努力してもつまずくことの連続…ASD息子の毎日を前向きに変える、ファンタジーのエッセンスとは?
ライター:丸山さとこ
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発達に凸凹がある息子のコウは、「皆が当たり前にできるはずのこと」をするために努力が必要なことがしばしばあります。
努力をしても中々うまくいかないことや時間がかかることは多く、心がポッキリと折れてしまうことも珍しくありません。
「もう嫌だ、頑張りたくない!」「僕はダメなんだ…!」とすっかり嫌になってしまった彼に私がとった方法は、彼が好きな“ファンタジー”を心の添え木にする方法でした。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
つまずくことの多い毎日の中で、心が折れることも…
基本的には「授業も勉強も好きだ」と言うコウですが、実際にはつまずくことや苦手なことは多く、宿題に対しても嫌になってしまうことはしばしばあります。
作文の清書の為にお手本の原稿を作って細長く畳んだり、教科書を書き写す時は定規を使ったりと色々工夫をしながら取り組みますが、そのような工夫以外にも、心が折れたコウには“気持ちの立て直し”が必要でした。
作文の清書の為にお手本の原稿を作って細長く畳んだり、教科書を書き写す時は定規を使ったりと色々工夫をしながら取り組みますが、そのような工夫以外にも、心が折れたコウには“気持ちの立て直し”が必要でした。
心の添え木には“ファンタジー”が有効でした
コウの心が折れた時は、あまり「なぜそれをやらなくてはいけないのか」の必要性を説くような説教や励ましはしないようにしています。本人もそんなことは分かっているので、かえって落ち込んだり荒れたりする可能性が高いからです。
そんな彼の心を添え木として支えてくれるもののひとつが、“ファンタジーな物語”です。
自分の失敗について客観的に状況を見たりシミュレートしたりする時に、ぬいぐるみを使って説明をすると落ち着いて話を聞けるくらい、コウはファンタジーな表現が大好きです。
そんな彼の心を添え木として支えてくれるもののひとつが、“ファンタジーな物語”です。
自分の失敗について客観的に状況を見たりシミュレートしたりする時に、ぬいぐるみを使って説明をすると落ち着いて話を聞けるくらい、コウはファンタジーな表現が大好きです。
ファンタジーな味付けをすると、事実を受けとめやすくなる!
コウは字を書くことが少し苦手です。空間の把握が難しいようで、”心”の字が部首のようになったり、数字の“8”が横倒しになったりするのです。
漢字の書き取りノートや計算ドリルなどの宿題が出ていると、何度も消しては書き直すことになります。面倒な上に、消しゴムかけで紙を破ってしまったりして…彼はすっかり嫌になってしまいます。
漢字の書き取りノートや計算ドリルなどの宿題が出ていると、何度も消しては書き直すことになります。面倒な上に、消しゴムかけで紙を破ってしまったりして…彼はすっかり嫌になってしまいます。
そんな時はファンタジーの出番です。「心が書けない!」とグズつくコウに、「心をゆっくり育ててねー。焦らなくていいんだよ。」「今、心が疲れちゃって横になって休んでるのかな?」と話しかけると、彼は「無理して頑張ると、心もプレッシャーで大きくならないよね…。」と落ち着いて返事をしてくれます。
一度冷静になれば、後は「ゆっくり大きくなるんだよー。」と心の字を励ましながら(?)頑張ることができます。上手くいかなかったとしても、「ちょっと今日は『心』がごろんとしてるんだよねー。疲れちゃったのかなー。」と笑いながら“上手くいかないこと”を受けとめることができます。
一度冷静になれば、後は「ゆっくり大きくなるんだよー。」と心の字を励ましながら(?)頑張ることができます。上手くいかなかったとしても、「ちょっと今日は『心』がごろんとしてるんだよねー。疲れちゃったのかなー。」と笑いながら“上手くいかないこと”を受けとめることができます。
数字の8が横倒しになる時は、「ちょうちょになって飛んでいっちゃいそうだね。」と言ってみたら、それまでは「えー、また書き直し?」と渋っていたコウも、「飛んでいっちゃわないように書き直そう!」とやる気を取り戻していました。
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工夫をするのは“コウの気持ちを軽くする”ため
物事が上手くいかずに苦しむ彼を見ていると、「それは嫌になるだろうなぁ…」と思います。
「大人である私でも、あんなに上手くいかなければ心が折れるだろう」と感じるくらい大変な様子になるコウなので、最初にファンタジーを使い出したのは“宿題を頑張らせるため”というより、“コウの気持ちを軽くするため”でした。
“結果を出すこと”は大事だけれど、頑張っていてもすぐにどうにかならないこともあります。そういう時、上手くいかない現実や自分を責めずに“上手くいかなさ”をふわっと受けとめつつ努力することを、ゆっくりと覚えていってくれたらいいなと思っています。
