保護者も熱望!障害がある子のコミュニケーションをもっと豊かに――特別支援学校の先生考案「きもち・つたえる・ボード」。製品化に向け、クラウドファンディング実施中

ライター:平野佳代子
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tobiraco(トビラコ)の代表・平野です。

tobiracoでは、特別支援学校の先生が自作した教材や教具を先生とともに製品化してインターネットで販売しています。コミュニケーションゲームがトレンドとなった今、「発達障害、知的障害の子にこそ楽しんでほしい」という思いを伝えたい!そしてツールを広く普及させたい!と考え、クラウドファンディングを立ち上げました。どの子もコミュニケーションゲームを楽しめるようになるツールの販売を目指しています。

不思議と盛り上がるボード。製品化のきっかけはワークショップでした

tobiracoは、年に数回、製品を考案した先生を講師に招いてワークショップを開催しています。製品を販売して終わりではなく、先生の思いを伝えることでより効果的に活用していただきたいからです。

ワークショップで使ったあるツールを「製品化してください」と、参加者たちからリクエストされたのは今年3月。これからお話しする「きもち・つたえる・ボード」が誕生するきっかけとなりました。

講師は佐藤義竹先生(筑波大学附属大塚特別支援学校)。ご自身が考案したコミュニケーションゲーム「すきなのどっち?」のワークショップでのできごとです。
ワークショップの様子
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リクエストされたのは、リアクションボード(当時の呼称)。相手の答えに反応(リアクション)を示すのに掲げる、プラスチック製の小さなうちわ型のボードです。
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ボードには「なるほど〜」「すてきだね」「いいね!」などと書かれています。

ワークショップは、ボードなしとボードありの2回行いましたが、盛り上がったのは、断然、ボードありの方でした。参加者は、ボードを手にし、身を乗り出していました。
ワークショップの様子
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リアクションボードを考えたのも佐藤先生です。自作して教室で使っていました。子どもたちの反応がとてもよく、いつかは製品化をと考えていらしたことは知っていました。そこへ参加者たちの熱いリクエスト。

背中を、ぐいと押されるようにして製品化に向けて動き始めました。
発達障害・知的障害の子が、コミュニケーションゲームで自分の気持ちを伝えるボード
https://www.makuake.com/project/tobiraco2/

聴くことに課題のある子、意思表明に課題のある子に使ってほしい

専門的には「傾聴の手立て」という目的で自作された教材。それがリアクションボードです。

筑波大学附属大塚特別支援学校で行われているコミュニケーションゲームは、ゲームと名がついていますが、「コミュニケーション能力を身につける」ことに重きがおかれた授業です。

授業でリアクションボードを使ったところ、相手の話を最後まで聴けない子や自分の思いを伝える(意思表明)ことがうまくできない子たちに効果があることがわかりました。

その効果とは、次のようなものです。

・答えている人の話を最後まで聴くようになった。
・答えている人に注目するようになった。
・リアクション(反応)を相手に示すようになった。
・ゲームに主体的に取り組むようになった。


下のグラフは「指導2」からリアクションボード を使って、子どもたちの変化を分析したものです。
グループA「「自分の思いを伝えること」に教育的ニーズがあるグループ」の結果のグラフ
グループA「「自分の思いを伝えること」に教育的ニーズがあるグループ」
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グループB 「相手の話を聴くこと」に教育的ニーズがあるグループの結果のグラフ
グループB 「相手の話を聴くこと」に教育的ニーズがあるグループ
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ボードで自分の感想を示そうとすると、自然と相手の話を最後までよく聴くようになります。また、自分の感想に近いものはどの言葉が書かれたボードなのかを考えるようにもなります。

もうひとつ、佐藤先生から伺ってなるほどと思ったのは、話を聴いている間、ボードを手にしていると落ち着く子がいるそうです。コミュニケーションと直接関係ないかもしれませんが、ボード効果の副産物といえそうです。
コミュニケーションボードをもつお子様
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相手の目にどう映っているのかを考える

ボードの特徴のひとつが、表と裏で言葉とイラストが異なっていることです。たとえば、「なるほど〜」の反対面は「え〜!」というように。異なる両面。これも教材の大きな狙いです。
なるほど~と書かれたボード
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え~!と書かれたボード
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「なるほど〜」と思ったからといって「なるほど〜」の面を自分に向けてしまうと、相手には「え〜!」の面を見せることになります。

自分の差し出したボードが相手の目にどう映るか。相手の視点に立ってボードを使うことが他者理解につながる。このように考えて、佐藤先生はボードの両面をあえて変えました。

ちょっと話がそれますが、「相手の目」ということで付け加えたいことがあります。「人の目を見て話すのが苦手という子は、下を向いたままボードを差し出すだけでいいんです。それだけで伝わります」と佐藤先生。なるほど、ボードが自分の気持ちを代弁してくれるので、相手の顔を見なくてもすみます。

「話を聴くこと」や「自分の意思表明」に課題がある子、加えて相手の目を見てコミュニケーションをとるのが苦手な子。ボードは、いろいろなタイプの子どもたちの助けにもなります。どの子もコミュニケーションゲームを楽しめるためには、このような行き届いた配慮が必要なんだということを、佐藤先生に教えていただきました。
試作品を手にする佐藤義竹先生
試作品を手にする佐藤義竹先生
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次ページ「「共感」と「安心」の見える化」

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