ADHD息子の超強力な「買って!」攻撃、我慢しなかったのにはワケがあった…!?10年後に分かった意外な理由

ライター:かなしろにゃんこ。
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ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太と出掛けると、もれなく「あれ買ってー!」とおねだりの嵐!
物欲がハンパない息子のしつこいおねだり、正直キツイ!根負けしてオモチャを買ってしまうのです...どうしたら良いのか頭を抱えていたあの頃。成人した息子に聞いてみたところ、しつこいおねだりをするのは独特の考えがあったからでした。

この記事では、発達障害のあるお子さんのエピソードを専門家の解説と共にご紹介します。

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

ADHD(注意欠如多動症)の特徴

ADHD(注意欠如多動症)は、集中して話を聞くことができない、作業が不正確、なくしもの、忘れ物が多いといった「不注意」、体を絶えず動かす、席を立ってしまう、おしゃべり、順番を待てないといった「多動性」「衝動性」の特性があり、日常生活に困りごとが生じる発達障害の一つです。特性の表れ方には個人差がありますが、これらの症状は12歳になる前に表れます。

ADHD(注意欠如多動症)の特性の多くは、幼い子どもにみられる特徴と重なります。それらと区別することが難しいため、幼児期にADHD(注意欠如多動症)と診断することは難しく、診断の多くは就学期以降にされることが多いといわれています。

※かつては「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2013年に刊行された『DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)で、「注意欠如多動症」に変更されました。

ADHD(注意欠如多動症)の子どもへの接し方

ADHD(注意欠如多動症)の子どもへは、「良いところ・できているところ・頑張っているところなどを褒める・認める」接し方を心がけましょう。ADHD(注意欠如多動症)の子どもは叱られることが多く、そのため自己肯定感が育まれづらい面があります。小さな成功体験を積むことで、やる気や自信がつき、それが本人にもいい影響を与えてくれます。

①目標を決め、できたら褒める
「食事のあと食器を台所まで運ぶ」といった目標を決め、できたその都度、また継続して努力しているときも褒めましょう。

②スケジュールを決める
例えば、家でも時間割を定め「19時になったらお風呂に入る」と決めておきます。やるべき生活のリズムが分かって心が安定し、落ち着きがもてるようになります。

③ルールは分かりやすく
子どもと一緒に話し合って、守ってもらいたいこと、やってはいけないことを決めましょう。決めたことを紙に書き、貼っておきます。守れた場合は褒めましょう。

④ごほうび制でモチベーションを維持する
例えば、夜に時間通りにお布団に入れたら、シールを貼るなどです。シールが10個たまったら「どこどこへ遊びに行く」など、ご褒美を決めましょう。

⑤注意する回数を減らすようにする
日常的に注意する回数が多くなりすぎると、本当にしてほしくない行動がうまく伝わらない可能性があります。例えば、勉強をしない、片づけないなど日常のことには声をかけず、他人を傷つける、ひどいことを言う、危険な行動をとる、約束したことを破るなど、本当に注意すべき時のみ声をかけましょう。また、注意するだけでなく、どうすれば良かったかも伝えてください。
藤井 明子先生(どんぐり発達クリニック院長、小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)
藤井 明子先生(どんぐり発達クリニック院長、小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)
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以下は、ADHD(注意欠如多動症)のお子さんが買い物先で欲しいものを我慢できないという体験談です。専門家のコメントと共にご覧ください。

買うまで続く、「オモチャ買ってーー!」のおねだりに根負けしていた日々

ADHDの息子リュウ太くんがおもちゃを買ってと母にねだる様子
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子どもなら誰でも一度くらい公の場で、「オモチャ買って―――!!」と泣いたりして親を困らせることはあると思いますが、ADHDと広汎性発達障害があるうちの息子は我慢が苦手。

全てに我慢が苦手なわけではなくて、物欲にだけは我慢を頑張ろうとしてくれません。

欲しい物があると、コレだけは買ってほしい、買ってくれたっていいじゃないか、など手に入れるまで何度も何度も体全部を使って跳んだり私の腕をつかんだり私の周りを回ったりしながら"交渉"してくるので、しつこさに根負けしてしまう。
ADHD息子リュウ太くんが、「買ってくれたらしつこくしないから」と母に交渉する様子
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"交渉"というと「お手伝いするから」や「勉強頑張るから」など気の利いた約束をするのかな?と思うかもしれませんが、息子の交渉は「買ってくれたら買って買ってをしつこく言わないから」というものです。

