その気持ちにフタをしないーー「自分しか見ない日記」は最高のカウンセラー

ライター:立石美津子
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障害がある子どもの子育てでは、大変なことも、凹むことも、壁にぶち当たることも…たくさんあると思います。そんなとき、SNSで気持ちをシェアする方法もありますが、ときには心無いコメントをもらって凹んでしまうことも…。

私は、つらい気持ち、吐き出したい気持ちは、「自分だけが見る日記」につけるようにしています。その理由とは…。

障害児子育てはやっぱり大変

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

一人息子は、知的障害を伴う自閉症です。

私は定型発達の子どもを育てたことがないので比較ができないですが、でもやっぱり、障害のある子を育てるとき、壁にぶち当たることは多くあるのではないかと思います。

例えば、健常児を育てている親が「うちの子、好き嫌いが多くて困る」と言っているのを耳にすると、「うちなんか好き嫌いどころか『シュウマイしか食べません』状態なんだけど…!」と心の中で叫びます。できないことの度合いが大きいのです…。

日記をつけ始めたきっかけは、中学時代の寄宿舎生活

日記をつけるようになったきっかけは45年前、中学時代に遡ります。当時私は、親元離れて寄宿舎生活を始めました。つい1年前はランドセルを背負った小学生だったので、その生活はきついものでした。

「友達とずっと毎日寝起きできるなんて、修学旅行みたいで楽しいかも。(とても厳しい家庭で育ったので)親の過干渉から逃れられる」という夢のような暮らしを想像していたのに…

現実はそんなに甘いものではありませんでした。テレビも自由に見ることができない、風呂の時刻も勉強時間も就寝起床時刻も決められている。洗濯、掃除、食器洗いも今まで全部親がやってくれていたのに、自分でやらなくてはならないのです。

「家でテレビを見ながらこたつでみかんを食べている」こんなあたり前の日常が、どんなに自由だったかと思い知らされました。

ホームシックにかかり、10円玉を手にいっぱい抱えて公衆電話の前に並び、20時~21時の電話をかけてもよい時間帯に毎日、「お母さん、お家に帰りたいよ~」と泣きついていました。遠距離なのでカチャンカチャンと硬貨が落ちる音が悲しかったです。

鍵付き日記

中学生時代から書いている鍵付きの日記
Upload By 立石美津子
そんなとき、救ってくれたのが日記でした。鍵付き日記にだけは、寄宿舎生活でのいろいろを赤裸々に綴ることができました。

「お母さん~お家に帰りたいよ~、退学したいよ!!○○が嫌だったよ~!」自分の気持ちを、紙にぶつけていました。
鍵付きの日記
Upload By 立石美津子
すると感情が整理整頓されて、不思議と気持ちが収まりました。もう一人の自分に聞いてもらっている感覚。否定もしない、教訓も垂れない、無理に励まさない、そんなあるがままを受け入れてくれる、まるで最高の精神科医、カウンセラーに話を聞いてもらっている感覚になりました。

このときのポイントは“絶対に人に見せない日記であること”。お墓の中に持っていくつもりで書き綴っていました。
次ページ「感情に蓋をしない」

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