感情に蓋をしない

子育てに悩んでいるときは、いつもそのことばかりにとらわれて、食事をしていても心ここにあらずの状態になってしまいます。でも私は、この湧いてくるどうしようもない感情や不安は無理に蓋をせず、車窓に流れる景色のように放っておく、プカプカとプールに浮かぶ落ち葉のようにそのままにするのがよいと思っています。

嫉妬、妬み、悲しみ、苦しみ、嘆き、怒りなど、マイナスの感情は特にややこしいものですが、これらも否定して押し殺さないこと。醜い感情を恥じて自分を責めることもありません。押し殺そうとすると、どこかでひずみが出てしまうからです。

寄宿舎時代から愛読していた、D・カーネギーの著書『道は開ける』。当時、この本を読んで私が影響を受けた言葉や感じたことが本の扉部分に残っていました。
「道は開ける」(D・カーネギー)
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書き留めた、心に留まったフレーズなど
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不安を放っておくということは、不安を無視して無理やり抑えつけることではない。不安を漠然と放っておく。

その瞬間は気分が悪いかもしれないが、そのうち良くなる。人間の脳はトースターから食パンが飛び出してくるように、時が来れば自然に最適な考えが出てくるものである。つまりそれが無意識の世界の働きであり、それを意識の世界の下で解決しようとすると精神的に無理がくる。”

自分しか見ない日記帳なら、誰にも迷惑はかけない

現実生活の中で、炎のような感情をいちいち誰かにぶつけていたら、相手はたまりません。寄宿舎でも、親友に愚痴を吐いたときは「また、その話?」と拒否されてしまいました。

今はSNSもありますが、いろいろな人の目にも入るので、勢いで書いてしまって、あとから「やっぱり書かなきゃよかった…」と後悔することもあります。怒りをぶちまけて壁を蹴ったり、電話を投げたりする人も中にはいるかもしれません。でもそれでは周りに迷惑がかかってしまいます。だから、紙にありのままの感情をぶつけるのです。

怒りを感じるのも、悔しくて悲しくて涙が出るのも、人としてあたり前の感情です。これを抑えるとどこかでひずみが出てしまいそうです。アルコールに頼ればアルコール依存症になってしまうかもしれません。自分だけが見る日記に思いのままを綴るのであれば、体にも悪くないですし、誰に迷惑をかけるわけでもありません。

いつか役に立つことがあるかも

私は、息子が生まれてからもつらい気持ちを書き続けました。今まで書いた日記は1,926,047文字。本にしたら30冊以上の量になります。

日記をつけ始めた当時は想定もしなかったけれど、今は、息子が自閉症と診断されて苦悩した17年間のあれこれを見返して、取材で話したり、講演したり、書籍に書いたりすることもあります。
自分だけのために綴っていた日記でしたが、時を経て、同じように悩んでいる誰かの役に立っているのは感慨深いです。

母としてのさまざまな感情を、誰にも見せない日記につけておく――。子どもの成長のうれしいことも悲しいことも、すべて記すことで、浄化でき、すっきりした気持ちでまた翌日から頑張れるのかもしれません。

紙に書くのが大変という人は、ワードやスマホのメモ帳、自分だけしかみない非公開ブログなどで試してみてもいいかもしれません。誰にも見せない日記、始めてみませんか?

著者親子がモデルとなった書籍

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社
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このコラムを書いた人の著書

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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