自閉症息子の「小銭だらけのお財布」をなんとかしたい!お金の計算を無理強いした結果…
ライター:立石美津子
自閉症の息子は、「58+36」のような計算ができません。でも、1人で買い物くらいはできるようになってほしいと思い、中学生のとき「毎日コンビニに寄って、好きなデザートを買ってくる」という日課を実践していたのですが、さらに私は「小銭で支払えるように」と猛特訓をしてしまい…
中学生の息子に、お金を使う練習をさせたい!
『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)のノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。
自閉症の息子が中学生になった頃、私は「息子に1人で買い物に行けるようになってほしい」と考えるようになりました。そこで、お金の使い方を理解させるために、「放課後等デイサービスからの帰宅途中にあるコンビニで、夕食後に食べる好きなデザートを買う」という日課を思いついたのです。
自閉症の息子が中学生になった頃、私は「息子に1人で買い物に行けるようになってほしい」と考えるようになりました。そこで、お金の使い方を理解させるために、「放課後等デイサービスからの帰宅途中にあるコンビニで、夕食後に食べる好きなデザートを買う」という日課を思いついたのです。
普段から私と一緒に買い物に行くことはありましたから、「品物を選んでレジに持っていき、お金を払う」という流れは息子も分かっています。問題は、「120円のものと200円のものを買ったら320円になる」といった計算のできない息子が、必要な金額分のお金を払うことができるかどうかでした。
息子はリュックサックにヘルプカードをぶらさげているので、もしかすると、これを見た親切な店員さんが、息子の財布から必要なお金を出してくれるかもしれません。
息子はリュックサックにヘルプカードをぶらさげているので、もしかすると、これを見た親切な店員さんが、息子の財布から必要なお金を出してくれるかもしれません。
でも、それでは練習にならないので、息子が立ち寄るコンビニの店長さんに「息子に気づいたとき、状況が許せば、自分でお金を出す練習をさせてもらえないか」と相談し、快諾してもらいました。
自分でお金は出せるけれど…?
息子は、自分で財布からお金を出して買い物をすることができました。でもある「苦手意識」を持っていることが分かったのです。それは…
これは当時の息子の財布なのですが、中身は小銭だらけ。お金をキッチリ出すことに対して自信がないのか、レジで焦ってしまうのか、大きいお金ばかり使っているようなのです。その結果、財布がおつりの小銭でいっぱいになっていました。
でも…。これができるということは、息子は
・100円は10円よりも大きい金額だと分かっている。
・1000円は100円より大きい額だと分かっている。
ということです。
それであれば「1人で買い物をする」という目的は果たすことができるので、私はひとまずホッとしました。でも、せっかくならば、少しずつでも良いから小銭を使う練習もしてほしいと考え、しばらく試行錯誤しました。
でも…。これができるということは、息子は
・100円は10円よりも大きい金額だと分かっている。
・1000円は100円より大きい額だと分かっている。
ということです。
それであれば「1人で買い物をする」という目的は果たすことができるので、私はひとまずホッとしました。でも、せっかくならば、少しずつでも良いから小銭を使う練習もしてほしいと考え、しばらく試行錯誤しました。
苦手を克服するための練習が、思わぬ結果に…
当時私が考えたのは、「お金のつかみ取り」。たくさんの小銭を入れたケースから片手でつかみ取りをして、いくら取ったのかを数えて金額を言うというルールです。
私も欲が出て「せっかくならば、1000円以上のお金も学習させよう」と考え、こんな風に千円札も加えて計算させるようにしていました。
私も欲が出て「せっかくならば、1000円以上のお金も学習させよう」と考え、こんな風に千円札も加えて計算させるようにしていました。
「つかみ取り」と聞くと、息子はお祭りのスーパーボールすくいや、スーパーのジャガイモ入れ放題の感覚になってしまうようで…。「たくさん取らなくては!」と思うのか、めいっぱいにつかんで、毎回大量のお金を計算することになってしまいました。
つかんだお金が多いほど計算するのも大変なので、何度も何度も数え直すことになり、息子はイライラしてしまいます。そしてますます苦手意識が強くなり、悪循環になっていきました。
しばらく続けたものの、練習の甲斐もなく、息子は結局、実際の買い物の場面で小銭を使おうとはしませんでした。そしてこの経験から、私は「小銭の使い方を練習することは、今の息子にとってはプラスにならない」ということを学んだのです。
しばらく続けたものの、練習の甲斐もなく、息子は結局、実際の買い物の場面で小銭を使おうとはしませんでした。そしてこの経験から、私は「小銭の使い方を練習することは、今の息子にとってはプラスにならない」ということを学んだのです。