上手くいかなさを直視してばかりいると辛くなりますが、目をそらしていても事態は変わらず、それもまたそれで辛くなってしまいます。すぐに結果が出ない努力を地道に続けていく時、「自分が受けとめられる方法で事実を受けとめること」は、彼を助けることになるのではないかと考えているのです。
「努力も工夫もしてみたけれどできなかった」という時も、それを認めることで「じゃあどうしよう?助けを求めようかな。他のことでカバーしようかな?それができなくても困らない道はあるかな。」と、違う道を探すことができるかもしれません。
「大人である私でも、あんなに上手くいかなければ心が折れるだろう」と感じるくらい大変な様子になるコウなので、最初にファンタジーを使い出したのは“宿題を頑張らせるため”というより、“コウの気持ちを軽くするため”でした。
“結果を出すこと”は大事だけれど、頑張っていてもすぐにどうにかならないこともあります。そういう時、上手くいかない現実や自分を責めずに“上手くいかなさ”をふわっと受けとめつつ努力することを、ゆっくりと覚えていってくれたらいいなと思っています。
上手くいかなさを直視してばかりいると辛くなりますが、目をそらしていても事態は変わらず、それもまたそれで辛くなってしまいます。すぐに結果が出ない努力を地道に続けていく時、「自分が受けとめられる方法で事実を受けとめること」は、彼を助けることになるのではないかと考えているのです。
「努力も工夫もしてみたけれどできなかった」という時も、それを認めることで「じゃあどうしよう?助けを求めようかな。他のことでカバーしようかな?それができなくても困らない道はあるかな。」と、違う道を探すことができるかもしれません。
2年生の頃は、九九を覚えていても“順番に言うこと”ができず、宿題の度に泣いている時がありました。3年生の頃は、口形が乱れて「きつつき」を“き”の口のまま発音するようになってしまった時期もありました。
「何で僕だけできないんだろう」「頭では分かってるのに何で出てこないんだろう」と荒れたり悲しんだりするコウをなぐさめ励まし、時に取っ組み合いになりながら問題に取り組むこともあります。
けれど、いつもそんな調子では親子ともども息切れしてしまいます。「できるようになること」は大事だけれど、それと同じくらい「今すこやかに過ごせること」も大事なのだろうと感じています。
明日を笑顔で迎えるために、今日の笑顔も大事にしていきたいな…と思う、心が折れがちな親の私です。親子ともどもポキポキ折れながらの毎日ですが、ゆっくり、歩ける速度で進んでいきたいなと思います。
執筆/丸山さとこ
「何で僕だけできないんだろう」「頭では分かってるのに何で出てこないんだろう」と荒れたり悲しんだりするコウをなぐさめ励まし、時に取っ組み合いになりながら問題に取り組むこともあります。
けれど、いつもそんな調子では親子ともども息切れしてしまいます。「できるようになること」は大事だけれど、それと同じくらい「今すこやかに過ごせること」も大事なのだろうと感じています。
明日を笑顔で迎えるために、今日の笑顔も大事にしていきたいな…と思う、心が折れがちな親の私です。親子ともどもポキポキ折れながらの毎日ですが、ゆっくり、歩ける速度で進んでいきたいなと思います。
執筆/丸山さとこ
専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)
なかなかうまくいかず、つまずきの連続に、“心の添え木”としてファンタジーを活用する。なんと素晴らしい……!感心しながら読みました。ありがとうございます。
そもそも、コウくんの苦戦の連続に対して「何回も頑張っているのに上手くいかないとつらいよね。イヤになっちゃうの分かるよ」「少しずつできるようになってきてるからね。焦らなくて大丈夫だよ」と、コウくんの気持ちを改めて言葉で伝え返しているところがとても大事なところですね。子どもは自分の気持ちをうまく言葉にできないことがまだまだたくさんあります。気持ちの言語化を手伝ってくださり、そうして言葉で伝えてもらうことでお子さん自身が気持ちの状態に言葉が与えられ、その気持ちに飲み込まれず頭で自分の気持ちを理解することができます。すると、強烈な“嫌な気持ち(つらい、焦る気持ち)”と自分自身とに少し距離ができ、冷静さを取り戻す一助となります。
そして、さとこさんは宿題や課題を「できるようになること」は大事だけれども、コウくんにはどうしてもスムーズにできないこともあるからこそ、「今すこやかに過ごせること」も大切にして、できていないことに注目しすぎない(できるようになることばかりを応援しない、コウくんの苦戦にも寄り添う)というスタンスを取られています。これもまた大事なことだなと思います。努力したら努力した分、伸びてほしいですが、そこが一筋縄にはいかない場合はあります。ある程度の時期を置いて、気づけばできるようになっていることもありますし、結構な時間をかけて細々と努力することでようやく到達できることもあります。でもいずれにせよ、今日明日できるとは限らないことがあるということでもあります。
だからこそ、そばで見守る保護者として、焦って頑張らせるのではなく、本人の苦戦に寄り添いつつも、広めのスパンで見守っていく。そのスタンスは、発達的な特性が強いお子さんには心強いものでしょう。
