ポイントは3つ!自閉症の息子の「できる!」を育んだリンゴの皮むき練習法

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わが子には、あれもこれもできるようになってほしい…、そんな風に思ってしまうこと、ありますよね。子どもの将来を思っての親心ではあるものの、つい焦ってしまい、過度な要求をしてしまったり、いきなり高いハードルを与えてしまったり…。

自閉症の息子は、「できない」とパニックを起こしてしまうことがあります。小さい頃はそれで無理をさせてしまったこともあります。今は、わが家ではスモールステップを踏ませながら、少しずつチャレンジをするようにしています。昨年は「リンゴの皮むき」の練習をしました。

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自閉症の息子ができることを増やしたい

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

息子が特別支援学校高等部3年生だった時のこと。私はリンゴの皮むきをしていて、ふとこんなことを思いました。

「親である私がいつまでも切ってやるのでは、息子の自立を阻んでしまうのではないか?将来グループホームに入るにしても、これくらいは1人でできるようにならないと困るだろう。」

そう考えだすと、居ても立ってもいられなくなり…。私は、息子にリンゴの皮むきの練習をさせることにしました。

リンゴの皮むき、どうしたらできるようになる?

リンゴの皮むきを練習させるにあたり、私にはひとつ心配事がありました。それは、「息子が練習の途中で上手くできず、私がダメ出ししたなら、パニックになってしまうだろう」ということです。

それはそうですよね。できない課題を与えられて、一生懸命に取り組んでいるのにダメ出しされてしまうのでは、人間誰しも心が折れてしまうと思います。「今度は失敗しないように頑張ろう!」という前向きな気持ちには、なかなかなれないでしょう。

そこで私は、いきなり高い目標を掲げるのではなく、スモールステップで成功体験を積みながら次の課題へと進んでいけるよう工夫してみました。

わが家で実践したリンゴの皮むきの練習法

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1. 予告する

「〇月になったらリンゴの皮むきを練習しよう」と、1ヶ月前から予告しました。わが家の場合、息子は学校生活最後の高等部3年生でしたので、「就労の実習も始まるし、だんだんと大人に近づいてきているから、リンゴの皮むきを練習しよう」というように話をしました。

2. 最初の1週間の取り組み

まず、リンゴを半分に切る練習をしました。リンゴが大きすぎたり形がいびつだったりするとうまく切れないので、同じ種類で、なるべく切りやすそうな形のものを買ってくるなど、準備にも気を配りました。

ここでのゴールは、とにかく「2つに切る」ということだけです。大きさがバラバラに切れてしまったりしても何も言わず、ただ切れたことだけをオーバーに褒める。そして翌日からは「昨日よりも上手く切れたね!」と褒めちぎることを心がけました。
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3. 2週間目の取り組み

半分に切ったものを更に半分に切って、4分の1にする練習をしました。 この時も「昨日よりも上手に切れているね!」と褒めるようにしました。
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4. 3週間目の取り組み

4分の1にした後、両端の芯を切り落とす練習をしました。
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5. 4週間目の取り組み

芯を切り取る練習をしました。一気に進めないで、あくまでも「少しずつ次のことに取り組む」のがポイントです。
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6. 5週間目

ここでいよいよ、最終ゴールである「皮をむく」に挑戦しました。
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分厚く切っても、逆に実が薄くなってしまっても、決してダメ出しはしません。そして「昨日よりも上手にできたね」とだけ言うようにしました。
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こうしてスモールステップを積み重ねていくことで、無事にリンゴの皮をむけるようになりました。ひとつひとつのステップにじっくり取り組み、5週間という時間をかけましたが、おかげで息子は失敗してもパニックになることなく、リンゴの皮むきができるようになったのです。
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スモールステップを積み重ねる方法は、さまざまな場面で有効

今回リンゴの皮むきを練習させる際に意識したのは、この3つのポイントです。

1. あくまでもスモールステップを積み重ねる。前の週にやらせたことを必ず新しい練習の中に組み込み、「前より上手になったね」と褒めることを忘れない。
2. 連続して毎日取り組む。
3. 失敗したとしても、本人のがんばりを決して否定しない。


今回わが家ではリンゴの皮むきの練習をしましたが、この方法はさまざまな場面で活用することができると思います。

私は昔、特別支援学校教諭免許を取るための実習で、「シャツの5個のボタンをとめる練習」を特別支援学校の生徒と行ったことがあります。実はこのときも、1週間ごとに課題を増やすやり方をしていたのです。具体的には次のような手順で練習をしていました。

シャツの5個のボタンをとめる練習

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●1週間目
1番下のボダンだけ自分でとめます。1番上のボタンは首元にあるため、自分の目で確かめながらとめるのが難しく、下のボタンから練習をする方がやりやすいのです。

●2週間目
下から2番目までを自分でとめます。

●3週間目
下から3番目までを自分でとめます。

●4週間目
下から4番目までを自分でとめます。

●5週間目
5個のボタン全部を自分でとめます。

すべり台をすべる練習

もっと小さな子どもの場合、すべり台の練習をする時にもこの方法を試してみたらどうでしょう。子どもがすべり台を怖がっている時、いきなり上まで登らせてしまうとこわくなってしまうかもしれませんから。
●1週間目
親はすべり台の横に立ち、下から3分の1くらいのところに子どもを座らせる。そこから、親が脇を持ってあげてすべらせる。

●2週間目
同じ要領で、今度は下からちょうど半分くらいのところから、親が脇を持ってあげてすべらせる。

●3週間目
同じ要領で、今度は上から、親が脇を持ってあげてすべらせる。

●4週間目
上から親と一緒にすべる。

●5週間目
1人ですべる。

時間がかかってもいい。急がば回れ!

息子がリンゴを切れるようになるのに1か月以上かかりましたが、これだけ時間をかけたからこそできるようになったのだと思います。最初から完璧にやらせようとしすぎてダメ出しをし、親子喧嘩になるということも避けられました。良かった良かった!まさに「急がば回れ」です。

今では、リンゴの皮むきは完全に息子に任せていて、私よりも上手にむけるようになりました。「自分は果物をむける」ということが自信になったようで、柿や梨をむく係も率先してやってくれます。

私も「できてあたり前」だと思わず、「ありがとう、今日もうまくむけているね」の言葉を忘れないようにしています。

著者親子のルポルタージュ

発達障害に生まれて
松永正訓
中央公論新社

このコラムの著者が書いた本

子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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