【おねしょ・夜尿症のお悩み】治療法や大切な心のケア。毎日できる生活面の工夫、お布団の洗い方も――専門家が解説【後編】

ライター:田村 節子
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前編では、おねしょと夜尿症の違いや原因、夜尿症が子どもや家族に与える影響についてお伝えしました。後編は、夜尿症の治療にはどのようなものがあるのか、保護者がもっとも負担に感じる寝具の後始末の方法、家族や周囲の望ましい対応についてご説明します。

目次

しつけとは関係ない!夜尿症の治療と対策

治療の原則「起こさず、焦らず、怒らず、ほめる、比べない」
治療の原則「起こさず、焦らず、怒らず、ほめる、比べない」
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治療の原則は「起こさず、焦らず、怒らず、ほめる、比べない」です。夜尿症は、子どもの症状であり、性格やしつけとは関係ありません。「我慢しなさい、気を付けなさい」などの精神論や根性論でどうにかなるものでもありません。お子さんをしかったり、夜尿症は自分(保護者)のせいだと責めないでください。

発達障害のあるお子さんは、多動や衝動性、強いこだわりなどから、治療に必要な水分制限や生活リズムの適正化、就寝前にトイレに行く習慣が定着しにくいため、治療には時間がかかる場合もあります。焦らず根気よく治療をサポートしてあげてください[1, 4]。

夜尿症の治療にはどのようなものがあるの?

夜尿症の治療には、「生活改善(ダイアリー記録)」、「お薬による治療」、「夜尿アラーム療法」などがあります。詳しくは、おねしょのサイト(おねしょ.comなど)をご覧ください。

ポイント
いずれの治療法にしても、まずは簡単に達成することができるレベルの目標を設定し、お子さんに分かりやすい言葉で目標を指示することを心がけてください。そして、お子さんが指示した目標を達成したり、夜尿がなかった日は、しっかりと、そのときに褒めてあげましょう。目標達成を繰り返すことと保護者の方の協力が治療を長く継続する秘訣です[1]。
おねしょ卒業!プロジェクト
https://onesho.com/

夜尿症診療の一般的な流れ

実際の治療方法や期間には、個人によって違いがありますが、大まかな流れをご紹介します。
夜尿症治療の一般的な流れ
夜尿症治療の一般的な流れ
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夜尿症治療では、「生活改善」が基本となります。しかし、元来こだわりが強く、嫌なことは絶対嫌と言いがちなお子さんの場合、生活改善を徹底しようとすればするほど、隠れて水を飲んだり、親子げんかが増えるなどで、かえって夜尿症が悪化するケースもあります[1]。また、生活改善だけでは夜尿症の改善がみられないことも少なくありません。

そのような場合には、お子さんの発達特性に合わせて、環境整備やお薬による治療を積極的に取り入れることで、治療効果やお子さんの治療意欲が向上する可能性があります[3, 10]。病院の先生と相談しながら進めていきましょう。

生活改善

生活改善
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規則正しい生活をする
夜更かしや不規則な生活は夜尿症を悪化させます。早寝、早起き、決まった時間の食事を心がけましょう。朝食と昼食はしっかり食べましょう。夕食は少し控えめにして早めに取り、夕食後から寝るまでは、可能なら2~3時間あけましょう。

水分の取り方に気を付ける
寝る前に水分を取り過ぎると、夜尿症につながります。ただし、水分は身体にとても大切ですので、朝食と昼食ではたっぷり取ってください。昼食の後からは水分(ジュース、お茶、牛乳など)を控えめにし、夕食時から就寝まではコップ1杯(200cc)程度までの水分摂取にとどめましょう。

塩分を控える
塩分のとり過ぎは、のどの渇きから夜尿症の原因となる水分のとり過ぎにつながります。また水分をとり過ぎていない場合でも、夜尿症の原因になります。

寝る前にトイレにいく
トイレに行ってから寝る習慣をつけましょう。布団に入り30~1時間経っても寝付けないときには、もう一度トイレに行きましょう。

夜中、無理にトイレに起こさない
夜中に無理にトイレに起こすと、寝ている時間におしっこをする習慣がつき、夜尿症が治りにくくなることがあります。

寝ているときの寒さ(冷え)から守る
冷えは、尿量の増加や膀胱の縮小につながります。特に冬は、下着を重ね、靴下を履き、体を冷えから守り、温かくして寝ましょう。

お薬による治療

お薬による夜尿症治療では、抗利尿ホルモン薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬、漢方薬などが使用されます。生活改善を行ってもよくならない場合には、夜尿症を診てくれる病院に相談してみましょう。

アラーム療法

夜尿をアラームで知らせてお子さんに認識させ、それを繰り返すことにより膀胱が尿をためられるようになります。皮膚感覚や音に敏感なお子さんには不向きかもしれません。
アラーム療法の仕組み
アラーム療法の仕組み
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アラーム療法の効果
アラーム療法の効果
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負担に感じる布団の対策