“心の添え木”としてのファンタジー。この方法はもしかしたら、お子さんによっては合わない場合もあるかもしれません。ファンタジーを挟む心の余裕がないほどにお子さん自身が焦っていると難しかったり、ファンタジーを伝えることで混乱したりする場合もあるかもしれません。ただ、ファンタジーが共有できる場合にはとても興味深く、そしていいアイデアだと感じます。先に気持ちの言語化について書きましたが、同じく、ファンタジーを使うことは、お子さんが出来なくて困っている何か(「心」をバランスよく配置する、8を縦に書くなど)と、お子さん自身とを切り離し、距離を持って眺めることができるようになるからです。できないのはお子さんのせいではなく、「心」が疲れちゃっているから(あるいは、8がちょうちょになって飛ぼうとしているから)。一つひとつの苦戦を全部「自分のせい」にしているとつらくなるのは当然です。そしてすでに十分にそのつらさを感じているわけです。ファンタジーを心の添え木として、すこしそのつらさを軽減できたら、それは素敵な対処法ですね。こうしたことは、例えば、よく泣いてしまう子について、「泣き虫(という虫)がくっついているのかな」など、お子さんの困りごとはお子さんのせいなのではなく、なんらかの虫や妖怪がくっついたから、と捉えてみる方法があります。問題や責任の外在化の手法です。すべてを自分のせいにして、つらさ苦しさを受け止め、反省し、改善していく。それはなかなか子どもにはつらいことです(大人でもつらかろうと思います)。苦戦が続いている際には、大切な心をそうして守りながら、また取り組んでいけるといいですね。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
そもそも、コウくんの苦戦の連続に対して「何回も頑張っているのに上手くいかないとつらいよね。イヤになっちゃうの分かるよ」「少しずつできるようになってきてるからね。焦らなくて大丈夫だよ」と、コウくんの気持ちを改めて言葉で伝え返しているところがとても大事なところですね。子どもは自分の気持ちをうまく言葉にできないことがまだまだたくさんあります。気持ちの言語化を手伝ってくださり、そうして言葉で伝えてもらうことでお子さん自身が気持ちの状態に言葉が与えられ、その気持ちに飲み込まれず頭で自分の気持ちを理解することができます。すると、強烈な“嫌な気持ち(つらい、焦る気持ち)”と自分自身とに少し距離ができ、冷静さを取り戻す一助となります。
そして、さとこさんは宿題や課題を「できるようになること」は大事だけれども、コウくんにはどうしてもスムーズにできないこともあるからこそ、「今すこやかに過ごせること」も大切にして、できていないことに注目しすぎない(できるようになることばかりを応援しない、コウくんの苦戦にも寄り添う)というスタンスを取られています。これもまた大事なことだなと思います。努力したら努力した分、伸びてほしいですが、そこが一筋縄にはいかない場合はあります。ある程度の時期を置いて、気づけばできるようになっていることもありますし、結構な時間をかけて細々と努力することでようやく到達できることもあります。でもいずれにせよ、今日明日できるとは限らないことがあるということでもあります。
だからこそ、そばで見守る保護者として、焦って頑張らせるのではなく、本人の苦戦に寄り添いつつも、広めのスパンで見守っていく。そのスタンスは、発達的な特性が強いお子さんには心強いものでしょう。
“心の添え木”としてのファンタジー。この方法はもしかしたら、お子さんによっては合わない場合もあるかもしれません。ファンタジーを挟む心の余裕がないほどにお子さん自身が焦っていると難しかったり、ファンタジーを伝えることで混乱したりする場合もあるかもしれません。ただ、ファンタジーが共有できる場合にはとても興味深く、そしていいアイデアだと感じます。先に気持ちの言語化について書きましたが、同じく、ファンタジーを使うことは、お子さんが出来なくて困っている何か(「心」をバランスよく配置する、8を縦に書くなど)と、お子さん自身とを切り離し、距離を持って眺めることができるようになるからです。できないのはお子さんのせいではなく、「心」が疲れちゃっているから(あるいは、8がちょうちょになって飛ぼうとしているから)。一つひとつの苦戦を全部「自分のせい」にしているとつらくなるのは当然です。そしてすでに十分にそのつらさを感じているわけです。ファンタジーを心の添え木として、すこしそのつらさを軽減できたら、それは素敵な対処法ですね。こうしたことは、例えば、よく泣いてしまう子について、「泣き虫(という虫)がくっついているのかな」など、お子さんの困りごとはお子さんのせいなのではなく、なんらかの虫や妖怪がくっついたから、と捉えてみる方法があります。問題や責任の外在化の手法です。すべてを自分のせいにして、つらさ苦しさを受け止め、反省し、改善していく。それはなかなか子どもにはつらいことです(大人でもつらかろうと思います)。苦戦が続いている際には、大切な心をそうして守りながら、また取り組んでいけるといいですね。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
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