOKではない」

■非主張的/ノン・アサーティブ
(引っ込み思案・卑屈・消極的・自己否定的・他人本位・相手任せ・服従的)
自分よりも他者を常に優先し、自分のことを後回しにする方法。
「私はOKではない、あなたはOK」

■アサーティブ
(正直・率直・積極的・自他尊重・自発的・自他協力・歩み寄り)
自分のことをまず考えるが、他者を配慮するやり方。1と2のやり方の良い部分をミックスしたもの。
「私もOK、あなたもOK」

非主張的/ノンアサーティブなコミュニケーションしかできないと、「自分はやっぱりダメなやつだ」「人の気も知らないで」というような自己評価の低下や相手に対する恨みがましい気持ちが残ります。

対して、アグレッシブなコミュニケーションしかできないと、相手の気持ちや欲求を無視し、自分勝手な行動を取ってしまうので、相手と穏やかなコミュニケーションを続けていくことは当然難しくなります。

それに対して、アサーティブなコミュニケーションとは、自分も相手も尊重し、相手の意見を表明する権利を尊重すること、自分の言論の自由も尊重することを大前提としています。

私と息子のコミュニケーションについて考えると…

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さて、大学の先生に教えていただいた本を読みながら、自分や息子の行動について「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」「アサーティブ」の類型に分けてみました。

まず私は、他人からの評価を気にするあまり、自分の言いたいことを飲み込んでニコニコしてしまうところがあります。しかし、心には「私ばっかり我慢して…」というストレスが少しずつ蓄積されていきます。そして、ストレスが限界に達すると、突然「アグレッシブ」に転向します。今度は怒りが収まらなくなってしまうのです。

「思っていることを少しずつ小出しにするようにしたら」と言われますが、どうやって小出しにしたら良いのか分かりません。ある日、突然ドカン!と態度が変わってしまうので人間関係の崩壊を招きかねません。

一方、息子は常に「アグレッシブ」です。ほかの人が自分より点数が高いのは許せない、自分をからかってくる人間はみんな敵だ。自分を否定してくる人間はおかしい。さらに、他者の意見を聞くことなく、自分の意見を一方的に主張しがち。

アサーション・トレーニングの本には、「アグレッシブ」や「ノン・アサーティブ」な生き方をしていると、他者との生活全般にわたって緊張を強いられることになり、「こころの疲れ」が次第にたまっていくとあります。

「こころの疲れ」、それはつまり「生きづらさ」とも捉えられます。だとすれば、「こころの疲れ」を感じないために、他者とのコミュニケーションを「アサーティブ」なものに変えていくのが望ましいということが整理できました。
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