その気持ちにフタをしないーー「自分しか見ない日記」は最高のカウンセラー

その気持ちにフタをしないーー「自分しか見ない日記」は最高のカウンセラーのタイトル画像

障害がある子どもの子育てでは、大変なことも、凹むことも、壁にぶち当たることも…たくさんあると思います。そんなとき、SNSで気持ちをシェアする方法もありますが、ときには心無いコメントをもらって凹んでしまうことも…。

私は、つらい気持ち、吐き出したい気持ちは、「自分だけが見る日記」につけるようにしています。その理由とは…。

立石美津子
11891 View

障害児子育てはやっぱり大変

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

一人息子は、知的障害を伴う自閉症です。

私は定型発達の子どもを育てたことがないので比較ができないですが、でもやっぱり、障害のある子を育てるとき、壁にぶち当たることは多くあるのではないかと思います。

例えば、健常児を育てている親が「うちの子、好き嫌いが多くて困る」と言っているのを耳にすると、「うちなんか好き嫌いどころか『シュウマイしか食べません』状態なんだけど…!」と心の中で叫びます。できないことの度合いが大きいのです…。

日記をつけ始めたきっかけは、中学時代の寄宿舎生活

日記をつけるようになったきっかけは45年前、中学時代に遡ります。当時私は、親元離れて寄宿舎生活を始めました。つい1年前はランドセルを背負った小学生だったので、その生活はきついものでした。

「友達とずっと毎日寝起きできるなんて、修学旅行みたいで楽しいかも。(とても厳しい家庭で育ったので)親の過干渉から逃れられる」という夢のような暮らしを想像していたのに…

現実はそんなに甘いものではありませんでした。テレビも自由に見ることができない、風呂の時刻も勉強時間も就寝起床時刻も決められている。洗濯、掃除、食器洗いも今まで全部親がやってくれていたのに、自分でやらなくてはならないのです。

「家でテレビを見ながらこたつでみかんを食べている」こんなあたり前の日常が、どんなに自由だったかと思い知らされました。

ホームシックにかかり、10円玉を手にいっぱい抱えて公衆電話の前に並び、20時~21時の電話をかけてもよい時間帯に毎日、「お母さん、お家に帰りたいよ~」と泣きついていました。遠距離なのでカチャンカチャンと硬貨が落ちる音が悲しかったです。

鍵付き日記

中学生時代から書いている鍵付きの日記
Upload By 立石美津子
そんなとき、救ってくれたのが日記でした。鍵付き日記にだけは、寄宿舎生活でのいろいろを赤裸々に綴ることができました。

「お母さん~お家に帰りたいよ~、退学したいよ!!○○が嫌だったよ~!」自分の気持ちを、紙にぶつけていました。
鍵付きの日記
Upload By 立石美津子
すると感情が整理整頓されて、不思議と気持ちが収まりました。もう一人の自分に聞いてもらっている感覚。否定もしない、教訓も垂れない、無理に励まさない、そんなあるがままを受け入れてくれる、まるで最高の精神科医、カウンセラーに話を聞いてもらっている感覚になりました。

このときのポイントは“絶対に人に見せない日記であること”。お墓の中に持っていくつもりで書き綴っていました。

感情に蓋をしない

子育てに悩んでいるときは、いつもそのことばかりにとらわれて、食事をしていても心ここにあらずの状態になってしまいます。でも私は、この湧いてくるどうしようもない感情や不安は無理に蓋をせず、車窓に流れる景色のように放っておく、プカプカとプールに浮かぶ落ち葉のようにそのままにするのがよいと思っています。

嫉妬、妬み、悲しみ、苦しみ、嘆き、怒りなど、マイナスの感情は特にややこしいものですが、これらも否定して押し殺さないこと。醜い感情を恥じて自分を責めることもありません。押し殺そうとすると、どこかでひずみが出てしまうからです。

寄宿舎時代から愛読していた、D・カーネギーの著書『道は開ける』。当時、この本を読んで私が影響を受けた言葉や感じたことが本の扉部分に残っていました。
「道は開ける」(D・カーネギー)
Upload By 立石美津子
書き留めた、心に留まったフレーズなど
Upload By 立石美津子
不安を放っておくということは、不安を無視して無理やり抑えつけることではない。不安を漠然と放っておく。

その瞬間は気分が悪いかもしれないが、そのうち良くなる。人間の脳はトースターから食パンが飛び出してくるように、時が来れば自然に最適な考えが出てくるものである。つまりそれが無意識の世界の働きであり、それを意識の世界の下で解決しようとすると精神的に無理がくる。”

自分しか見ない日記帳なら、誰にも迷惑はかけない

現実生活の中で、炎のような感情をいちいち誰かにぶつけていたら、相手はたまりません。寄宿舎でも、親友に愚痴を吐いたときは「また、その話?」と拒否されてしまいました。

今はSNSもありますが、いろいろな人の目にも入るので、勢いで書いてしまって、あとから「やっぱり書かなきゃよかった…」と後悔することもあります。怒りをぶちまけて壁を蹴ったり、電話を投げたりする人も中にはいるかもしれません。でもそれでは周りに迷惑がかかってしまいます。だから、紙にありのままの感情をぶつけるのです。

怒りを感じるのも、悔しくて悲しくて涙が出るのも、人としてあたり前の感情です。これを抑えるとどこかでひずみが出てしまいそうです。アルコールに頼ればアルコール依存症になってしまうかもしれません。自分だけが見る日記に思いのままを綴るのであれば、体にも悪くないですし、誰に迷惑をかけるわけでもありません。

いつか役に立つことがあるかも

講演会の様子
Upload By 立石美津子
私は、息子が生まれてからもつらい気持ちを書き続けました。今まで書いた日記は1,926,047文字。本にしたら30冊以上の量になります。

日記をつけ始めた当時は想定もしなかったけれど、今は、息子が自閉症と診断されて苦悩した17年間のあれこれを見返して、取材で話したり、講演したり、書籍に書いたりすることもあります。
自分だけのために綴っていた日記でしたが、時を経て、同じように悩んでいる誰かの役に立っているのは感慨深いです。

母としてのさまざまな感情を、誰にも見せない日記につけておく――。子どもの成長のうれしいことも悲しいことも、すべて記すことで、浄化でき、すっきりした気持ちでまた翌日から頑張れるのかもしれません。

紙に書くのが大変という人は、ワードやスマホのメモ帳、自分だけしかみない非公開ブログなどで試してみてもいいかもしれません。誰にも見せない日記、始めてみませんか?

著者親子がモデルとなった書籍

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムを書いた人の著書

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
自閉症とは?主な症状と具体的な特徴、診断基準や分類について詳しく解説しますのタイトル画像

関連記事

自閉症とは?主な症状と具体的な特徴、診断基準や分類について詳しく解説します

自閉症の息子、「学校とも会社とも違う2年間」でどんな力を身につけられる?高等部卒業後の充実した毎日のタイトル画像

関連記事

自閉症の息子、「学校とも会社とも違う2年間」でどんな力を身につけられる?高等部卒業後の充実した毎日

当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

発達障害のキホンを知る

発達障害のキホンを知る

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。