夜尿症のあるお子さんをもつ保護者がもっとも負担に感じるのは、濡れた衣服や寝具の後始末です。特にお布団は、時間がたつほどにアンモニア臭がしみつき、いやな臭いがなかなか取れません。ここではお布団を濡らさないための対策、濡れてしまったお布団の洗い方、乾かし方を紹介します。

布団を濡らさないための対策

布団を濡らさないための対策
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オムツ
赤ちゃん用のオムツの大きい版、または大人用より一回り小さい版として、多くの商品が売られています。
オムツは、夜尿の頻度が減ったら速やかに外すこともあれば、下着やお布団の後始末を考慮して保護者の判断で継続することもあります。オムツをしていた方がよく眠れるとの報告があるため、睡眠の質が低い場合には有用だと考えられます。皮膚感覚が敏感なお子さんには不向きかもしれません。
パンツ
「おねしょ パンツ」でインターネット検索するとたくさん出てきます。消臭素材、吸収素材、防水素材を組み合わせた専用パンツがあります。宿泊行事の際の対策にも有効です。
シーツ
レジャーシートの表面にタオル地を貼り付けたような構造で防水性でないものが多く販売されています。防水機能があるタイプは洗濯が可能か確認ください。「おねしょ シーツ」でインターネット検索するとたくさん出てきます。

布団の洗い方

布団の洗い方
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おねしょした布団にお湯をかける
1. おねしょした布団をお風呂場などに持っていき、おねしょの部分にだけ、40度くらいのぬるま湯をろ過する要領でゆっくりかけます。
2. 2~3回、臭いが消えるまで繰り返します。
3. 乾いたタオルでたたくようにして水分を取っておきます。
Point!
布団にかけるお湯の温度は40度くらいで。熱湯はNGです。おしっこの成分であるたんぱく質は70度くらいで固まってしまうため、臭いを取るためにはぬるま湯で洗い流します。

重曹を利用する
1. 重曹をおねしょした布団にふりかけ、尿を吸い取らせます。
2. 完全に吸い取ったら重曹を払います。
3. ビネガースプレー(スプレーボトルにホワイトビネガー(食用酢)と水を1対4の比率で入れる)を吹き付けながら、乾いたタオルでたたくようにして水分を取ります。
Point!
おねしょをしてから間もない場合に有効です。

クエン酸を利用する
1. スプレーボトルに入れたクエン酸水(クエン酸の粉末小さじ2杯と水400ml)を用意します。
2. クエン酸水をおねしょした布団にスプレーします。
3. 乾いたタオルでたたくようにして水分を取ります。
Point!
クエン酸水をスプレーすることで、おしっこのアルカリ性が中和されます。

オムツを利用する
1. 市販のオムツをおねしょした布団に当て、その上で足踏みします。
2. 40度くらいのお湯をかけておねしょを洗い流します。
3. 洗った布団の上にまた同じようにオムツを当て、その上で足踏みします。
Point!
オムツを使うことで、おしっこが素早く吸収されて逆戻りもありません。

天日干し、時には丸洗い
1. 午前10時から午後2時くらいまでの間に両面を干します。
2. できれば、3時までには取り込みます。働いているので3時までの取り込みは無理という場合は、室内の日当たりのよいところに干しておきます。
3. シーズンの変わり目に布団専門のクリーニング店で丸洗いをすると、よりすっきりします。
Point!
しっかり乾かすには、天日干しがいちばん。また、太陽の光には殺菌・消臭効果があります。

お子さんの心理的ダメージを防ぐために

「○○ちゃんタイム」を設けてみましょう

子どもの話しを聞くための時間「○○ちゃんタイム」
子どもの話しを聞くための時間「○○ちゃんタイム」
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発達障害のあるお子さんは、夜尿症を合併することで、さらに自尊心や自信をなくすなどの心理的ダメージが増えると考えられています。その上、夜尿症の治療のため水分制限などが必要となり、お子さんの中にはストレスや不満、怒りなどのマイナスな感情が生じやすくなります。

週に1~3回、10~15分、子どもの話を聞くための時間「○○ちゃんタイム」を設け、落ち着いた環境でお子さんと向き合うことで、お子さんを理解し、マイナスの感情から解放してあげましょう。お子さんに話してもらう内容はおねしょのことだけでなく学校生活、家庭生活のことなど何でもかまいません。

具体的には、以下のように聞いていきます。
「今日、いやだったこと、むかついたことがあったら教えてね。」(導入)
「そう、そうだったの。弟にからかわれてとってもいやな思いをしたのね。分かったよ。」(お子さんの話を繰り返し、感情を返す)

就寝前のトラブルを避けるように工夫しましょう

発達障害のあるお子さんは、嫌なことや疲れがあると夜間の水分制限や寝る前の排泄を行いにくくなり、夜尿が増えることがあります。おだやかな気持ちで就寝できるよう就寝直前の叱責はできるだけ避け(叱責する場合は朝昼夕とする)、夜尿がなかった日にこまめに褒めることを心がけることで、水分制限や寝る前のトイレ習慣のモチベーションを継続できるようにサポートしましょう[12]。
次ページ「病院のサポートを受けましょう」

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