買ってあげたら、そりゃ言わなくなるだろうね…。

しつこくされたくない、息子にしばらく大人しくしていてほしいあまりに、私はついつい財布の紐をゆるめてしまう(反省)。

一度欲しいと思うと我慢ができない息子。でも買い物に行く度にオモチャを買わされたらたまらないし、我慢を覚えてほしいので、2回に1回は「お金が無いフリ」をして諦めてもらうようにしました。
お金がなくておもちゃを買えないと言われたリュウ太君が愚痴を言う様子
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その場は仕方なく諦めてくれても、買ってもらえないとなるとこの世の終わりかってぐらいに悲しみを訴えてくるので、息子のしつこさから逃れられません。

「他の子はオモチャを買ってもらえるのにボクだけ買ってもらえない、それはうちが貧乏だからだ…なんでうちは貧乏なんだろう」などなど、たかが300円のオモチャを拒否しただけで、「ボクは数十年前の日本の貧しい家庭に生まれた子のようだ…!」と悲劇の人になってしまうらしい。メンタル弱すぎる。

よくそこまでハッキリと親の経済状況をディスりながら自分の想いを口にできるわね…と感心するほどです。
楽しい予定は我慢できるが、物欲は我慢ができないリュウ太くん
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息子の場合、オモチャのイベントやレストラン、遊園地などで体験して好奇心を満たすことにおいては、順番やルールを守るなどの我慢はできるのです。楽しいことのためには我慢ができるのに、物欲だけはキビシイってどうしてなのでしょう?

ちゃんと子どものときに物欲も我慢することを覚えてもらわないと、我慢ができない大人になってしまうのでは…?そんなことを心配したこともありました。

けれど育ててみた結果、この説は必ずしもそうとは言い切れないと思いました。
大人になったリュウ太くんに、物欲を我慢できなかった理由を聞いてみる母
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「物欲」を我慢できなかったあの頃の気持ち、大人になった息子に聞いてみたら

現在は成人した息子に、買ってもらう行為を我慢しなかったことについて聞いてみると、どうも理由があるそうなんです。

「我慢って必要じゃないと思っていたから、買ってくれそうな人には我慢なんてしないよ」とのこと。

なんじゃと!計算しとったんか(汗)

「本当に買ってくれない人には初めから買ってほしいとは言わない、お金が無くて買えないときは諦められる。だけど頑張って交渉して買ってもらえたときはとても嬉しい!その瞬間が嬉しいんだよね」と。

「そもそも我慢って必要なのかな?って思うこともあるよ、大人はなんでも我慢我慢って言うけれど、子どもが欲しいことややりたい事を達成するために頑張ることの何がいけないの?って思ったりするわけ」とも言います。
子どもの頃のリュウ太君が、母はおねだりを続けたらおもちゃを買ってくれるだろうと思い、交渉し続ける様子
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息子の中には我慢しようなんて気持ちはさらさらなかったということです。そんなことよりも、親に交渉して勝ち取ったという達成感を味わっていたそうなんです。ADHD息子の狩猟本能…!?が刺激されていたのでしょうか…。

当時の息子は、「欲しいものややりたいことを達成するために全力で頑張る!」ことに対して何より達成感を感じていた…だから、イベントなどの順番待ちは我慢できても、欲しいものを買ってもらえない状況では我慢ができなかったということだったようです。

うーん、なるほど。だから折角買ってあげたオモチャにすぐ飽きるのか…そのオモチャ自体で遊ぶ前に、欲しいものを手に入れたことに対しての達成感で満ちていたんだな。

成人して欲しいものは自分で購入するようになった息子は、金欠で欲しいものが買えないときは諦めるようになりつつあります。欲しいものがあることは、いけないことじゃありません。働く意欲に繋がるのである程度は必要ですよね。

現在、息子は車をいじるのが趣味なので、部品など高額で欲しい物が多いため毎月金欠です…それでも自分のお財布と相談し、物欲を少しずつ我慢するようになってきた息子の姿を、「よしよし」と陰で応援しています。

それからもう一つ、昔を振り返って思うことがあります。小さい頃は、今よりずっと人とのコミュニケーションがヘタだった息子。もしかすると、物を「買って買って」と求め、交渉することで、親とコミュニケーションを取ろうとしていたのかもしれない、と。もしかしたら、小さい頃のリュウ太は自分のワガママがどこまで通るか試すことで、「ボクを見て!」と私に甘えていたのかもしれません。
執筆/かなしろにゃんこ。

(監修:藤井先生より)
成人した息子さんの言葉、「買ってくれそうな人には我慢なんてしない」とは、買ってくれそうなお母さんへの甘え、コミュニケーションだったのかもしれませんね。子育てって、日々試行錯誤で、これで良いのかなと対応に悩むことが多くあるかと思います。幼少期にはこれで良いのかなと手探りだったかもしれませんが、成人し成長した息子さんの姿を見て、「よしよし」と陰で応援する未来に繋がっていたんですね。このコラムに励まされるお母さんもたくさんいると思います。ありがとうございました。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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